CRIMSON Vol.62
それから早めの夕食を取り、只何となく流されるように時間は過ぎて二人は夕闇の中を散歩に出ていた。

前を歩く紫月は相変わらずに明るく楽しそうで、そんな様子にも紅月は心の内をなかなか言い出せずにいた。

重たく沈むような表情に夕陽が眩しく反射して、今にも泣き出しそうな瞳は苦しそうに歪んでいた。

そんな心の内をすべて分かっている紫月はくすりと不適な笑みを浮かべると、だが態度だけは酷く親身な様子を

取り繕いながら、とびきり優しげに話し掛けるのだった。





「どうしたの紅?どっか具合でも悪いのかい?」

「え・・・・・・・・・?」

「さっきから黙んまりだからさ?歩くの、きついのか?」

「え・・・・あの・・・・違うよ・・・・・歩くのは・・・・大丈夫・・・・・・・・」



でも・・・・・・・・・・



紅月は今度こそ自身の気持ちを伝えようと思い切って何かを言い掛け、、、、

「ね、ねえ紫月・・・・・お願い・・・・話があるんだ・・・・・お願いだから僕の話を・・・・」

だが又してもはぐらかされるように、するりと会話をかわされてしまった。



「無理すんなよ。歩くのくたびれたんだったらおぶってやるよ紅、、、、、」

そう言って腕を捕られ、しっかりと抱き竦められてしまう・・・・・・

紅月は有無を言えないまま、紫月の思惑に流されていった。



「愛してんだぜ紅、、、、、?

お前がくたびれたんなら俺がおぶってやる、、、、、俺が疲れたときはお前がそうしてくれるんだろう?

俺たちはお互いのことを自分以上に大切なんだから、、、、、そうだろう?」



紫月っ・・・・・・・・・・・



「紅、、、、、、? なあ、、、、、大丈夫?」

ゆっくりと顔が近付き、側にあった林の樹に押し付けられて、、、、、、

「なあ紅、、、、キス、、、、していいか、、、、、、、?」

そう言ったときにはもう唇が重ね合わされていて、捕られたままの腕も樹に押し付けられ、まるで動けないまま

流されるように奪われてゆく、、、、、

蕩けるような瞳で自分を見詰める紫月の吐息は熱く逸り、相変わらずに何をも聞き入れられる様子は無かった。



「好き、、、、、好きだよ紅、、、、、愛してる、、、、、、」

「待って・・・・・・・・っ・・・・ねえ紫月っ・・・・・・・・」

「ここじゃ嫌か、、、、?こんなとこですんの、、、、嫌?

でも、、、、俺我慢出来ねえんだ、、、、、、ほら、、、、、、ココ、、、、、、

ほら、、、、紅、、、、触って、、、、、俺の、、、、」

持っていかれた手の先に硬く勃ち上がった紫月の分身を感じて、紅月はビクリと肩を竦めた。

「紫月っ・・・・・・・・・・!待ってっ・・・・・・僕はっ・・・・・・・・・」

ぎゅっと閉じられた瞳からは今にも涙が零れそうで、だが興奮している紫月の身体は熱く、触れ合う度に

強引に自分を奪おうと押し寄せてくるようで・・・・・

ついには滲み出した涙に全身が震え出す頃にはいつの間にか外されたシャツのボタンの中へと

指先が進入してくるのを感じた。

「だめだ紅、、、、、我慢出来ねえ、、、、、ここで、、、、してもいいか?」

「紫月っ・・・・・・・!僕はっ・・・・・・・・・」

「頼むよ紅、、、、、そんなに激しくしねえようにするから、、、、、、

な?分かってくれよ、、、、、俺っ、、、、お前が欲しくてどうしようもねえんだっ、、、、、、」

普段なら恥ずかしくて言わないような言葉を連発する・・・・・

わざと切なそうに瞳を歪める・・・・・

二人だけだから、誰に遠慮がいらないからなのだろうか?

いつもよりも強引に求められながら、紅月に出来ることはただ言いなりになって流されることだけであった。

ビクビクと肩を震わせ怯えるように瞳を閉じて涙を滲ませて・・・・・

夕闇の降り切った木立ちの中に白い素肌を晒されながら、熱く逸った吐息と涙に滲んだ頬とが

重なり合わされていった。





好きだよ紅、、、、、、愛してるぜ、、、、、、、っ!





「い・・・やっ・・・・・・・・・嫌っ・・・・紫月っ・・・・・・・お願い・・・・・・お願・・・・・・・いっ・・・・・」





やめてー・・・・・・・・・















月が高く天心に昇り切ると、紫月と紅月は湯上りの浴衣に身を包みながらベッドの上で肩を並べていた。

2つある大きなベッドの、けれどもそのうちのひとつに腰掛け、ただ肩を並べあって・・・・・・

「ね、、、、紅?ベッド、、、、お前どっちがいい?」

いつまで経っても本当のことを言い出せないのと、先程の激しい交わりのショックとで頭の中が混乱している

紅月は、ぼんやりと人形のように瞳を虚ろにしていた。

「俺は、、、、一緒に寝たいんだけどな、、、、、?

このベッド結構でかいしさ?わざわざ別々に寝なくても、、、、、」

そう言い掛けた紫月の言葉があまりにも飄々(ひょうひょう)としていて、その強引さを押し破るように

紅月は全身が熱くなるのを感じていた。そしてついに心の中に抱え込んだ思いを口にした。



「紫月っ・・・・・お願い・・・・話があるんだっ・・・・・・僕はっ・・・・・・・」





愛してるひとがいるからっ−−−−−





その言葉に紫月の褐色の瞳が一瞬不思議そうに揺れて紅月を捉えた。