CRIMSON Vol.3 |
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「何しに来たんだよ?」
地下にある立派な洋風の扉を閉めながら低い声で紫月はそう尋ねた。
きょうろきょろとその立派な造りの室内を見渡しながら真っ黒な髪が揺れる、僅かに笑みを讃えて
紫月と同じ褐色の瞳が振り返った。
「つれない挨拶だねえ、何ヶ月会ってないと思ってんだ?仕事が忙しいのかと思って我慢してやってりゃあ、
お前はあんな若い子捕まえて楽しんでるとはね、恐れ入ったよ。ってーか、なあんかすげえバカにされた
感じ。はっきり言って気分悪ぃぜ。」
「何言って、、、」
だからさ・・・
「え?」
「だから、犯してやったんだあの子。お前が夢中なあの子のことがさ、ちょっと気に入らなくって。」
「なっ、、ふざけんなよっ、、倫に何しやがったっ!?てめえっ、、、犯したって、、、、まさか、、、」
「何かりかりしてんの?当たり前じゃん。お前だってさっき見ただろ?俺があの子を裸に剥いただけで
終わらせると思ったの?相変わらず甘いな、紫月ちゃんはあ、、、!」
ケラケラと嘲るように笑いながら平気でそんなことを言い放つ、そんな仕草のすべてが信じられないといった
ふうに紫月の褐色の瞳は歪んで・・・・
「な、、んでそんなことすんだよ、、、、倫は関係ないだろ、、、、だいたいっ、、!
あいつはウチ(T−Sプロ)の大事な商品なんだぞっ、、それをっ、、、、、」
そう怒鳴りかけて自分と瓜二つの褐色の瞳に言葉を止められた。
「へえ・・・商品ねえ・・・?なら・・・・
なら買ってやるよ。俺がさっき楽しませて貰った分さ、幾らでも払うぜ?
ふふ・・・我が一之宮財閥にとっちゃそんなモン、びびたるもんさ。そうだろ?
お前が出てった一之宮家のさ・・・力がどれくらい絶大かー、なんていちいち説明する必要ないよなあ?」
・・・・・・・・・・・・・
「なに?黙り込んじゃって?お前そんなにウチが嫌いなわけ?一人飛び出しちゃって自分の
やりたいコト好き勝手にやってさ。そんでこ〜んな立派なプロダクションなんて作っちゃってさ?
これは全部自分の力で稼いだ結果ですっ、ってか?
お前ばっか幸せそうで何かホント気にいらねえよな?俺がどんな気持ちで毎日過ごしてきたかなんて
一度も考えたことねえだろ?」
「どんな、、って、、、、何だよ、、?あんただって充分いい生活してんじゃねえかよ?その、、、
絶大なる一之宮家のご長男さまなんだからさ、何だって好きにできんだろ?それを、、、」
「好きになんてっ・・・・何だって好きになんてならねえよっ。金があるからっ・・・何でも自由になると
思ったら大間違いだぜ・・・・俺はっ・・俺の一番欲しいモノはいつまで経ったって手になんか入らねえ・・・」
そう言ったと同時にぎゅっと紫月を引き寄せて真っ黒な髪とヘーゼル色の髪が、、、重なった。
縋るように唇が触れられて・・・
「やっ、、、やめろっ、、、紅月っ、、、!」
「やっと・・・やっと紅月って呼んでくれたね紫月・・・・うれしいよ紫月っ・・・・」
頬を摺り寄せて吐息混じりにそう囁く、耳元の熱い吐息を感じながら紫月は背筋に伝わったぞわぞわとした
寒気のような感覚に翻弄されそうになっていた。
「やめ、、ろっ、、、放せよっ、、、、」
半ば気が違ったように自分を求める紅月の熱い吐息を嫌悪するかのように突き飛ばして・・・
「なん・・だよ・・・紫月・・・せっかくこうして会えたっていうのに・・・・どうして逃げるんだよ・・・?
どうしてっ・・・!?
お前が・・・欲しくて欲しくて・・・俺はずっと・・毎日ずっと・・・お前が家に顔出してくれるのだけを
楽しみに生きて来たのに・・・・お前に会いたくて、お前の顔が見たくて、お前の声が聴きたくてっ・・・
ずっとずっと耐えてきたのにっ・・・・・・!」
「なのにお前は帰って来なかった・・・いくら待っても・・いくら呼んでもお前がいない・・・・・
広いベッドにいつもひとりの寂しさがどんなもんだったかって・・・・お前には解んねえだろっ・・・!」
「何言ってんだよ、、、おい、やめろよっ、、、放せよ紅月っ、、、、!?」
ふ、、、ははっははははっ、、、、、
「俺がこんなに苦しんでるのに・・お前を想ってこんなに焦がれてるのに、お前はそんなこと微塵も
気付かないって態度でさ?で、すごく勇気を出して来て見りゃああんな若造といちゃついてるなんてさ、
あはははっ・・・・バカみたいなのは俺ひとりじゃん?ふふふっふ・・・・・だから壊してやったんだ、あの子・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・
「あはは・・・可愛かったなあ、確かにさ?お前が夢中になんのもわからないでもねえよなあ?
やだやだー、なんて言いながらさ?しっかり射精しちゃってさあ?それも3回もだぜ?
やめてやめてって泣きながら3回・・・はははっ、たまんねえよなあ?」
「なっ、、いい加減にしろよっ、、、てめえっ、、倫をっ、、、よくもっ、、、」
「よくも・・・何だよ?そりゃあこっちのセリフだぜっ・・・よくも”俺の紫月”に纏わり付いてくれたってなっ!」
紅月は紫月の腕を捕るとぐいと勢いよく引き寄せて、そのまま後ろ側から抱き竦めるように覆いかぶさった。
「やっ、、、やめろよっ、、放せっ、、、、、紅月、、っ、、、」
ばたばたと身を捩る、そんな紫月の肩に冷やりとした感覚が貼り付いて・・・・
・・・・・・・・・・・!!?
「紫月ぃ・・・・」
再び熱い吐息が耳元を掠める、と同時にほんの一瞬背中に走ったぴりりとした感覚に紫月はぞっとしたように
大きな瞳を見開いた。紅月に腰元を抱き締められたまましばらくはときがとまったように身動ぎ出来ず・・・
つうー、っと背中に液体の伝う感覚に意を決したように後ろを振り返ると紅月が瞳を細めながら
夢うつつのような表情で自分を見つめていた。
手には光る銀色の物、鋭利なナイフが握られている。
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