蒼の国-TS Version/Together-
ビルに言われて、ようやく自分の正直な気持ちと向き合うことができたようで少し心が軽くなって

そんな気持ちを早く伝えようと遼二は倫周の邸へ向かった。

逸る気持ちを抑えながら心を弾ませてやって来たのに倫周は居なかった。

大きな広い邸にはまるで人の気配がしないようで遼二はいろんな思いを胸にしながらその帰りを

待っていた。幼い頃から何より大切に思っていた友人をその腕に受け止める為に。



遼二は別に倫周に恋心を抱いていたわけではなかったが、やはりその存在が大切なのは

変えられない事実であったし、だから自分が受け止めようと思ったのだ。どうしても誰かに抱かれず

にはいられないのなら、その誰かに代わって全てを自分が受け止めるつもりでいた。

何故に倫周がそんなふうになってしまったかという根本的なことを考え付かないままに。

とりあえずは目先のことで精一杯であった。

やっとの思いでそう決心して倫周の邸に送ってもらったにも関わらず倫周はいなかった。

朝が来て、ようやく待ち望んだ顔が姿を現したとき、遼二の心は一晩中のさまざまな思いにぐらぐらと

揺れていて顔を見るなり込み上げた怒りに思ったままを口にせずにはいられなかった。



「朝帰りってわけか?BearingRoadの奴と一緒だったのか、、、?」



いきなりの言葉に倫周は呆然と立ちすくんでしまって。

そんなんじゃないっ、、、

本当はあの後遼二の後を追ったけれど見失って、

それからずっと遼二のマンションの部屋の前で

その帰りを待っていたのだったけれど。

いきなり罵倒されたようで倫周は正直に本当のことが言えなかった。

そんな態度が遼二の心に怒りの炎を燃やして、、、



「あいつのことが好き、、なわけねえよな。お前は誰だっていいんだもんな。相手なんて誰だって、、、

BearingRoadの奴だって只利用してるだけなんだろ?お前の遊びに付き合ってくれるから、、、

お前を抱いてくれるからっ、、誰だって同じなんだよなあ!?」

怒りに肩を震わせながら言われた言葉が倫周にはとても信じられなくてみるみる内に顔色は蒼白と

なっていった。

誰だって、、って、、何のことを言ってるんだ?まさか遼二、、まさか全て知ってるんじゃ、、、

まさかそんなこと、、、あるわけない、、でも、、、、、

やっとのことで勇気を出して話し合いに来たはずが、朝帰りして来た倫周にその理由も訊かずに

早とちりをして頭に血が登ってしまったのか遼二は今までの嫌悪感をぶちまけるように倫周に

当り散らした。自身への抑制が効かず思いの丈を怒鳴り散らして、、、

遼二は倫周を引き寄せると乱暴にその身体を弄った。

「こういうふうにされてえんだよな?こうやってキスをして?裸になって、、相手なんか誰でも

よくって、、、そうなんだろっ!?だから次から次へといろんな奴とっ、、、どうなんだよっ!?」

倫周は遼二の言葉に耳を疑った。



やっぱり全部知ってる、、、?そんな、どうして、、、



倫周は思いっきり力を込めると遼二を突き飛ばした。

「そんなのっ、、どうだっていいだろっ!?遼二には関係ねえよっ、、!

