蒼の国-TS Version/Genuine Love- |
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三国志の時代へ来てから早や2年が過ぎようとしていた頃、帝斗と紫月はやっとお互いに
向き合うことが出来た。
そして倫周を受け止めた周瑜が亡くなったのはそれから3年もした頃だった。
周瑜はその最期の日まで溢れんばかりの愛情を倫周に注いでこの世を去った。
その愛情はまるで自身を愛するかのように深く温かかった。
そして孫策亡き後、倫周を受け止めた周瑜も亡くなって再び孤独になった倫周を襲ったものは
嵐の如く確実にやって来た。
帝斗も紫月も倫周に対して同じように愛情を持っていたし、何より紫月は一生かけてその罪を
償おうと思っていたくらいだったから当然といっていい程、独りになった倫周を手に入れるような
ことはしなかった。只いつも見守りながら何かあればどんなことをしてでも支えてやろうとは
思っていたのだったが。
だが倫周の身体は周瑜が亡くなってしばらくすると確実にその代わりを求めて震え始まった。
どうしてもとめられない、誰かに抱かれずにはいられない、どんなに周瑜に愛情を注いでもらっても
それだけは変えられなかった。
だが だからといって周瑜の代わりを紫月が出来たかといえばそうでは無かった。
その他のことなら勿論どんなことでもするつもりでいたし実際そうだったのだが、紫月は倫周を
抱くことだけはどうしても出来なかった。そうすることが倫周に対する紫月の最も強い償いの
気持ちだったからだ。
それは帝斗とて又同じで。
けれどもそんな紫月や帝斗の気持ちとはうらはらに倫周は日毎に苦しみ方が
酷くなっていくようだった。
身体が震えて止まらない、どんなに望まなくても身体はいうことをきかない、
孫策が亡くなったときと症状はまるで一緒だった。
そんな様子を見かねて帝斗と紫月は辛い思いで胸を痛めていた。特に紫月の方はそういった原因を
つくってしまった自分のことを悔いても悔い足りない様子で心は非常に辛くあった。
「いっそ、抱いてしまってあげた方がいいんじゃないでしょうか、あのままでは見るに耐えない・・・」
辛そうに帝斗がそう言うと
「ああ、だがそんなことをしたとして又 倫を傷つけるだけだ。周瑜を大切に想っている倫の気持ちを
踏みにじることになる・・・俺たちはどうしたらいいんだ・・・あいつを傷つけずに救ってやる方法は
ないっていうのか・・どうしたら・・・・?」
紫月や帝斗以外にも蒼国のメンバーは皆同じ思いに胸を痛めていた。
だが誰もどうしてやることも出来ずに。
「傷つけずに救ってやる方法・・・そんなものねえよ・・・」
ぼそりと呟くと遼二は皆を振り返った。そして戸口の方へ足を向けると再び皆の方を向いてふいと
微笑んだ。
「傷つけないで救う方法なんてねえ。だが俺はあいつを救う。これから行って
あいつを抱き締めてやるよ。
思いっきり傷つけて、そして救ってやるから・・・」
そう言って遼二は部屋を出て行った。
その後ろ姿を見つめながら紫月は魂を抜かれたようになって・・・
思いっきり傷つけて、そして救ってやるよ・・・
そう言われた言葉が木魂する。呆然とする意識の中で紫月は只ひとつのことを考えていた。
本物だ、遼二は本物なんだ。あんなにも大きな心で誰かを包めるものだろうか?
思いっきり傷つけて、なんて俺には考えも及ばなかった。誰かを本当に愛するというのは
きっとこういうことなのだろう・・・遼二は恐らく今は気付いてないだけかも知れないがきっと
倫を愛してるんだ。好きとか嫌いとか愛してるとか、いないとかそんなものじゃ図れないくらい、
あいつはきっと倫を愛してる・・・・
そう思った紫月の瞳が少し切なそうに揺れていた。
紫月にしてみれば違った形ではあったけれど確かに倫周を可愛いと
思っていたのは事実であるし、出会い方さえ違っていればきっと確実に
倫周を愛していただろうと、そんな想いが浮かんでは消えた。
倫、倫、愛しているよ、好きだよ。可愛い俺の・・倫っ・・・・!
その言葉が嘘ではなかったと今なら言える。
嘘じゃない、俺は本当にお前を愛していたよ・・・倫。
どうか幸せになっておくれ。
お前が幸せになることだけが俺の望みだよ。
遠く空を見上げながら紫月は心からそう願って止まなかった。 |
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