背徳の贈り物
「両の手首に金属の輪を繋がれて、足首も同じように捉えられ、大きく身体を開かれたその姿は

恥辱この上なくて−−−−−

当然の如く一糸纏わぬ白い肌を天上から一筋の鈍い灯りが照らし出していた。





「こんなことをして・・・・どうするつもりだ・・・・・・」

そんな陵辱に全身を蝕まれ、だが割合と落ち着いた調子で一之宮紅月は自分を見下ろす

誠実な部下に声を掛けた。

数年前に父の後を継いで以来、ずっと自分の下で従って来た生真面目な秘書、白夜に囚われて

信じられないような現実に焦る気持ちを懸命に抑えて言った言葉。

だが白夜はそんな紅月の心中を見抜いているかのようにうすら笑いを浮かべた。

「それがあなたの精一杯の抵抗ですか?

ふふふ、、、だったらおよしなさい。そんなことは無駄な消費に過ぎない。」

余裕のある低い声がより不気味さを感じさせ、ただそれだけで全身が凍りつく思いに駆られていく。

これから起こり得るだろう現実に、計り知れない恐ろしさのようなものを感じて紅月は美しい褐色の瞳を

震わせた。





「白夜っ・・・・・・・!」

つう、と這わされた長く冷たい指先が頬を伝い唇を撫で回し、たまらない恐怖に瞳を顰めれば

力なく開いたままの歯列を割って舌先を掴まれた。

「んぐっ・・・・・・やっ・・・・・・嫌っ・・・白・・夜っ」

唯一自由になる首をあちこちに捻って彼の指先から逃げ回る。

だがどんなにもがいたとてそんなものは抵抗のかけらにもなり得はしなかった。

「嫌っ・・・・・やだー・・・・・・白夜・・・・・っ」

どうしてこんなことをされなければならないのだろう?

まがりなりにも自分は社長で白夜は秘書で、今までは誠実この上ない大好きな部下だったのに・・・・

そんな彼がまるで人が変わったかのように豹変したのはここ最近のこと・・・・

紅月は信じ難いような現実に戸惑いながらも納得のいく真実に辿り着ける暇もなく、気付いてみれば

流されるままにときは過ぎて行った。





「やめて・・ー・・・・白夜っ・・・・どうしてこんなことっ・・・・」

「どうして?

