蒼の国-薄幸な痛み-
ーーー公瑾ーーー

そう叫ばれた声に、皆が振り返った。その声の持ち主の方へ。

「すまぬ公瑾、許してくれ、、、!」

周瑜の前に出て跪き、許しを請う、その人は、、、!

孫権仲謀。であった。



「殿・・・?」

周瑜はもちろん、皆がこの事態に静まり返った。

孫権は周瑜の前で土下座をすると心の内を吐き出すように叫んだ。

「許してくれ、公瑾、この者をこのように追い詰めたのはこの私なのだ、、、!」

孫権の意外な言葉に 一頻り 一同は騒然となった。



「この者に男達を使わせたのはこの私だ、この者とお前を引き裂いて、この者を私のものにしようと

したのだ。

最初は只の憎しみからだった、この者、この倫周を辱めて私は復讐をしようとしたんだ、

兄上に寵愛を受けておきながら、兄上が亡くなるともうお前と、、そんなこいつが許せなくて。

私は倫周の元を訪れた。只 憎くて、憎しみだけで私は倫周を犯したんだ、

だが、そうしているうちに、

倫周をこの手に抱いているうちにある思いが私の中に浮かんできた。

この者を手に入れれば、この倫周を私の者にすれば、兄上や父上になれる、

父と兄がその手に抱いたこの倫周を手に入れれば私自身が父や兄のようになれると思えたんだ、

そんな事はありっこないのに。

そうしないと不安だったんだ、私にはどうがんばっても父や兄には届かない。でもこの倫周を

私のものにできれば何かが変われるんじゃないかと、本気でそう思ったんだ。

それで、私は男達をまわしたんだ、この倫周の元へ。節操無く男達の手に係る倫周を見れば

お前がこの者と別れると思った。2人を引き離して、私が倫周を手に入れようと思ったのだ。

浅はかだ。本当に、、、っ、、

どんな償いもする、、、!悪かった、公瑾 許してくれ、、、!」

孫権は床に頭をこすり付けて泣いた。

周瑜も又 その様子に涙して。



そんな事があったのか・・・!



「気が付いてやれなくて・・・私がっ!倫周にも、殿にも辛い思いをさせてしまった・・・

伯符が亡くなった後、あなたが全ての事をそんなに重く抱え込んでいたなどと露ほどにも思わずに、

私は・・・私の方こそ、お許し下さい、殿・・・!そして、倫周のことも、私がきちんと

ご報告申し上げていれば、こんなことには・・・

全て私の配慮が足らなかった・・・私のせいで辛い思いをさせてしまった・・・

許しておくれ、倫周・・・・・・・!」



そう言って周瑜は倫周を抱き締めては声をあげて嗚咽した。