CRIMSON Vol.59 |
|
「紫月さん・・・・・・・・!」
驚いて一瞬硬直してしまった帝斗に紫月も又ほんの一瞬衝撃のような表情を見せたが、すぐに籠った思いを
吐き出すかのように酷い言葉を口にした。
「どうしてっ、、、、!?
なんでそんなやさしくすんだよっ、、、、俺はお前を裏切ったんだぞっ、、、、、
お前のことを恋人だの大好きだのって言っておきながら紅月ともっ、、、、、
それに今はもう俺は紅月のもんだろう!?なのになんでそんなっ、、、、、
自分を捨てたような酷い男のことなんかをそんなふうにやさしく包めるんだよっ!
もっと、、、、、ふざけんなって詰ってくれた方がすっきりするさっ、、、、、そんなっ、、、、、
偽善者みてえにやさしくされるよりよっぽどいいっ、、、、、、」
「紫月・・・・・・・そんな・・・・・僕は只・・・・・・・・・」
「うるせえよっ、、、、言やあいいだろっ!?
ばかだって、、、、お前は酷い男だって、、、、最低のクズ野郎だってっ!
言えよっ、、、、詰れよっ、、、、、」
とりとめもなく怒鳴り散らすとさすがに帝斗の表情も曇っていった。
だがそこまで言われているのに紫月を見つめる瞳は哀しそうに歪んでいて・・・・・・
そんな表情を目にした途端にズキズキと心臓の中心がえぐられるように痛んで、紫月は上着だけ取り上げると
たまらずにその場を飛び出して行った。
「紫月さんっ・・・・・・!」
呼び止める帝斗の声にも耳を塞ぐように全速で駆けた。
唇を噛み締めながらプロダクションの非常階段を逃げるように駆け下りて、広い駐車場を飛び出せば、
眩しいくらいに反射した夕陽が濡れた頬を照らし出した。

紫月が傷心のままプロダクションから逃げるように一之宮の邸へ戻ったのは、もう陽も暮れ落ちて宵闇が
あたりを包み始める頃だった。
春の蒼い宵が一瞬目をくらませるようなその時間、重たい気持ちを抱えて力なく駐車場からの道を部屋へと
向かっていた。
ふと目についた庭の薔薇園へと続く小道に引き寄せられるように部屋までの道を遠回りしたそのときだった、
紅月が大切に育てていた薔薇園を複雑な思いでぼんやりと眺め、昔からのことを思い返していたとき、
ぼそぼそと聞えてきた話し声にふと薔薇の生垣越しに覗き込んだ光景を目にした瞬間に、あまりの驚きに
思わず「あっ!」と小さな声をあげてしまった。
瞬時に全身の血の気が引く程に驚いて、ガクガクと壁に寄り掛かって必死に身体を支えなければならない程で。
茨の生垣の向こうに垣間見た光景−−−−−
それは信じられないような会話と、逸るような吐息混じりに飛び込んで来た。
「本当に平気・・・・・・心配しないで・・・・・ちゃんと言うから・・・・・・
紫月には・・・・ちゃんと・・・・・・
今度帰って来たらちゃんと話をするよ。そうしたら僕からお前のアパートを訪ねるから・・・・・・」
「紅月、、、、、でも、、、、、」
「いいんだっ・・・・・それより誰かに見つかったらよくない・・・・・
お前が来てるなんて知れたらうち中が大騒ぎになるよ。夕飯でも一緒になんてなったら困るだろう?」
「俺は構わない、、、、、久し振りに旦那様や若林さんにお会い出来るのは光栄だし、それに、、、、」
「それに・・・・・?」
「食事に招ばれて酒を呑めば車は運転出来なくなるし、、、、」
「だから・・・・・・・?」
「そうしたら、、、、泊まっていくことだって可能だ、、、、俺の部屋、まだある?それとももう新しい秘書のものに
なっちゃった?」
クスリと微笑ってそんなことを言った様子に
「バカ・・・・・・・・・新しい秘書なんていないって言ったのに・・・・・」
そう言って頬を染めた。
「白夜・・・・・・・・好きだよ・・・・・・・愛してる・・・・・・・・」
「紅月、、、、、、だめだよ、、、、そんなことしたら、、、俺我慢出来なくなるから、、、、」
「我慢・・・・・・・しないで・・・・・・」
「ばか、、、、こんなとこで、、、、我慢しなかったらそれこそたいへん、、、、」
「あ・・・・・・・いいの・・・・・そんなこと、どうでもいいよ・・・・・・・好きなんだ白夜・・・・・・お前が・・・・・」
欲しいよ−−−−−
「紅月、、、、、、、!」
「あ・・・・・・あぁっ・・・・・んっ・・・・んふ・・・・・・・・・っ白夜・・・・・」
白夜ーっ−−−−−
熱い吐息が、
濡れて重なり合う唇の音が、
闇の中に木魂して、、、、、
逸ったように探り合う互いの肌が露になった頃、その様子をまるで無機質の機械のように焼き付けた
紫月の瞳から感情が失われていった。
蒼白く燃える炎がゆらゆらと揺れて、冷たく凍るような瞳の先には淫らな表情で目の前の男に身体を預ける
紅月の姿がくっきりと映し出されていた。
「白夜ー・・・・・も、我慢できないよ・・・・・・・・・お前が・・・・・・・欲しい・・・・・・・・
お願い・・・・・・・ちょっとだけでいい・・・から・・・・・・・・・・」
「ばか、、、、そんなことできるわけねえって、、、、、こんなとこで、、、、」
「大丈夫、誰も来ないよ・・・・・・・・若林は夕飯の支度で忙しいし・・・・・・他のみんなも・・・・・・
だから・・・・ちょっとだけ・・・・・・」
「我が侭、、、、、、」
「うるさ・・・い・・・・・・・・・・・だってもうこんなだもん・・・・どうしようもない・・・・・」
そう言って白夜の手を取ると勃ち上がったものへと導いて。
「本当に、、、、あなたって、、、、、、」
「なんだよ・・・・・・」
「うんん、もうこんなに濡らして、、、、こんなにされたら俺だって我慢、、、限界、、、、、、」
「白夜・・・・・白夜ーっ・・・・・好き・・・・・・・
好きなんだ・・・・・お前が・・・・だから・・・・・・濡れるのだって・・・・・お前が好きだから・・・・・・」
「ばか、、、、、紅月さま、、、、、、、」
「あっ・・・・・・ああっ・・・・・白っ・・・・・!」
ズルリと濡れて滑るような音の後には淫猥なリズムが一定間隔で壁を叩く、、、、、
白夜が揺らす度に紅月から漏れ出す嬌声が蒼い闇に溶け込んでは消えた。
|
|
 |
|
|