CRIMSON Vol.30 |
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「白夜っ・・・よせっ・・・・・!
やだって言ってるんだっ・・・・・こんなこともうやめてくれよっ・・・・・」
紅月は抵抗し、だが必死で訴え なだめるような健気な仕草が白夜の欲望を益々煽り立てていくようで、
それは悪循環であったが、昨夜からの酷い仕打ちにも関わらず未だに自身の部下を憎み、
嫌悪し切れていなかった紅月の、いわば純粋ともいうべき素直な育ちの良さは逆に目の前の男に
残虐さを植えつけてしまうという最悪の結果となって2人を取り巻いてしまったのである。
引き摺り出された白夜の醜い欲望は最早抑えることも儘ならず。
結果、飛び出した汚い言葉の数々までもが更に酷い行動を望み拍車を掛けていくかのようで
止め処ない最悪の欲望に翻弄されていくのを抑制することは出来得なかったのである。

「やめろっ・・・白夜・・・・・・・」
「何だよ、、、、ホントは犯って欲しいくせにっ、、、気取りやがって、、、、、
どうせ俺はクビなんだろ?だったら何してもいいんだよな?
もうあんたは俺にとって社長でも上司でもないっ、、、
只の淫乱ヤロウだもんなあ、、、、弟に抱かれてよがってる、、、変態ヤロウだもんなあ?」
「・・・白夜・・・・よせってば・・・・」
「うるせーっ、、、、
変態のくせにっ、、、兄弟でっ、、、堀り合ってる好きモンのくせしてっ、、、、
ほらっ、、、どーせ誰に犯られたって変わんねーだろ?顔見えなきゃ同じだもんなー?
いつまでも気取ってねーでさっさとケツ出せよっ、昨日みたいにイカせてやるからっ、、、、
あんたはせいぜい好きな紫月に抱かれてるつもりでいりゃいーんだっ、、」
「わっ・・・・・!」
いきなりベッドに叩きつけられたと同時に癪に障ったように枕を投げつけられて、紅月は
そんな白夜の様子に反抗の言葉さえも見つからなかった。
急激に豹変してしまったやさしい部下が、こんなことになった現在でさえ信じられずに心のどこかでは
何かの間違いなのだと思う気持ちを断ち切れずにいて。
だがどんなになだめても逆らわずに落ち着かせようとしても目の前の男の狂気を抑えることは
出来ずに、結局は男の欲望が果てるまで言いなりになって耐えるしかなかったのである。
「なあ、、、いいだろ?どうなんだよぉー、、、美しい社長さん、、、、
あはは、、、哀れだねー、元部下にこんなにされてさ?でもってこんなに反応じちゃって、、、
あっは、、、可愛いっ、、、
もっともっとよくしてやるよ、、、
だからさ?言ってみろよ、、、紫月って。
呼んでみろよ、あいつの名前、、、
それが望みだったんだろ?紫月とこんなことしたくて仕方なかったんだろ!?
だったらっ、、、言えよっ、、、、
紫月って!
もっとしてーって、、、言ってみろよっ!」
「うっ・・・・・・・」
酷い言葉にも、乱暴に揺らされる腰元にも、身体中を這いずり回る指先にも、背筋を這う生温かい
舌先の感覚にも、抗うことひとつ出来ずに。
信じられず、逆らえず、鎮められず、そして最悪だったのはそんな獣のような男に無理強いされて尚、
反応せずにはいられなかった自身の身体、本能という残酷な欲望の存在だった。

「好き、、、好きだよ紅月ー、、、、、
綺麗な俺の、、、、ディレクトール、、、、、
誰にも渡さない、、、、誰にも、、、、、触らせない、、、、、ああ、、、、
ずっとずっとこうしたかったんだ、、、、あなたを抱きたいだなんて思ってなかったけど、、、、
見てるだけで幸せだったけどー、、、
ああ、、、っ、、夢みたいだよぉー、、、、本当にこんなふうにできるなんて、、、、
愛してるよ、、、愛してる、、、、、紅月、、、好きだよ、、、好き、、好き、、、
あんたの内部、気持ちいいよ、、、、ほんとに、、、
信じらんねーくらい締め付けてきやがる、あんたも反応じてくれてるって思えてすげえうれしいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ねえ、、、聴かせて、、、あんたの声、、、、
我慢しないで声出して、、、、ねえー、、、紅月、、、、、紅月さまっ、、、、
早くっ、、、言えよ、、、、っ
反応じてるって、最高だって、、、
紫月よりもイイってっ、、、、!
言えよっ、、、」
「・・・・っ・・・・・・・・うっ・・・・・・・」
「早くっ紅月っ、、、、あんたは俺のものなんだって言えよっ、、、、!」
そして・・・・
あんな奴忘れろっ・・・
汚らわしいこの世で最悪の存在
紫月のことなんてっ・・・忘れちまえよっ・・・・・・・・・・
あんたを苦しめてきた最低の男
紫月なんて忘れてっ・・・
俺だけを見ろよっ・・・・・・・・・・・・
激しく揺れと共に熱く摩擦しているかのような肌から噴出す汗が、
狂気に滲んだ痛い程の激情が、
何故にこんなことになってしまったのかということだけを追求させて。
それは皮肉な・・・・
永い間、紫月だけを想い焦がれてきた紅月にとって皮肉にも今このときに、脳裏にその面影は
浮かんではいなかった。
考えることは白夜のことだけ・・・
何故にこんなに豹変してしまったのかという疑問に対する答えを探すことだけ・・・
どんな形にせよ、この無理強いされた残酷な瞬間が紅月にとって紫月を忘れていられた僅かな時間で
あったことは間違いなかったのである。
皮肉な運命なのだろうか?
紅月の頭の中には助けを求めて紫月を思い起こすこともないままに。
今、この瞬間に望むことはひとつだけ。
引き摺り出された欲望の、到達の瞬間を追い求めて瞑られた褐色の瞳に刹那の色が揺れていた。
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