CRIMSON Vol.1
アールデコのいつもの扉を開けて倫周は今宵も自分を待つ粟津帝斗の部屋へと帰って来た。



「ただいま・・・・」



当然の如くうれしそうな逸る表情で自分を待っているはずの帝斗の部屋へ一歩踏み込んだ途端に

倫周の大きな瞳は驚いたように固まってしまった。

「紫月・・・・・・!」



・・・・・・・・・・・・・・・!??



「紫・・月・・・・?どうしたの・・・・その髪・・・・」

そこにはいつものヘーゼル色の髪を真っ黒に染めた一之宮紫月が立っていた。

あまりに驚いてその場に立ち尽くしている倫周にそっと近寄ると

「お前、倫周?・・・・・・・・・・倫周だろ?」



え・・・・・・・・・?



真っ黒な髪の紫月はにやりと不適な笑みを浮かべながらゆっくりと倫周に歩み寄ると見事な栗色の

髪を撫でながら瞳を細めた。

「へえ・・・ほんとに綺麗だなあ・・・・・テレビで見るより格段に美人さんだ。」

「あ・・あの・・・・紫月・・・・・?」

言われていることがよく解らずに倫周は珍しそうに自分を見つめる褐色の瞳を見上げるとくりくりと

大きな瞳を見開いた。

「紫月・・・・どうしたの・・・・あの・・・・・・」

自分を見下ろす褐色の瞳は確かに紫月のものに他ならない。けれども何だか雰囲気がいつもと違っているようで、

それが真っ黒に染められた髪のせいなのか、不可思議な感覚に倫周は戸惑った。



「ね、ねえ紫月・・・・」



少々不安な面持ちで目の前の存在を覗き込むように首を傾げ、だが突然にぐい、と顔を近付けられて

両の肩を強い力で掴まれビクリと身体を捩った。



「紫っ・・紫月っ・・・・・・」



黒い髪の紫月は有無を言わさずといった感じで慌てる細い身体を勢いよく引き寄せると、

少しの説明も口にしないまま息もできない程の抱擁をしてよこした。

少々乱暴なくらいに顎を持ち上げられた瞬間に唇を塞がれて強引なくらいに深く舌を絡められて・・・・



そばにあったソファーに押し倒されるとあっという間に細い身体に覆いかぶさられてしまった。

次々と有無を言わさないといった感じで愛撫を施されて・・・・

「紫っ・・紫月っ・・・・待ってよ、ねえ・・・・こんなとこで・・・・

お風呂だってまだだしっ・・・・・それに帝斗だってっ・・・・・」

そう言い掛けたとき、乱暴に茶色の長い髪をむんずと掴み上げられた。

「痛っ・・・・・紫月・・・・紫っ・・・・・」

その瞬間、先程からの異様な事態に不安に大きく揺れている倫周を更に硬直させるような言葉が囁かれ。





「やっぱりな。お前紫月といつもこんなことしてんだろ?」





え・・・・・・・・・・・?





「それに何?帝斗って粟津くんのこと?粟津くんともこんなことしてんの?く、、、ふふふふっ、、、、

まさかいつも3人でやってるなんて、、ね?冗談だろ?」



・・・・・・・・・・・・・・・・



何を言われているかまったく理解出来ていないまま組み敷かれていた倫周の細い身体を

引き上げるようにしながら抱き締めると黒い髪の紫月は信じられないような言葉を口にした。



「なら慣れてんだな?じゃ、せいぜいお味見させていただくとするかなあ?」



・・・・・・・・・・・???



「やっ・・・・ちょっと待ってよっ、紫月っ・・・・・いったいどうした・・・・・・って・・・・」

最後まで問い掛けの終わらない内に再びソファーに突き飛ばされて・・・・

「やっ・・・やめてっ・・・何を・・・・っ・・」

ベストの下の生成色のシャツをぐいと捲し上げると何の前触れもないままに胸元の花びらを舐め上げられた。





「ひゃあっ・・・・」

瞬時に襲った快楽の感覚に倫周は悲鳴を上げると肩をすぼめるようにしながら綺麗な頬を紅潮させた。

「や・・やめて・・・紫月っ・・・・ちゃんとお風呂入ってからっ・・・・・・っぁああっ・・・・」

きゅっと繭を顰めながら頬を紅に染めて横を向いた顔が淫らに次の行為を求めているようで、

紫月は思わず苦笑いをすると共に可笑しそうに高い声で笑い出した。

まるで嘲るように笑い声をあげて。





「参ったなこりゃ・・・これじゃあ紫月が夢中になるのも納得ってもんだ。あははは・・・・」



「あ・・あの・・・・」



「まあだ解んねえの?俺、紫月じゃねえぜ?」



「え・・・・?」



「くっ、、はははっ、、、ほんと天然だなあお前。ま、そこがイイんだろうけどさっ、俺はね紫月の兄貴!

紫月は俺の弟なんだよ。」



「お・・とうと・・・・?」



「そっ、おとうと!最近紫月が帰って来ないもんでちょっと様子見に来たらやっぱりこんなことだったって

わけだ。紫月の奴、お前に夢中なんだ?」

「あ・・・あの・・・・・・じゃあこれから会うんですか・・今日・・・・」

「そう、ホントはね紫月に用があって来たんだけどね。ふふ、、、」

少々繭を引きつらせるようにしながらくすりと微笑んで・・・

「でも気が変わった。何かお前見たら急に犯りたくなっちまった。」





「えっ・・?」





「そりゃそうだろ?こ〜んな綺麗な子、目の前にしてさ?手ェ出さねえ奴がいたら会ってみたいもんだぜ。

それにさ、お前いつもだって紫月と寝てんだろ?ならいいじゃん、ちょっと付き合えよ。」

そう言ったと同時に紫月の兄と名乗るその男は強引に倫周を組み敷いた。まるでレイプするかの

ように着ていた服を剥ぎ取られ・・・・



「やっ・・・やめてっ・・・・・何するんですかっ・・・・ちょっとっ・・やだっ・・・・・・」

撒くし上げられた綿素材のベストでさえ編み目を壊すかのように引き裂かれて生成色のシャツは

ボタンが弾けて飛ぶ程激しく破かれてしまった。

「嫌っ・・・嫌ああぁっ・・・・やめっ・・・・・」

あまりの乱暴な様に必死に逃れようとする倫周の細い身体を後ろから抱き竦めると

荒々しくベルトを解いてズボンまでをも手早く引きずり下ろした。

「嫌っ・・・助けてっ・・・・誰かっ・・・紫月っ・・紫っ・・・・・」

先程からの信じられない事態に倫周は蒼白となり、がくがくと震える膝には既に力など入るはずもなかった。