蒼の国-呉(孫一族との出会い)- |
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「よく来て下さった。」
そう言うと呉国君主の孫堅文台は蒼の国の一同を快く迎えてくれた。
一体高宮はどのようにして孫堅に迎え入れられる当りをつけたのかはわからないが呉の人々は非常に喜んで
一同を迎えてくれたのであった。
蒼の国とはその時の呉国より、遙か東方の陽の出るところに位置する国とされ、呉国の人々にとっては
未知の国であったが高宮の手配により孫堅にはその存在が神格化されて伝わっていたようだった。
孫堅はじめ呉国では神秘の国”陽の出るところの蒼国”から来たこの11人を心から待ち望み、歓迎したのであった。
孫堅の館に着くと大広間に通され、そこには政を司る者達が既に集められていた。
いわば政治家や軍隊といった国の中枢となる人物が集まっていたのである。
当然、中には史実に出てくる有名な人物達もいたわけでそれらを目の当たりにすると一同は感激の声を上げた。
特に潤などはある程度幅広い知識を持っていた為かその感激振りはたいへんなものだった。
反対に三国志という言葉を聴いても魏・呉・蜀という3つの国の名前が頭に浮かぶのがやっとの者もいたが、
とにかく1800年の昔にこれ程の文明が栄えていたのかと、驚かされたのは皆一緒であった。
建築物や人々の衣装、装飾品、どれをとっても目を見張るものばかりで一同は正直なところかなり驚いたのだった。
そしてやはり潤らにとっては史実に出てくる有名な人々が目の前で生きて動いているその姿に感動せざるを得なかった。
各々に感じるところは違ったが、感動は一緒のようだった。
先ずは蒼の国を代表して粟津帝斗が孫堅に自分たちの紹介を行った。
「私が代表の粟津でございます。こちらは一之宮、その隣が橘、そして重山に藤村、、」
帝斗はひとりひとりを順番に紹介していった。この時帝斗は各々を名字で紹介したがそれは時の呉国に於いて
名や字(あざな)呼びといった習慣からするならば、自分たちのそれとは少々意味合いの違うことからして
解りやすくする為にあえて名字のみを紹介したのであった。
丁寧に跪きながら紹介をする、そんな帝斗の品のある様子にも孫堅は感激したようで終始目を細めながら
この”神の蒼国”から来た一同を見渡していた。
高宮の言った通り、呉・蜀はやはり小さな国で魏に比べると地図上にもやっと載るか載らないかくらいの規模のようだった。
只 やはり将来のために備えて魏よりの進軍には警戒色を強くしており、お互いに小国同士 同盟を結んで
魏に立ち向かうつもりでいるらしかった。
丁度、蜀からもその為の使者と幾人かの武将が各部隊を連れて訪れていたところで親交を深めるには
いい機会だと孫堅は喜んだ。
それから2〜3日の間を置いて蒼の国から来た帝斗ら一同と呉軍の武将や軍師といった実戦を共にする者同士の
交流会が開かれることとなった。
孫堅は帝斗らの為に館の敷地内に専用の大きな幕舎を建ててくれてあり、蒼国のメンバーは主にそこで
生活することとなった。
幕舎といってもそれはかなり大係りなもので実戦用に用いられる程度のものとは違いちょっとした建物であった。
高い天幕の下に広いロビーのような空間があり、そこを中心としてそれぞれの個室が用意されていた。
個室に向かう入り口は扉ではなく幕を引き上げて出入りするといった昔仕様のものだったがその装飾は見事なもので
一堂は感動の溜息を漏らしたのだった。
そうして帝斗ら蒼国の一同の呉国入りは無事に展開し、お互いの交流を深める為の様々な催し事の中にあって
館は久し振りに賑わいを見せていた。
「では皆さん、今日の夜の宴会から交流会が始まりますからね、先日ご招待を受けた武将さん方のお邸へ伺うように。
今日は初日ですからがんばって下さいね。ああ、ビルさんはあんまりお酒を呑み過ぎたりしないように気を付けて下さいよ。」
にっこり微笑んでそう言うと帝斗は各自に招待を受けた武将の邸までの地図等を配っていった。
先日の初対面のときに呉・蜀の各武将たちは蒼国のメンバーを見て興味のある人物を自分の邸に招待していた。
今日はそんな交流の初日だったがこれからも様々な武将たちの所へ招待されては親交を深めようという趣旨らしかった。
オーソドックスな方法だなあ、等と思ったが此処へ来て見てあまりの平和な様子に蒼国の一同はこれで本当に
戦などあり得るのかと少々驚いた様子であった。
何はともあれ夕刻になる頃には招待を受けた邸に向かって弾むように一同は幕舎を後にした。
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