乱火 其の参
「くっ・・・・・・ははははっ・・・・・・・ご存知って・・・・・?

何のこと言ってんだお前・・・・・・・あはははは・・・・・・何か勘違いしてないか?」

「緋爛さまっ、、、、ふざけるのもいい加減にっ、、、、、」

「くっ・・・・・ふふふふっ・・・・・琉っ・・・・・・・僕の裸見て興奮しちゃったんだろ?男同士なのに?

バカじゃないのかお前っ・・・・・・・」

「お戯れをっ、、、そんなことより風邪をひきますから早くっ、、、、、」

「あはははっ・・・・・琉、図星なんだ?じゃあひょっとして接吻もしたことないのお前?」

「接吻っ、、、、、、!?」

「そうー・・・・接吻。まさかホントにないわけ?冗談だろう琉?お前僕より歳上じゃないか!」

「なっ、、、、何をっ、、、、、」

「へえー・・・・ホントにないんだ?見掛けによらず純情なんだな?」

まるで坂道を転がるように飛び出してしまう言葉の数々に引っ込みがつかなくなってしまったのか、

緋爛は煽るように強気の笑みさえ見せながら琉の顔を覗き込んだ。

「緋爛さまっ、いい加減にっ、、、、、」

さすがに我慢の限界といったように琉は声を荒げ、ほんの一瞬言葉が止まった。

重なり合った瞳をどちらからも外せずに気まずい雰囲気が押し包む・・・・・・・・

次第に震え出した肩先を隠すかのように緋爛は又しても強がりの言葉を口にした。

「じゃあ・・・・・させてやろっか?」

「えっ、、、、、、、、?」

「だから・・・・・・接吻・・・・・・っ・・・・・・・」

「何言ってっ、、、、、、、」

「お前・・・・勇気ないんだろ?くっ、ふふふふ・・・・・案外情けないのな?

いつもはしかめっ面して男らしそうなのに?接吻もしたことないなんてっ・・・・・・」

「じゃああなたはどうなんですかっ、、、、、あなただって俺のことをどうこう言えた義理じゃないくせにっ、、、、」

「僕はっ・・・・・・あるさ接吻したことくらいっ・・・・・お前とは違うっ・・・・・・僕はもう大人なんだからっ・・・・・」

「誰とっ!?誰とそんなことしたっていうんだっ、、、、、嘘はよしてくださいっ、、、、」

「嘘なんかじゃないさっ・・・・・接吻くらいいつも学校でっ・・・・・」



「学校、、、、、、、?」



その言葉に言い争っていた琉の声が一瞬うわずって。

「学校でって、、、、、そんなことっ、、、、誰とっ、、、、」

「そんなことどうでもいいだろ?誰と接吻しようが僕の勝手だ・・・・・お前には関係ないっ・・・・・」

「だってっ、、、、学校って、、、、あなたの学校は男子校なのにっ、、、、、」

信じられないというように声を荒げた琉に緋爛は一瞬酷く恥ずかしい思いが込み上げるのを感じた。

まるで自分は汚いものだと言われているようで、そんなことが気真面目な琉よりも劣るとさえ感じられるようで。

瞬時に湧き上がった恥辱のような感覚を振り払うかのように緋爛は開き直ると、ぷいと顔をしかめた。

「はんっ、ガキがっ・・・・・・お前なんか歳ばっかりいってるだけで僕よりてんで子供じゃないかっ!

たかが接吻ひとつでそんなに大騒ぎするなんてっ・・・・・みっともないぜ琉っ・・・・・

誰としたかだって!?そんなことどうだっていいだろっ!?僕の勝手だっ・・・・・

男子校なら接吻しちゃいけないっていうのかっ!?男とだって・・・・・その歳でまだ経験もないようなお前よりは

ずっとマシさっ・・・・・・・」

そう言い放って、信じられないというように側で蒼白となっている琉の様子に更なる嫌悪感を感じた。

それは手酷い感覚−−−−−−−

まるで自分だけが酷く汚いもののように感じられ、琉が自分を見詰める瞳がそう語っているようで。

緋爛はそんな嫌な感覚を押し払うように更なる自暴自棄の言葉を吐き出した。



「そんなに知りたきゃ教えてやるっ・・・・・・僕はこう見えても結構人気あるんだよっ・・・・・・

学校の・・・・先輩連中が僕を好きだって言ってくれてっ・・・・・・だからっ・・・・・・」



「先輩、、、、、、?」



「そうー・・・・・同じ研究会の先輩たちが・・・・・・」

「そいつらと、、、、、接吻を、、、、、、?」

「そうー・・・・・・イケナイ?」

「なんで、、、、、そんな、、、こと、、、、、」

「なんでだって?そんなことお前には関係ない・・・・・・・僕がいいんだからそれで・・・・・」

「どうしてっ、、、、、!」

「琉っ!?」

突然に強い力で腕を掴み上げられて、緋爛は驚いたように瞳を見開いた。

「何するんだっバカッ・・・・・痛いじゃないかっ・・・・・・・・」

思わずカッとなってそう怒鳴った。

けれども掴み上げられた腕はそのままに、じっと黒曜石のような瞳に捉えられたまま食い入るように見詰められて

緋爛は不安そうに瞳を揺らした。

「な・・・・んだよ・・・・・・・そんな目で僕を見るな・・・・・・・・・っ・・・・・

そんなっ・・・・・・汚いものを見るような目・・・・でっ・・・・・

お前なんか・・・・・・接吻のひとつも出来ないでくのぼうのくせしてっ・・・・・・」

半ば自暴自棄のようにそう言った。瞳を背け、辛そうに顔を歪めて・・・・・・

けれどもふと感じた熱い感覚にハッと瞳を開けた瞬間にぐいと顎を掴まれ唇を重ね合わされて、緋爛は

驚きに硬直してしまった。

「やっ・・・・・何するんだバカッ・・・・・・・・・・」






あ・・・・・・・・っ





押し当てられた唇の感覚が信じられなかった。

それはとても熱くて、ときおり触れ合う頬も又、熱く熟れているのがわかる程で。

押し付けているだけの感覚が次第に深く重なり合うように上唇、下唇と押し包まれて緋爛はぎゅっと瞳を瞑った。

「りゅっ・・・・・琉っ・・・・・・・・あっ・・・・・・・」

首を捩り懸命に逃れようとしてもしっかりと押さえつけられた顎はビクともせずに、

熱い息使いまでが伝わってきて・・・・・

「い・・・・やだっ・・・・・・琉っ・・・・・・・っ・・・・・」





ああ・・・・・っ・・・・・・・・・





ふいと押し包まれていた唇を割って熱い舌先が歯列を撫でた感覚に、緋爛は思わず叫び声をあげた。

「嫌っ・・・・・・やだっ・・・・・やめろっ琉っ・・・・・・・・・ああっー・・・・・・」

だが琉はもう止まれないといったふうに興奮した荒い息使いと共に更に唇を押し広げるように舌先を進入させた。

「やめてっ・・・・・琉ーっ・・・・・」

堪らずにガリガリと目の前に覆いかぶさる琉のすべてを引っ掻くように爪を立てて抵抗する・・・・・・

けれどもそんな抵抗の行為が逆に神経を煽ってしまったかのように、琉は脱げかけてい緋爛の

着物の襟を引き裂いた。

「嫌あああぁぁーっ・・・・・・・やめろっ・・・・琉っ・・・・・・・やだっ・・・・・・やだったらっ・・・・・・」



ああーーーーっ・・・・・・・・