蒼の国-月下双星- |
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嵐のようなこの一連の出来事はあっという間に館中に広まった。
孫権はこの出来事を隠すことをせずに正直に本心を告げた。そうすることで少しでも
自分の犯したことを償いたいと思ったのである。
が、しかしこの孫権の行為は逆に皆の心を動かし感動を与える結果となった。
一国の主たる者がこのようにして深い哀しみと悩みを抱え、それと正直に向き合うその姿は
人々の心に深く感銘を与えたのである。
兄、孫策の太陽の如く人々を引き付けたその魅力の影で、悩み苦しみどうにかして新しい国を
造り上げようとしている孫権に自分の人生を捧げようと忠誠心を自覚する者が多く出た。
本当の意味での新しい君主の誕生であった。
こうして孫権の下、新たな気持ちが固められて新生呉国は動き出したのである。
周瑜はあれ以来片時も倫周の側を離れようとはしなかった。その傷が癒えるまでずっと側で
看病をし、倫周の身体が戻るのを待っていた。その気持ちが通じたのか、通常よりも早く倫周は
回復に向かっていた。
傷が全て綺麗になった頃、2人は久し振りに外に出た。
そよそよと初秋の風が心地よい夜だった。
「もうすぐ名月だな。」
秋の高くなった空を見上げて周瑜は言った。その側で倫周がこっくりと頷く。
河原を渡る夜風が本当に気持ちよくて、しばらく2人はその場に佇んでいた。
静かに周瑜が倫周を見つめて。
「よかった、、、お前が元通りになって、、、」
そう言うと倫周の肩に手を掛けて唇を噛み締めながら僅かに震える声で周瑜は言った。
「もしかして元に戻らなかったらどうしようと思った、本当にお前が死んでしまったらどうしようと、、、
とても、不安だった、、、!」
周瑜は倫周の肩に置いた手に力を込めると、ぐいとその身体を引き寄せた。
「倫周、、、」
震える手で倫周を抱き締めた、その全身から自分に対する愛しさと切なさが伝わってくるようで
倫周は身動きが出来なかった。
その美しい瞳を細めて周瑜は倫周を見つめ、その瞳が熱く逸って 訴えてくることを感じ取って
倫周は肩を竦めると小さく俯いた。
「公瑾・・・」
小さな声で倫周は思いを告げた。
「公瑾、あの・・嫌じゃない・・?ほら、俺・・・あんなことがあって、男たちに・・・だか、ら・・」
弱々しくそんなことを言った倫周に周瑜は心をぎゅっとつかまれたような思いがした。
心臓がきゅんと苦しくなるようで、周瑜はその細い身体をもう一度強く抱き締めなおした。
そしてその襟元に手をかけると少し強引に衣服を剥ぎ取った。
「公瑾!?」
倫周はいきなりの行為に驚いた様子で肩を竦めた。
十三夜の月光がその白い素肌を照らし出して・・・・
周瑜は引き寄せられるように倫周にくちつ゛けをした。
公瑾、、、?
戸惑う倫周の素肌をじっと見つめて周瑜は言った。
「綺麗だよ、倫周、、、お前は生まれ変わったんだ、新しいお前の肌、もう誰にも触れさせはしない」
ひとつひとつ、確かめるように周瑜はその白い肌をなぞっていきながら
「綺麗だ、本当に・・・お前の肌、真っ白で綺麗な・・・ここも、ここも、ほら・・ここも・・・」
周瑜の細い指先が新しく再生された花びらに触れて、、、
「ぁ・・・あ・・・っ・・」
綻んだ花びらに少しひんやりとした周瑜の細い指の感覚が、心をきゅうっとつかむようで
たまらずに倫周は大きく背を仰け反らせた。
ひんやりとした指先が少しづつ暖かみを増して、緩んできて。
さらさらの周瑜の絹の衣が素肌に触れて心地いい。
熱く、今までよりも激しく、周瑜は新しい白い肌を愛しんだ。
「お前は私のものだ、もう、誰にも渡さない、、、!」
うれしくて、幸せで、倫周の瞳からひとしずく涙が零れた。
「公瑾、、公瑾、、、公瑾、、、!」
素直に、心のままに、倫周も周瑜を求めて。
少し早い中秋の名月の下で、似た面差しの2人はお互いを求め合い、ひとつになった。
まるで元からひとつだったもののように。
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