あなたって本当に鈍感な人だな、、、、今日はクリスマスだよ?」

「クリスマス・・・・・?」

「そう、、、年に一度の神聖なる夜に、、、、とびきりのプレゼントをご用意したつもりなのに?」

「プ、プレゼント・・・・・?」

「そう、、、、愛するあなたに心からの贈り物、、、、

極上の快楽を与えてあげるよ、、、、、」

「・・・・・・・・・・かっ、快楽って・・・・・・・・」

「ほら、、、余計なことは考えないでいいから神経を集中させろよ。

この、、、、指先の動きを舌で追ってごらん?」

「うっ・・・・・・・・っ」

くりくりと口の中を掻き回されるように動く指先が、唾液に濡れて次第に温かさを増してくる、、、、、

気の遠くなるような思いにふと瞳を瞑れば身体の奥深くから沸き上がってくる無情なる感覚に

掬われそうだった。





「んっ・・・・・あ・・・っ・・・・・・・・」

ほんの少し意識が揺らいだのを見てとった彼の長い指先が濡れたまま喉元を伝い鎖骨へと入り込み、、、、

既に綻んだ胸元の花びらに触れたとき、想像を絶する程の痺れが全神経を硬直させた。





「やあっ・・・・・・あっ・・・・あふっ・・・・・・白夜っ・・・・白っ」

「気持ちいいだろう?ほら、、、、たったコレだけでこんなに反応じて、、、、

本当にあなたっていやらしいヒトだな。綺麗な俺のディレクトール、、、、可愛くて無防備で、

あんまりいとし過ぎて壊してしまいたくなるよ、、、、」

「あっ・・・・・・あんっ・・・・・・白夜っ・・・・・・いや・・・・・・」

「ふふ、、、、本当に、、、、壊してやりたい、、、、、、こんなふうに、、、、さ?」





ひっ・・・・・・・・ああーーっ・・・・・・・・・・





ぎしりとベッドの軋む音と共に胸元から脇腹を両の手のひらで包み込むように撫でられて、

紅月は思わず絶叫を放った。

ぞくぞくと背筋を這い上がってくる淫らな欲望は悲惨な程に止め処なくて−−−−−

「やめてっ・・・・・やめて白夜ー・・・・・っ・・・っ・・・・」



あーっ・・・・・・



全身に立ち込めた鳥肌は無情なくらいに欲望を煽る。

とぎれとぎれの嬌声も更なる欲望を呼び込む道具に過ぎなくて・・・・・









もっと、、、、もっと、、、、、もっと、、、、、、、

触れて、、、、

撫でて、、、、、

舐めて、、、、、

壊して欲しい、、、、っ、、、、

苦痛なくらいの欲望をお前の全身で奪い尽くして、、、、

ああ白夜っ、、、、、

めちゃくちゃにして、、、、、









頬を伝う涙が、

半開きの唇から零れ落ちる蜜液が、

額から噴出した汗でさえ、

すべてが目の前の男を求めてやまない・・・・・





翻弄され、

飢え餓え、

どうしようもなく張り詰めた紅月の熱いモノからは滴る程に濃い蜜がたっぷりと潤みだしていた。





「瞳が虚ろになってるぜ?そんなにいいんだ、、、、?

ココももうこんなに腫れ上がって。このまま放置しておいたら破裂してしまいそうだな?」

低く蔑み囁かれる彼の声は欲望を煽り出すだけ・・・・

この上ない陵辱の瞬間が極上に感じられるなんて・・・・・

「想像以上だな、ディレクトール。あなたがこんなにいやらしいヒトだったなんてね?

ふふ、、、、可愛いな、、、、、

じゃあご褒美をあげようか?」

朦朧とした意識の中でうっすらと開いた瞳の中に僅かに微笑んだ彼の口元が映り込んだ。その瞬間に

又しても全身を貫かれるような衝撃が走って紅月は褐色の瞳を裂けんばかりに見開いた。





「ひぃっ・・あっ・・・・・・!」





白夜は張り詰めた紅月のペニスの根元をくいと親指で押え込むとそのまま先端へと撫で上げた。

その直後に濃い蜜で潤み、濡れていたそこから乳白色の更に濃い欲望が弾き出されると、高く嘲るような

笑い声が天上に木魂した。





「くっ、、、、ははははっ、、、、、、

たまんねー、、、、たったコレだけでイっちゃうなんてね?

本当にあなたって可愛いなー、、、、!イイ歳してまるで夢精が始まったばかりの子供みたいだぜ?

そんなあなたを見るとついもっと悪いコトしたくなってしまう、、、、

悪いコト、教えてあげたくなってしまうよ、、、、マイ・ディレクトール、、、、」

恥ずかしさで真っ赤に熟れた頬を強い力で掴まれて、嘲るようにそんな言葉を囁かれ−−−−−

恥辱に全身が打ち震えた。

瞳を開けて視線を合わせることも出来ずに恥ずかしさの極地に言葉も出ずに。

それでも尚とまらない掬われるような感覚に自身を救う方法はもはや涙を流すことくらいで・・・・



両手両脚を縛られて、

大きく身体を開かされて、

悪戯され、

高められ、

到達させられて。



「最高のプレゼントだろう?

今まで味わったことのないくらいの極上の欲望を、今宵あなたに贈るよ紅月、、、、

俺の愛しいディレクトール、、、、

紅月さま、、、、」



瞳を細めながら囁かれるその言葉の本当の意味合いの解らないまま、更に続けられるだろう儀式に

紅月の白い肌は再び震え出し、言い知れぬ恐怖に彼の神経は既にこれを現実とは受け止められないでいた。





夢か幻か?

忠実だった部下から差し出された贈り物は聖なる夜に裁かれるかのように背徳と揺らいでいた。








                                        FIN