蒼の国-Go Back-
「郭嘉の依頼が取れた、郭嘉が直々に出陣するぞ。俺達が思っていたよりも数は多そうだ。」

皆がお互いの顔を見合わせた。

どういうことだ? と聞きたい事は皆同じであった。

「ああ、実は、、、」

まだ息を切らしながら倫周はことの流れを説明した。



「実は郭嘉が呉を攻める計画を耳にしてな、それで機会を窺っていたんだ。俺の方から今回の作戦を

持ち出すよりも向こうから”依頼”させた方が怪しまれずに済む。で、ちょっと様子見をしていたんだが。

まあ、思ったより早く郭嘉が動いてくれて助かったぜ。そういう事で最初の計画通り俺たち捕虜が

郭嘉の率いる魏軍を呉軍の中枢地まで案内する事になったってことだ。」

倫周は苦笑いしながら言った。

この作戦の為に結構気使いをしたせいか、少々やつれた感が見受けられた。

顔色も少し蒼白い感じだったが、これで呉に帰れると思ったせいか何だかうれしそうに見えた。

決行までにそれ程日が無かった為、各々が最後の支度に取り掛かった。



まずはこの事を呉の孫策に報告し、呉の入り口で軍を待機させて魏軍を待ち伏せる、といった手筈を

説明をする為に急ぎ、使者を出さなければならなかった。

ここから孫策の所まではそうはいってもかなりの距離があった。いかに馬を走らせたとて、

呉の軍を配備したりする期間を考慮するととうてい時間が足りなかった。

どうするのかという事になった時・・・



「Don't Worry!Guys,Look at that’s・・・!」

ビルの指差す先には、!何とセスナ機が用意されていた。

「高宮氏からのプレセントデース!私が発注してオキマーシタ!」

にこにこと得意顔であった。

「すげ・・セスナなんていつ持ってきたんだよ? ってお前、誰が運転出来るってんだよー???」

剛が目を丸くしながら尋ねる。いや、このセスナは先日高宮が蒼国から届けてよこした代物だったが

それはいいとして確かに誰がこれを運転して呉まで行くのだろうと剛は不思議だった。

またしてもビルが得意そうに言った。

「ナニ言ってるか?この俺だって一応米軍にいたのだからしてセスナくらい運転出来るぞ!だが・・・

今回は急を要するからしてプロにお願いするのが懸命あろう?・・・という事で蘇芳殿、頼みましたゾ!」

・・・・・・・え?

蘇芳は元はパイロットであった。



「へええ!知らなかったあー、蘇芳さん、パイロットだったんだー!?」

剛をはじめ 一同はかなり驚いた。

そういえば この三国志の時代に来る事になって初めて会って仕事を組む事になった安曇と蘇芳のことは

そんなに詳しくは聞いていなかった事に気付いた。 只 この2人が蒼竜と白虎の剣を授かる身だと

いう事くらいしか知らないで今までやってきた事を思うと 皆して噴出してしまった。

よくもまあ、こんな調子でいままでやってこれたものだと。只 そんな事も気に係らなかった位、

一緒に居て自然だった事にも気が付くと皆がお互いに顔を見合わせて又くすっと微笑んだ。

かくして蘇芳は急ぎ孫策の元へ向かった。



蘇芳を見送った帰り道、なだらかな丘を歩きながら遼二はふと倫周に尋ねた。

「なあ、倫、それにしてもお前、よくあの郭嘉を動かすことが出来たなあ。ちょっと痩せちまったんじゃねえか?

その、なんだ、、、結構、大変だったろ、、、?」

少し聞きずらそうではあったが、心配そうに遼二は言った。そんな遼二の気使いがうれしかったのか、

倫周はくすっと微笑って、たいしたことかったよと言った。

そして丘の上にふと立ち止まると静かに瞳を閉じた。

「できなきゃ親父のようにはなれないさ、、完璧に思えたって死んじまうこともあるんだ、親父のように。

俺はまだまだだよ。」

そう言うと ふっと空を見つめた。その瞳が何となく切なそうに揺れていて。



ああ 倫、お前はやっぱり親父と同じ道を歩いてんだな、この世界に来てこんなことが役立つなんてな、、、

結局 俺たちは親父たちの後姿を追ってんだな、、、



遼二は懐かしそうに、そして少し寂しそうに倫周の後ろ姿を見ていた。