CRIMSON Vol.29
「きっ・・・・近親・・・」

「そう、近親相姦。血の濃い者同士で愛し合うことをいうんだ。あんたと紫月のように、、、」

「・・・・・・・・・・・・」

「こんなことしてたんだろ?」

「や・・・っ・・・・・嫌だっ・・・・・・」

「こんなふうにキスして舐め合って、、、セックスだってしたんだろ?」



・・・・・・・・・・・・・・・



「なあ、、、どっちが犯る方だったの?あんたと紫月、、、、

案外両方だったりして、、、、どっちにしたって変態家族ってわけだ?

兄弟で犯り合って、、、、

いつから?いつからそんなことしてた、、、?

中学?高校?それとも、、、、小学校?」

「いっ・・・・いい加減にしろっ・・・・・

そんなことっ・・・・お前には関係ないっ・・・・」

「はっ、、、、参ったなあ、、、、やっぱり図星なんだ?

俺ちょっとは冗談も入ってたんですよね、、、、まさかホントに犯り合ってたなんて、、、、

信じられねえ、、、、

じゃあひょっとして、、、、あんたオンナのひとりも知らないとか?」

「なっ・・・・・」

「だってそうだろ?兄弟で、、、しかもヤロウ同士で犯り合って、、、、

彼女、なんてつくってるヒマないよなあー、、、、?」

「いっ・・いい加減にしろっ白夜っ・・・・お前にそんなこと言われる筋合いはないっ・・・・

何を根拠にそんなことをっ・・・・・」

そう怒鳴ると白夜は掴み上げていた手首の力をほんの一瞬緩めて突然に切なそうに瞳を揺らした。

その様は汚い言葉を並べ立てていた同じ男のものとは思えないくらいで、紅月は自分に

向けられた白夜の感情の起伏に戸惑っていた。















「あなたが、、、、そう言った、、、、」

「え・・・・?」

「酔っ払って、私に縋りついてきたとき、、、、言ったんです。

どうして紫月はわかってくれないんだろうって。どうして届かないんだろうって。酷く泣いていて、、、」






「今までも、、、ひょっとしたらあなたは弟の紫月さんを想っているんじゃないかって気がしてた、、、、

でもはっきりとそれをあなたの口から聞いたとき、俺もはっきりと気が付いたんです、、、、

俺は、、、あなたを、、、、」

そう言って振り返った白夜の瞳が更に刹那を映し出し、揺れて・・・・



「白夜・・・・僕はっ・・・・・」

「もう、、、、忘れたら如何です?」

「え・・・・・?」

「紫月さんを追いかけて苦しむあなたの姿を俺はずっと見てきた、、、、

いつもいつも苦しそうに、辛そうに、まるで泣くのをこらえているようでっ、、、、

はっきり言って見ていられないっ、、、そんなに辛い思いをして彼を想ったって

当の本人は別の誰かを想ってる、、、違いますか?」



・・・・・・・・・・・・・・



「あのとき、、、、紫月さんのプロダクションに行ったとき、、、何であなたは帰って来たんです?

折角会いに行ったのに、ウィンドー越しに紫月さんを見つけた途端にあなたは様子が急変して。

挙句はこんなところにまで来るだなんて言い出して。

あのとき紫月さんと一緒に居た、、、、粟津さん?

彼が原因なんでしょう?恐らくは紫月さんが心を寄せているだろう人、、、、

だから逃げて来たのでしょう?仲良く寄り添う2人の姿を見て耐えられなくなって。

違いますか?」

「なっ・・・にを急にっ・・・・僕は別にっ・・」

「そんなに辛い思いをして追いかけたって、、、、所詮報われないのなら、、、

もう諦めたらどうですか?もとより人様に威張れる仲じゃないいんだ、、、、兄弟なんて、、、

紫月さんなんて忘れてしまった方があなたの為だっ、、、、」

「なっ・・・・・」

そして再び掴み直された腕からは大きな掌の熱がそのままに伝わってくるようで。

「紫月さんを想い続けてもあなたは報われない。どんなに待っても彼は戻っては来ない。

だからっ、、、、もう諦めてっ、、、忘れろよっ、、、、、、」

そう言った瞬間にぎゅっと引き寄せられて、抱き締められて。

縋るように重ねられた頬は熱く、ほんの一瞬触れた唇は燃えるようで・・・・

「白夜・・・白夜ちょっとっ・・・・・待って・・・」

「紅月さまっ、、、俺はあなたが好きだからっ、、、、

俺じゃだめ、、、、?俺じゃ、、、紫月さんの代わりにはなれない?」

「なっ・・に急にっ・・・・・

お・・い・・・・・白夜っ・・・・・・・」





はっ・・・・・・・っ





「やめてっ白夜っ・・・・こんなこと・・・したくないっ・・・・僕はっ・・・・」

「何で、、、?俺が嫌いですか、、、?」

「そうじゃない・・・けど・・・だめだよ・・・・・・やっぱり僕はっ・・・・・・」

恥ずかしそうに触れ合っていた頬を離して伏目がちに俯いたその姿が白夜の心に火を点けて・・・

「やっぱり、、、?

紫月さんを忘れられない?」

「・・・・・・・そっ・・・それは・・・・」

もじもじと口篭る紅月の頬はその名の如く紅に染まっていて。その様はまるで可憐な少女のようで

それ程に紫月を想う彼の気持ちが伝わってくるようで、瞬時に湧き上がった嫉妬の感情が

再び冷徹な自分を引き摺り出してしまうようで、言い表せない思いに白夜はぎゅっと拳を握り締めた。







何をしてしまうかわからないっ・・・・

こんなふうに純情可憐に頬を染めて唯ひとりを想っているこの人が哀れすぎて

こんなにもこの人を想っている俺の気持ちなんか気付く気配もなく

どんなに伝えたってほんの少しもこの人には届かない・・・・

この人の心は紫色で溢れているから

自分を省みてなどくれない相手を一途に想い続けているこの人が哀れで可愛くて愛しくて

壊してしまいたくなるっ・・・・

昨夜のように無理矢理押さえ付けてこじ開けて犯して・・・・

めちゃめちゃにしてしまいたくなる・・・・

この手に壊されてめちゃめちゃになったこの人の姿を想像しただけで俺は・・・・・

とまらない・・・っ・・・・・・・

何をしてしまうかわからない・・・・

自分が・・・怖くて・・・・・・

だけど・・・・・







そんな思いが頭の中を、心の中を、身体中を、、、、駆け巡る。

このときの白夜にとって自制心などという言葉は存在し得ないものであるのに違いはなかった。

目の前の真っ黒な黒髪を、

俯きながら揺れている褐色の瞳を、

僅かに染まった紅の頬の、

それらすべてを壊してしまいたい、、、、、そんな思いが全身を電流のように貫いて。

気付けば力ずくで彼を組み敷いて、衣服を引き剥がしていた。