蒼の国-運命の白花-
はらはら、、、白い花が舞う。

倫周は自室の庭に出て月を見ていた。その姿は儚げで目を離せば消えてしまうかのようだった。



「倫周」



孫策に呼ばれて倫周は後ろを振り返った。今宵も又自分は孫策に抱かれるのだと、自然な感じで

倫周は孫策に近寄った。そしていつものようにその胸の中に顔を埋めようとした時、

孫策の口から飛び出した意外な言葉に大きな瞳は一瞬 空を漂うようにぼんやりと止まった。

愛している・・・・



え?



一瞬言われた意味が理解できないような不思議な表情をした。

「今日、粟津に会ってきた。」

そう聞くと倫周は一瞬びくっと肩を竦めた。

「今日、粟津に会ってきた。お前を俺の専属護衛にしてくれるよう頼んできた。」

倫周は驚いたような顔で孫策を見つめた。孫策の言っている事の意味がよく解らないといった感じである。

「あの、専属護衛ですか、、?」

それは一体何だろうというような表情をした。

孫策は倫周の瞳を真っ直ぐに見つめると逸る気持ちを抑えるように話し出した。

「倫周、俺は・・・

俺はお前をずっと側に置きたいんだ。他の誰かのところには行かせたくない。俺は・・・

俺はお前が好きになってしまったようだ。

お前ともっと一緒に過ごしたい、お前のことをもっと知りたい、お前の全てを俺のもとに置いておきたい!

お前は俺が嫌いか?俺は・・・俺は、お前を愛している・・・・多分、愛してる・・」

恥ずかしそうに早口で、でもしっかりと自分の瞳を捉えて話す孫策に倫周は目が丸くなってしまった。
  
孫策はそれ以上言葉にはできなくなってしまったようで2人はしばらくその場に立ち尽くしてしまった。



月が高くなる、2人を照らして。

はらはらと白い花が舞う、2人を包んで、、、



倫周は不思議そうな顔をして立っていた。孫策の言っていることがまるで耳に入っていないかのように。

孫策は何も反応出来ない倫周の肩をつかむと、思いを吐き出すように言った。

「倫周、俺はお前を誰にも渡したくないんだ!親父にも・・・粟津にも・・・・!」

その言葉にさすがに倫周の顔がこわばった。

そして少し辛そうな顔をして俯くと寂しそうに繭を顰めながら小さな声で呟いた。

「あなたには・・・あなたは本当の俺を知らない・・・だけど、もし知ったら・・・・」

そう言い掛けてぐっと唇を噛んだ。

倫周の顔が歪む。

瞳を閉じて苦しそうに、 細い身体はこぶしを握りしめて僅かに震えていた。



そんな様子に たまらず孫策は倫周を抱き寄せた。強くその腕に抱き締めて、

そして大きな声で思いのたけを叫んだ。

「倫周っ、お前の全てを俺に預けろっ!俺が、お前の全てを受け止めてやるから・・・

苦しいのなら俺にあたっていいっ、哀しいのなら俺の前で泣けばいいっ、お前の全てを愛してやるから・・・・!

お前も俺を見ろ、俺だけを見ろ、他の誰でもなく俺だけをっ!

お前は今日から俺のものだ、誰にも渡さない、誰にもやらない、親父にも、粟津にも、誰にもっ・・・!

俺は、お前を愛している!」





はらはら、、、白い花が舞う。やさしく俺を包んで。

信じていいの?

寄りかかってもいいの? 

孫策・・・

あなたを愛してもいいの?

俺を愛してくれるの?

本当に?夢じゃないの?

夢じゃないなら・・・!



その証をみせてくれ!その証を刻み付けてくれ!俺はあなたのものなんだっていう証を・・・

この身体に・・・・!





あなたの愛で全てを消して。あなたの愛で全てを奪って。あなたの愛で全てを壊してっ!





蒼い夜が流れる。孫策と倫周を包んで。蒼い闇の中に2人きりの時が流れる。

なあ、不思議だろう?俺はお前と出会ってそんなに時間は経ってなくて、それなのにお前に

これほどまでに魅かれてしまった、お前は男なのに。お前の言うように俺はお前のことをよく知らないのに。

だけどな、そんなことはどうでもいいんだ。俺には今お前が側にいるって事が一番大事なんだ。

お前が側にいればいい、それ以上何もいらねえ。こうしてこの腕の中にお前がいて、、、



孫策はそっと倫周の瞳を覗き込んで目を細めた。

互いに引き寄せられるように瞳が閉じられて。

唇が重なり合う、軽く開いた口元からお互いの想いを絡めて。

少しずつその存在を確かめるように。

手と手を取り合う、どちらからともなく。もっと強くもっと深くその存在を確かめたくて。

すぐ側にあるその存在を自分のものにしてしまいたくて。

力が篭もる、全てをもぎ取るように。

強さを増して、激しさを増して、触れられるものは全て触れて、繋げるものは全て繋いで。

熱い吐息、あふれる熱情、その全てが2人を溶かして。求め合う。強く、激しく、どこまでも。

波が2人を引き寄せる、最後の至福の瞬間に。



「ああ・・・・孫策・・孫 さ  く・・・・・・・!」

お前が叫ぶ。至福の言葉。俺とお前の至福の言葉。

ときをがこのまま進まぬように。ずっとこのまま。ずっと2人で。お前の至福の言葉を聴かせてくれ!


倫周っ・・・俺のすべて・・・・!