CRIMSON Vol.40 |
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「これからはずっとお前の側にいる・・・・・俺たちはずっと一緒にいるべきなんだ・・・・・」
今度こそ、そう覚悟を決めるよ・・・・・
そんなことを言った紫月が信じられずに呆然としたまましばらくは瞬きさえ儘ならなかった。
嘘だ紫月、、、、お前は粟津くんを愛しているんだろう?
だって2人はとても幸せそうだったじゃないか、、、、粟津くんの前ではお前は幸せそうで、本当に微笑っていて。
心からの笑顔で、、、、あれこそが本物の愛っていうものなんだと見せつけられた気がした。
だから僕はニューヨークへ行ったのに、、、、
2人の幸せな姿を見ていられなくて逃げたのに、、、、、
こんなに簡単に僕のもとへ戻ってくれるなんて、、、、、、信じられない、、、、
本当に信じて、、、、結局は裏切られるのではないか?
今は感情が高ぶっているけれど、少し落ち着きを取り戻せば帝斗を思い出し苦しむのではないか?
そんな不安が胸をよぎった。
だが紫月の方も複雑な思いに駆られているのは嘘ではないようで。
確かにお前が思うように俺は帝斗を愛している・・・・・・
帝斗の側にいると不思議とあたたかい落ち着いた気持ちになれるんだ。誰といても感じたことのないような
安心感に包まれる・・・・・
でも俺は・・・・・お前のことが欲しいっていう気持ちも嘘ではないんだ・・・・
お前を見ると瞬時に湧き上がる欲望はどんなに帝斗を想っていても拭い去ることが出来ないのも事実だ。
だったら・・・・
いずれどちらかを選ばなければならないのであれば・・・・・
散々同じ罪を重ねてきたお前と・・・・・・
この先も・・・・共に罪を重ね合いながら寄り添っていくべきなんじゃないかと思うんだ・・・・・
お前と俺の間には切っても切れない濃い血の繋がりがあることは否めないのだから・・・・
これからは2人で・・・・もう現実に目を背けることなく生きていけたらいい・・・・・
求め合い、穢し合った罪を、一緒に背負っていくのが俺たちに課せられた運命ならば・・・・
迷わずにそれを受け止めようと思うんだ・・・・・
互いに見つめ合ったまま、心の中だけで思ったことが、瞳を見ただけで理解出来るのは
自分たちが誰よりも濃く強く互いを理解し、共生している現実を突きつけてくるようで。
「一緒に罪を背負っていこう・・・・・もう・・・・」
逃げないから・・・・・・
「本当にいいの?」
信じていいんだね、、、、、、?
「ああ・・・・・」
「紫月、、、、、、」
どちらからともなく手を伸ばし、指と指が触れ合った。
そうして掌と掌を重ね合い、冷たかった指先を互いの体温で温め合うように探り合う。
腕と腕を絡ませて、肌と肌を馴染ませて、すべてを融合するように抱き合えば、そこには若き日の
互いの姿が浮かび上がって。
蘇る遠い日の想い・・・・・
好奇心、欲望、過ち、恐怖、そして至福の感情でさえ、それらすべてを共に背負って行こう・・・・・
そんな思いが2人を包み込んだ。
「紫、、、月、、、、、、、」
「紅・・・・・・・」
漏れ出す吐息は熱く逸り、蕩けた瞳は次を求める。
流れに逆らうように感情を押し殺し、目を背けてきた今までの自分を捨て去って、
身を任せるのは何て楽なんだろう?
このまま2人で怠惰な海の中へと堕ちて行ったとしてもそれはそれでもういいのだと覚悟を決めたら
すべてのことが嘘のように楽に感じられた。
今まで苦しんできたことが本当に信じられない程に。
「好きだよ紅・・・・・・」
「本当に?紫月、、、、、、?」
ああ・・・・・こんなに楽になれるのだったら、もっと早くにそうすべきだったな・・・・・
所詮俺たちは離れられない運命ならば、感情に逆らって苦しむこともなかった・・・・
ずっとこんなふうに溶け合いたいと望んでいたのだから・・・・・
これからは・・・・・2人で・・・・・
罪を背負って生きてゆこうな・・・・・・
「紅・・・・風呂に入ろう。一緒に。」
「え、、、、、?」
「風呂に入ってお前の傷を綺麗に流そう・・・・・
一緒に洗ってやるから・・・・・一緒にお前の受けた傷を受け止めてやるから・・・・・」
「紫月、、、、、、」
「そうしたら・・・・・
今までのことすべて流して2人綺麗になれたら・・・・・・
一緒に眠ろう・・・・」
もう二度と・・・・
離れることのないように、、、、、
固く互いを
結び合おう
愛しむように見詰め合い、額と額を寄せ合って。
互いの瞳に映っているのは自分とそっくりなもうひとりの自分・・・・
分身のようなその存在を愛しいと想って何が悪いのだ?
むしろ瞳を背けてはいけないものなのだから・・・・・・
「な、紅・・・・・お前まだ傷が辛いだろうからさ・・・・・
今日は挿れられないな・・・・・」
「紫月、、、、、、ごめんね紫月、、、、僕のせいで、、、、せっかくお前と結び合えるっていうのに、、、」
散々に唇を重ね合い、身体中に愛撫を施し合った後、2人はそんな会話をしていた。
紫月は紅月の身体中に付いた紅の痕を、消し去り塗り替えるように丁寧に丁寧に愛撫を繰り返した。
紅月も又、永い間追い求めた唯ひとりの人の腕の中でこの上ない至福を噛み締めていて。
「いいよ別に・・・・挿れなくたって結び合うことは出来るぜ?」
「え、、、、?どうやって?」
「ふふ・・・・・こうやって・・・・・」
「あっ、、、、、!」
紫月は自分と紅月の硬く逸った存在をくいとひと括りにするように重ね合わせると両の掌でそれを
包み込み、ぎゅっと握り締めた。
「や、、、だ、、、、紫月ってば、、、、、こんなの、、、、」
「何で?こうすればどんな瞬間も一緒に感じられるじゃん?」
「そう、、だけど、、、、何だか恥ずかしいよ、、、、」
互いの逸ったペニスを重ね合わせて握り込んで、ゆっくりと掌を上下させれば感じられるすべての
感覚が同時に互いを包み込んだ。
逸る気持ちも、溢れ出す欲望も、果てを望む感情も、すべて一緒だ・・・・・
もじもじと頬を染めながら俯いていた紅月の掌が紫月の掌に重なったとき、2人は互いにそっくりな
瞳を覗き合ってはくすりと微笑みを漏らした。
それは幸せな微笑み・・・・
永い間見ることが出来なかったお互いの穏やかな表情がお互いを幸福にさせて。
「ね、、、紫月、、、、、もう、、、出ちゃいそう、、、、っ」
「やっぱり?あはは・・・・俺も・・・・・」
じゃあ、、、、
一緒にイこうか?
見詰め合い、求め合い、微笑み合う。
永きときを隔てて取り戻した安堵感に2人は確かに幸福の中にあった。
この後に訪れる嵐のような感情に翻弄される日々を慰めるが如く、それは罪深き2人にほんの一瞬許された
小さな幸せのひとときだったのかも知れない。
抱き合い、見詰め合い、幸せに浸る2人に許されたときはほんの短いものなのだということを示唆するように
扉の陰から2人を見詰める獣のような瞳があったことを、このときの紅月と紫月は気付かずにいた。
久し振りに訪れた安堵感に漂うように身を寄せ合って・・・・・・
愛しているよ・・・・・・紅(紫月)
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