蒼の国-未来への決意- |
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「この先は郭嘉奉考の部屋だけだ。そこをクリアすれば曹操の自室へ繋がる扉が掴めるはずだ。
そして恐らくは曹操の部屋から通じる抜け道の出口も、、、」
ビルがそう言うと京がそれに合い槌を打った。
「ああ、しかしここを突破するのはそう簡単じゃないぞ。この郭嘉の部屋から異常に護衛と見張りの数が
増えている。ここまでするって事は俺たちの欲しい答えはほぼこの中だと思って間違いない。
しかし、だ。これだけの数を正面から相手していては当然騒ぎは避けられない。まあ、中に入りさえすりゃあ、
護衛くらいは何とかなるとして、だ。これだけの見張りをいっぺんに方付けるのは楽じゃあないぜ。
そうとう首尾よくやらねえっていうと、こっちが危ない。正体がばれたら全てパーだ。
ここはもう一辺きちんと作戦を練ってだな、人海戦術でいくしか」
そんなことを言いながらぶつぶつと京が考えていると
「ひとつだけ、いい方法がある。」
静かにそう言ったのは倫周だった。
「ひとつだけ、怪しまれずに見張りを追い払う方法がある。郭嘉自身に追い払ってもらうんだ。」
そう言うと皆を見渡して瞳を閉じた。
「郭嘉を誘って、俺が・・・」 その間に部屋の先へ進めばいい。
皆は一瞬驚いた。
まさか、、、そんなこと、、、
「確かに。確かにそれなら怪しまれずに人払いはできそうだ、だけど、、、」
そう言って京は皆の顔を見渡した。
「だめですよ、それはだめですっ!」
きっぱりとした口調で帝斗は言った。
誰も皆、同じ意見だと言っているようであった。
「あなたに孫伯符を裏切るような真似はさせられません。絶対にだめです!」
きっぱりとそう言った。
皆同じだと言うようにうなずく。帝斗は続けた。
「ですが、確かにいい作戦ではあります。だから、、、僕がやりましょう。」
ええっ・・・!?
僕がやりましょうって、、、?お前が郭嘉に抱かれんのか? と ビルがストレート過ぎる質問を口にすると
にこやかに頷きながら帝斗は言った。
「そうです、いいかんがえでしょう。」
その様子に皆あっけにとられたようにお互いを見合わせた。
「いやあ、確かにいい考えですが、でも、あの、もし失敗なんてことになったら。だからその、社長は
お歳も郭嘉より上ですし・・・」
たじたじとした様子で京は言った。
「い、いや、だからもっと、その、違う方法を考えましょうよ、ねえ?」
と皆を見渡すとそれを聞いていた遼二が口をはさんだ。
「いいや、わからねえぜ。もしかして郭嘉は逆の方かもよ?それなら粟津でもいいかもしれねえが・・・
それならそれで、俺の方が適任だぜ!」
得意気にそう言ってみせた。
「ばかだなあ、色事ではちょっと有名なあの郭嘉様だぜ。逆なわけあるか。」
そうビルが言うと。
それは史実だろう?本当のところはわからんさ。
一同がそんな事を真剣に討論している様子をみてこりゃあだめだ!と思う潤であった。
ふっと小さな声が聞こえて、顔を真っ赤にした信一が何か話し出した。
「なあ、俺、俺がいく。俺にやれせてくれ、その役、、、。きっと郭嘉も子供っぽい方が油断すると
思うんだ。俺、いつも歳よか下にみられるし。それに俺も一応、その、経験、あるし、、、」
そう言うと切なそうな目で剛を見つめた。まるで「俺はお前を裏切るんじゃない、だから解ってくれ」
とでも言うように。剛にもそれが伝わったのか、静かに瞳を閉じると
「そうだな」
とひと言いって信一を抱き締めた。 ひとたび一同を真剣な切ない雰囲気が包み込んだが・・・
その様子を柱にもたれて聞いていた倫周がスッと起き上がって呟いた。
無理だよ・・・
皆ははっとして倫周を見た。倫周は瞳を閉じたまま軽く微笑んで言った。
「無理だよ、お前程度の経験じゃ。これはいちかばちかの賭けなんだ。
いっぱつで郭嘉をものにできなきゃお終いだ。」
そして静かに微笑うと瞳を見開いて真剣な眼差しで言った。
「俺以外には無理だ。」
一同は顔を見合わせたまま沈黙してしまった。確かにそうかも知れないが、やはり孫策と倫周の
いきさつをよく知っているメンバーにはこれを推進するのは拒まれた。
皆のそんな様子を見て倫周は遠い夜空を見上げると穏やかな声で話し出した。
「俺たちはその為に魏の捕虜になったんだぜ、これは仕事なんだ。それに、、、
それにこのままいけば、遅かれ早かれ呉蜀は魏に呑み込まれる。時間の問題だ。
そうなれば孫策だってお終いだ。孫策に限らず、だ。それじゃ元も子もない。そうだろう?
早く事を切り上げて魏軍の数を減らすのが今は先決だろう。
だから、俺はこの先の為にも、、、俺が、、、」
見上げたその空の向こうに孫策を見ているのだろうか。 遠い目をしながらそんな事を言った。
「わかったぜ、倫、、、そうしよう」
そう言ったのは遼二であった。
皆はまだ沈黙したままだったが、
各々の心中では致し方ないという雰囲気になりかけていた。
それでも帝斗はまだ反対の意思を色濃くしていて辛そうな表情で倫周を見つめる。
どうあっても孫策を裏切らせるわけにはいかない、そういう瞳をしていた。
そんな帝斗の横を倫周が通り抜けたとき。
はっと、帝斗は振り返った。
ありがとう・・・
そう聞こえたような気がして。
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