CRIMSON Vol.56
「何をされたって、、、、文句なんか言えないっ、、、、、」

そう言ったまま再び唇を塞がれて今度は舌を絡められて濃厚に吸い取られるようにくちづけをされた。

ベッドに仰向けにされて覆い被さられて、腕を捕られ、頬を押さえられ身動きさえ出来ないように拘束されて。

「あなたのせいだ紅月っ、、、、、あなたが独りで俺のところへなんか来るからっ、、、、、」

漏れ出す吐息が止まらない・・・・・

辛そうに歪められた瞳でさえ虚ろに熱を伴っていて・・・・・・





−−−−−もう限界−−−−−





その言葉の通りに自分を見詰める白夜の瞳は刹那と揺れていた。

「紅月、、、、、、紅月さまっ、、、、、、

愛してる、、、、、あなたを、、、、今でも俺はっ、、、、、、、」

「白夜っ・・・・・・」

首筋で縋るように揺れている白夜の髪を愛しむように紅月も又瞳を潤めた。

抵抗せず、されるがままに、そして次第に湧き上がった止め処ない性の欲望さえ心地よく感じられて、

それらが入り混じって紅月の意識を揺さぶる。

今、ここに白夜がいることがこんなにもうれしくて・・・・・・

こうして側で自分を求めてくれる姿に涙が出る程の安堵感を感じていた。

懐かしくて、恋しくて、激しくて、どうしようもない感覚に駆られる。

自身の中で入り混じっていたその気持ちが何なのか、こうして白夜の腕の中に抱き締められて

初めて自覚出来たかのように紅月の瞳から大粒の涙が零れて落ちた。





「うっ・・・・・・んんっ・・・・・・・」





声をあげてすすり泣く、そんな様子に白夜はハッとしたようにむしゃぶりついていた肌から顔を離した。



「紅月、、、、、嫌か、、、、、?やっぱりこんなことされるの、、、、、嫌なんだろ?」

「う・・・・・・・・・・」

「だったら、、、、、何で此処へ来た?何で又来たいなんて言った?どうしてっ、、、、、

あなたには紫月さんがいるのにっ、、、、、あんなに望んでたんだろ?

紫月さんと一緒になることを、、、、、彼とだけ一緒に居たいって永い間あなたは願ってた、、、、、

そうだろ?なのに、、、、、

それなのにどうして俺のことなんか、、、、、

もう、秘書も辞めたんだし二度と会わないことだって出来たのにっ、、、、、、

折角あなたの前から姿を消したつもりだったのに、、、、、

あなたとっ、、、、紫月さんを見ているのが辛いから、、、、、俺はっ、、、、、」



「白夜・・・・・・・・?」



「あのままあなたの側にいれば俺は又何をしてしまうか分からないから、、、、、

だから離れたのにあなたが紫月さんと幸せになれるんだったら、そう思って身を引いたのに、、、

あなたは何の悪気もなさそうに俺の前に姿を現した、、、、、

残酷だ紅月、、、、、こんなにされて抑えろなんて、、、、、出来っこないぜ、、、、、っ」

「白夜・・・・・・・・・お前・・・・・・・

それで・・・・辞めたわけ・・・・・・?僕と紫月の為に秘書を・・・・・・・?」

胸元に顔を埋めて嗚咽しながら思いを吐き出した白夜の言葉に、その真意を初めて聞いて紅月は

呆然となっていた。

そんな理由で白夜が自分の下を去っただなんて考えもしなかった。

自分は白夜にとって大した存在ではないと思われていたのだと、だから秘書などよりももっとやり甲斐の

ある仕事を選んで去ったのだと、そんなふうに思っていたから・・・・・

そしてそんなふうに思われていたことがショックで哀しくて仕方なかったから。

白夜がいなくなった後にぽっかりと穴が開いたような虚しさに苛まれていたのは彼のことを必要と

していたのが自分の方だということに薄々気付いていたから。

そして今はっきりとそれを確かめるかのように紅月は瞳を細めると、胸元に埋められている彼の黒髪を

愛しむように両の腕で抱き締めた。



「白夜・・・・・・・白夜・・・・・・・・・」



軽く瞳を閉じればボロボロと大粒の涙が溢れ出て、それは初めてはっきりと気付いた自分の気持ちへの

安心感でもあるようで、白夜の側にいられることがこんなに安心で幸せで胸が高鳴るのかということを

思い知らされたようでもあり、又そんなことがとてもうれしく感じられて・・・・・

此処へ来ることに胸躍ったのは白夜のことが好きだったから。

秘書を辞められて放心する程ショックだったのも白夜のことが好きだったから。

帰れと言われて傷付いたのもすべて白夜を想えばこそ・・・・・・・

紅月は抱き締めていた腕を緩めると白夜の顔を覗き込みながら溢れ出る想いを口にした。





「馬鹿だっ・・・・・・僕は・・・・・っ」





「紅月さま、、、、、、、?」

突然に抱き締められ白夜は驚いていて、覗き込まれた瞳を不安そうに見詰め返した。





「白夜・・・・・・僕は・・・・・・・気が付かなかった・・・・・・・・っ

お前が秘書を辞めたのが何であんなにショックだったのか・・・・・・

何であんなに傷付いた気持ちになったのか・・・・・

此処に来ることがなんであんなに楽しみに感じられたのかっ・・・・・・・全部っ・・・・・・

全部・・・・・・・・・・お前が・・・・・・」

「紅月、、、、、、、?」

「お前が・・・・・・・・僕は、お前がっ・・・・・・・」

吐き出すようにそう言って紅月は白夜の胸元へと顔を埋めた。縋るように抱きついて・・・・・・・





「紅月さま、、、、、、?どうした、、、、、、」

「白夜・・・・・・・・白夜・・・・・・・・・・・・お前が・・・・・・・・・僕はお前のことが・・・・・・・」





−−−−−−−−−−好き−−−−−−−−−−