蒼の国-TS Version/時空の彼方へ- |
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蒼の国に来てからしばらくはばらばらに仕事先に配属されていた帝斗、紫月ら9人は
久し振りに蒼国の代表者の高宮に招集を受けて、大広間へと集まって来ていた。
何でもこれからひどく大係りな仕事があるとかで全員が揃って呼ばれたのだった。
こうして全員が揃って顔を揃えることは珍しく、一同は久し振りの懐かしいような感覚に
少々はしゃぎ気味だった。
「さて皆さん、これから行っていただく仕事先ですが、、、
ご存知の方も多いかと思います。1800年前の中国、通称三国志の時代です。」
そんな高宮の言葉に浮かれ気分だった一同は驚きと感嘆の声をあげた。
だがその後に続けられた高宮の言葉に更に驚愕の声が大広間に轟いた。
「これは兼ねてから蒼の国が目標としていた事業でして、その規模は皆さんの想像を
遙かに超えたものとなるでしょう。ことによると現地には10年位は行っていただくことに
なりますので覚悟して下さいね。」
10年・・・・?
皆はこれを聞いてさすがに驚きを通り越して呆然となってしまった。
更に驚いたことには、蒼の国の守り神だという通称”四天の剣”と呼ばれる4本の剣のうち、
”玄武”と”朱雀”という2本の剣がそれぞれ遼二と倫周に授けられたことだった。
残り2本の”蒼竜”と”白虎”の剣は重山蘇芳と藤村安曇という2人に既に授けられているらしく、
どうやらこの2人も今回一緒に三国志の時代へ転送されるらしかった。
こうして持ち主が定められた”四天の剣”は初めてその威力を存分に発揮することが可能となり、
それによって蒼国始まって以来の目標だった三国志の時代での仕事に取り組めるのだと
高宮は言った。
このどうにも現実離れした話に呆然とする皆を横目に見ながらも平然とした様子で高宮は言った。
「それでは明朝、皆さんを1800年前の中国、三国志の時代へ転送します。
それまでに準備しておきたいことなどをなさって下さい。あちらに行ったらテレビとかは
当分見られませんからね?後悔のないように準備なさってくださいね。それでは解散!」
そう言われて皆は気が急いたのかすぐさま散々になって行った。
それぞれに密かに持って行きたいものの準備などで忙しそうに自室に引き上げて行った。
そんな中で紫月は倫周に話し掛けようとその姿を探していた。
そんな時代へ行ったらしばらくは倫とも自由に会えないかも知れないな・・・
全員が一緒だなんて・・あの平安時代へ行った時でさえビルに見つかって冷や汗もんだったしな・・・
そんなことを考えながら紫月はふと微笑むと最後の夜を倫周と甘く過ごしたくてその姿を探して
きょろきょろと辺りに目をやった。
誰かが高宮に質問をしたり、慌しく自室へ引き上げて行く中で紫月は倫周を見つけると
穏やかな瞳が微笑んだ。
「倫・・・」
そう声を掛けようとして・・・褐色の瞳がひとたび止まった。
ぱたぱたと逸るような表情をして倫周が近寄ったその先に遼二の姿を映して
紫月は全てのものが掬われるような感覚に陥った。
縋るような瞳をして遼二に話し掛けているその姿、が・・・
瞳に焼き付いて。
遼二はやさしそうに倫周の細い肩を包むと、2人一緒に寄り添うように歩き出した。
引き寄せられるようにして付いて行ったその先は、シュミレーションルームだった。
2人が入って行ったシュミレーションルームの、使用中の灯りが点されて・・・
その灯りは朝まで消えることはなかった。
次の朝、高宮の言葉通り一同は中国三国志時代へ転送されて・・・
皆が配属された先はかの有名な三国志で知られる”呉”国であった。
”呉”に着くと君主、孫堅文台が一同を盛大に迎えてくれて、歴史的有名人物を目の当りにしながら
皆はそれぞれに感嘆の思いに包まれていた。
帝斗、紫月ら9人と昨日紹介された”蒼竜剣”と”白虎剣”を持つ重山蘇芳と藤村安曇の計11人は
盛大に迎え入れられて孫堅が用意してくれた大係りな幕舎に住むこととなったのだった。
それぞれに個室が用意されており、そんな様子からするなれば生活自体は蒼の国にいるときと
何ら変わりはなかった。
そんな共同生活の隙を縫うように、皆の目を逃れるようにしながら紫月は倫周に近寄ると
小声で用件のみを手短かに伝えてよこした。
「倫、今夜裏の林道の先の森の入り口に来いよ。皆が寝静まったのを見計らって。
大丈夫だな?誰にも見つかるんじゃないぜ?」
できるだけ感情をを隠すようにやさし気にそう言うと何事もなかったかのように紫月は
信一や剛らの話の中へ入っていった。
そんな誘いの言葉にも、何の疑問も違和感も感じられないまま倫周は平然とうなずいて。
「うん、何とか見つからないように行くから。」
悪気のないそんな返事を倫周はした。 |
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