誰と何しようとっ、、俺の勝手だろ!?何も知らねえくせにっ、、偉そうなこと言うなよっ、、、!」

遼二も真っ青になって。何で?こんなに心配してるのにっ、、俺だけじゃない、ビルだってお前の

身体のことを気使ってくれたのにっ、なんでそんな自分勝手なんだよ、、、



「このっ、、馬鹿野郎、、っ!」



ばしっ、と大きな音がして。

遼二は倫周の頬を殴った。そのまま激情が抑えられず、倫周の髪を引きずり回しては何度も

殴りつけた。

「やめてっ、、、やめろよっ、、、遼二、遼っ、、、」

必死に身を屈めながら抵抗の言葉を叫んだ倫周の声も耳に入らずに遼二は激情のままにその細い

身体を引きずり回しては叩きつけて、、、気が付いたときは細い首筋を両手で握り締めていた。

今まで目にした衝撃の行動を憎むかのように次第に力が込められて。

「や、、、あ、、、っ、、苦し、、、遼、、、」

ぐったりと抵抗のなくなった様子に遼二は、はっと我に返った。色白の頬が更に色を失くして

真っ白になり、苦しそうに顔を歪めている様子に遼二は蒼白となった。



「倫っ、、倫、大丈夫かっ!?しっかりしろっ!おい倫っ!」

慌てて細い身体を抱き起こすと、倫周はげほげほと苦しそうに咳き込んだ。

「何、、すんだよ、、、俺を殺す気、、、?」

「ごめんっ、、倫っ、、、」

まだ白い唇が苦しそうに言い放ったのを合図のように遼二は倫周を抱き締めた。乱れた髪を

更に掻き乱すように頭ごと両の腕にしっかりと抱え込みながら頬刷りをすると遼二は倫周を

抱き締めたまま泣き出してしまった。



「悪かった、倫悪かったよ、、許してくれよ、、俺はお前が大事なんだ、ガキの頃からずっと、、

お前が大事だったから。お前があんなふうに遊んでる姿を見たくなくて、つい切れちまって。

本当に悪かった、、倫、、、許してくれ、、、」

そう言って声を押し殺すように忍び泣いた。

自分を抱き締めながらすすり泣く遼二の、その表情は見えなかったが倫周は信じられない

気持ちで一杯だった。遼二が泣くなんて、自分を心配して泣くなんて、、、

「りょ、遼二、、」

そう言い掛けて、倫周はもっと信じられない言葉を頭の上に聴いた。





「倫、俺が嫌いか?俺じゃ駄目か?お前の相手、、、

どうしても遊びてえんなら俺とじゃ嫌か?俺と、、、するのは嫌か?」





言われていることがとっさには頭に入ってこなくて、あまりにも驚いて、倫周はしばらく口が利け

なかった。

何も返事の返せない倫周に遼二は両の手のひらで白い頬を覆うと大きな瞳を覗き込んで訊いた。

「俺じゃ嫌なのか?どうなんだよ、、、倫、、、?」

涙で少し赤くなった遼二の黒曜石の瞳がじっと覗き込んでくる、真っ直ぐな瞳に見つめられて。

倫周は信じられないというように首を横に振った。その大きな瞳にも涙が滲んで、、、

「だっ、だって、、そんな、、そんなこと、、、」

答えになっていない倫周の言葉に遼二は有無を言わせないといったふうにぎゅっと細い肩を

抱き締めると。



「もう誰ともあんなことするなっ、、俺とだけ、そう約束してくれ、、いつでも側にいてやるから、

いつでも誰よりも側にいるからっ!俺だけを見ろよ、、、」



「遼二、、、」



何も言葉にならない倫周のふっくらとした唇に軽くキスをした。軽く触れて。

遼二は倫周を抱え上げるとそのままベッドへ連れて行き、やさしく降ろしてやるとそのまま

白いシーツの上にゆっくりと沈めて、、、

静かに重なるように包んでいった。

やさしく触れて。その全てを確かめるように、まるで色を塗り替えるように遼二は隅から隅まで

細い身体を愛撫した。やわらかな感覚が2人を包み込んで、まるで雲の上にいるように心地よく

なって、、、

次第に熱を帯びてゆく、重なり合う吐息が熱く絡み合う、倫周は遼二の腕の中でどんどん自分を

開放してゆき、遼二も又自分に素直になってゆき、押し寄せてくる波に一緒に身を投じて、

高まって、至福を迎えるはずなのに。



「帝斗、、ああ帝斗っ、、、」



初めての衝撃のあの夜と同じ言葉を、遼二は聴いた。腕の中の倫周の頬は紅が差してまるで

美しい盛りの花のように綻んで、、、