蒼の国-絶望の果てに- |
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一頻り、倫周を侵蝕し終えると男達はその場を後にした。まだまだ続けられる、
信じられないような言葉を残して。
男は卓の上に札びらを置くと倫周の動かなくなった身体を転がしながら言った。
「これは今日の分だ、俺達と、俺達の後にもう1人やって来るから、そいつの分と合わせてな。
お前に渡せって預かってきたのよ。これで酒でも買え。そうすりゃ少しは気も紛れるだろうぜ。
じゃあな。」
そう言うと男は帰って行った。
倫周はすでに放心したようになっており何を言われているのか理解できないようだったが、ふと
卓の上に置かれた札びらに目をやると皺くちゃになった札びらがばらばらと置かれていた。
男が無造作に握りこんで持って来たのだろう、薄汚れたその様に倫周は自分を重ねていた。
起き上がる事も出来ないまま、只 寝台の上で室の天上だけを見つめていた。
午後になって先程の男が言っていた通りに別の男が訪ねて来た。初めて見る顔のようだが
倫周にとってはそんな事はもうどうでもよかった。
男は にやけた様子でうれしそうにしながら、
本当にいいんですかい?などと口にしながら倫周の身体を愉しんで帰って行った。
夕刻になって早めに帰って来た周瑜にそれらの様を悟られないようにするだけで倫周は精一杯
だった。なるべく明るい態度を見せながら自分が何をしているか、何を話しているのかさえも
分からなくなるような感じだった。まるで心と身体が分離してしまい、自分の身体が他人のものの
ような感覚に襲われて。周瑜が床に就く時間が来ると魂が解き放たれたように気が楽になった。
そんな事が3日も続いた頃。
いつものように周瑜が倫周の室に帰って来た。
倫周にとってはもう心も身体も限界に来ていた。出来るならばこの周瑜の訪問が無くてくれたら、
とまで思う程になっていた。
倫周はもう疲れ切っていたのだ。周瑜の前で偽りの自分を演じる事にも、
立て続けに男達に身体を侵蝕される事にも。たった数日でげっそりと衰えてしまった
自分の身体を動かす事さえ嫌だった。
だが周瑜も又、やはりその心に不安を抱えていた。
あの落馬以来の倫周の様子がどこかおかしい事と、目にみえない不安が始終付き纏っていた。
いつものように自分の帰りを迎えに出てきた倫周のあまりのやつれように周瑜は不安に
掻き立てられる思いがした。
その不安を拭い去るように側に寄り、やさしく抱き締めようとしたとき、
びくり、と倫周が肩をすぼめて俯いた。まるで自分を拒否するかのような倫周の態度に
周瑜は益々不安に駆られて戸惑った。
そんな周瑜の心中が伝わったのか、倫周は青い顔をして周瑜に謝ると
「ごめ、ん。今日は少し、具合が悪いんだ。公瑾、、、先に休んでいい?」
下を向いたまま、自分の顔もみようとせず、ふらふらと寝所に向かう倫周に
周瑜は声も掛けられなかった。
不安が襲う。
黒い雲が一面に広がるようで・・
周瑜は言いようのない思いに駆られていた。
夜半になって倫周の呻き声で周喩は目を覚ました。
はっと、隣りへ目をやると、倫周が苦しそうに何かに魘されていて・・・。
恐怖に怯えるように、何かから逃れるように必死に助けを求めるような表情に、
周瑜は倫周を揺り起こした。
「おい、倫周!どうしたのだ!?おい、大丈夫か!?」
体を揺すられてはっと我に返った倫周が、かっと、瞳を見開いて・・・
恐る恐る、といった感じで隣りを確認する視線がまるで恐ろしいものでも見るように怯えていた。
自分を確認して安心したのか、ふうーっと倫周が大きなため息をついた。そんな様に
周瑜の不安は一層掻き立てられて、いても立っても居られずに倫周を問い詰めた。
「倫周、、いったい何があるというのだ、、?お前は私に何を隠している、、、?」
周瑜さま・・・助けて、怖い・・もう嫌だよ・・・・
倫周の瞳が揺れる。
縋りたいというように。
しばらく怯えたような瞳で周瑜を見つめていたが・・・・
耐え切れずに倫周は周瑜の胸に飛び込んだ。
「うっ、、え、、っ、、、」
押し殺したような嗚咽の泣き声が響いてきて。
周瑜は包むように倫周の肩を抱いた。
何度理由を訊いても倫周は何も言わず只、只、泣き続けるだけであった。
そっと、自分の胸にしがみ付く倫周の身体を起こして周瑜はやさしく抱き締めた。
涙で濡れたその頬に手をやってそっとくちづけをして 全てを包み込むように
やわらかく愛撫を重ねて。
やわらかく、いつものように、やさしく包んでやったのに、、、
「あぁあ・・・・んっ・・あぁ・・・・・っ・・」
今までにはおよそ聞いたことの無いような淫らな嬌声が漏れて。
びくんっ、と倫周の身体が反応して周瑜は驚いた。一瞬、びくっと身体が動いてしまった程に
倫周の様子は淫らだった。
「や・・っ・・・はぁ・・っ・・・ああっ・・・・」
ほんの少し触れただけなのに過剰に反応する身体、、
耐え切れずに漏れる嬌声、その全てがまるで色欲だけのように感じられて。
周瑜は戸惑った。
おかしい、いつもは自分の愛撫で心地よくなり知らないうちに眠り込んでしまう程の倫周が、
ほんのちょっと触れただけで過敏に反応し、耐え切れないといったように喘ぐ、まるで身体だけが
分離しているようだ。
周瑜の心にどす黒い暗黒の雲が急速に広がり・・・
一体、どうしたというのだ倫周、、、まさか、、、?
一瞬頭に浮かんだ想像に、みるみると顔色は失せていった。
翌朝が来て周瑜はどす黒い不安を抱えたまま仕事に出掛けた。
体中を蝕まれるような気持ちに駆られながら。
周瑜の不安は的中してしまう。
その日も倫周はいつものように男達に身体を預けていた。
もう嫌だとか辛いとかいった感情は無く、只、只、過ぎ行く時に漂っているだけで。
その瞳は何もみていなかったし、心は何も考えていなかった。
只 もうされるがままになっていただけ。
いつものように朝と午後に別の男達がやってきて、彼らが愉しんで帰った後の室で、
きな臭い、欲望の乾いた臭いに全身を軋ませながら僅かに差し込む夕陽を
ぼうっと視線が追いかけていたとき。
かたんっ、と扉が開く音がして。
倫周は寝台の上にぼうっと座り込んでいた。無意識のように乾いた声が呟いて・・・
「誰れ?まだいたの?今日はさっきの奴らで終わりだと思ってたのに、、、」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しばらくの間をおいて又 倫周は言った。
「いいよ、来いよ」
そう言うと手招きをしながら寝台の上に身を屈めた。
「なに、、してんの、、?やるんなら早くしてよ。」
しばらくしても動かない男の様子に倫周は起き上がると、ふいと後ろを振り返って。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
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