一夜の章 其の参
「是非私にそのお役を、、、、、」

少々辛いような面持ちで表情を歪ませながらも蕗耶はそう言った。

「ほう、、、蕗耶がな?」

一夜は意外というように首を傾げたが、それでもうれしそうに手招きをすると蕗耶を側へと呼び寄せた。

「そういえばお前もこの朱華には散々な目に遭わされたひとりだったな?

ふふふ、、、、いいだろう。存分に嬲ってやるがいい。」

そうして小刻みに打ち震えている朱華の脚を更に大きく開くように拘束すると、覆っていた着物を

するりと払い除けた。



ほう、、、、、、、



皆の溜息ともつかないような声色が狭い御簾の中の空間を逸らせる。

だがそうされて朱華は抗えずに虚ろな瞳を揺らすだけが精一杯であった。





「あ・・・・・・・っ・・・・」





蕗耶の唇が軽く敏感な肌に触れ、既に潤み出していた濃い蜜を絡め取るように舌先で捉えられる頃には

抑えきれずに嬌声が漏れだして、、、、、

それを合図といったように胸元では崇史、京二の意地の悪いくらいの愛撫が施され。

今にも気が違いそうな程 上へ下へと責め立てられて、朱華は淫らに頬を上気させた。





「あ・・・・・・あぁ・・・・ふ・・・あふ・・・・・・ぁぁっ・・・・・・」





身を捩り、だが抗えず、自らを差し出すように身体中をくねらせて。

若い欲望はもう待てないといったようにそれを解放した。

「んんーっ・・・・・・んぁっ・・・・・・ぁああああーっ・・・・・・」

ガクガクと開いた脚を震わせながら最後の余韻までをも追い求めるように朱華の蜜が溢れ出て−−−−−





「はっ、、、、達ってしまったか、、、、、、意外にだらしのない、、、、

もっと時間をかけて皆を楽しませてやろうという気はないものか?」

一夜は後ろからがっくりと力の抜けた身体を抱えながら少々呆れ口調で溜息を漏らした。

逸るようにその周りを取り囲んでいた皆も、ふっと蔑むように溜息をつきながら互いを見合わせては

侮蔑の微笑みを漏らし合っていた。だが蕗耶だけは少々辛そうに顔を歪めると、吐き出された朱華の

欲望の欠片にくいと舌を這わせた。

まるで愛しむように蜜液を呑み込んで、、、、、、

そんな様子にも側用人たちはクスクスと笑みを漏らしながら声をひそめ合っていたが、一夜は瞬時に

2人を引き離すように朱華の身体を引き摺り寄せると、まるで表情の無い瞳を蕗耶に向けた。

「そんなことをせずともよい。こんな穢れ者の吐き出したものなど、、、、お前を汚すだけだぞ?」

蕗耶は思わずハッとしたように一夜を見上げて、、、、、、

次の瞬間、一夜は急に立ち上がると相も変わらずに無表情のままでその場にいた全員を見渡した。



「ご苦労だったな。もう下がってよい、、、、」

少しの剣を帯びた言葉が低い声でそう囁かれ、、、、、

そんな様子に蕗耶をはじめ、全員がそそくさと暇の支度を始めると、一夜は未だ朱華を引き摺ったままで

その後はひと言も言葉を発することはしなかった。

そうして立ち込めていた淫らなどよめきが急激に冷えた外気で御簾の中を包み込むと、

一夜は まだ虚ろな朱華の身体を放るかのようにいきなり突き飛ばした。



「ひぃっあっ・・・・・・・」

まるで我に返ったような悲鳴がほんの一瞬響いて消える。

驚いたように一夜を見上げる朱華の瞳は再び戸惑いに揺れていた。



「一夜・・・・・・さま・・・・・?」

まるで無表情のまま自身を見下ろしてくる翡翠玉の瞳が冷たく色を失くしている、、、、、

未だ無言のままのその姿に言い知れぬような恐怖さえ感じ取って朱華は大きな瞳を震わせた。



「一夜さま・・・・・・あの・・・・・・」

戸惑う朱華の、か細い問い掛けに、だが次の瞬間一夜は乱暴にその細い身体を掴み上げると勢いよく

庭へと連れ出して、そこでも叩き付けるかのように地面へと放り投げた。

「ああぁっ・・・・・・!?」

そのあまりの勢いに朱華は恐怖に身を屈めるとしばらくは動くことも出来ずにいた。

外は既に闇が降り切った、音も無く雪の降りしきる暗灰の世界であった。

その冷たさと怖さにカタカタと身を震わせながら、顔さえも上げられずに俯いたままの細い身体を

乱暴に揺さぶり掴み上げ。

一夜は屈み込んでいる身体をまるで癪に障ったかのように引き寄せると、両の腕に縄を巻き付けて完全に拘束した。

「一夜さまっ・・・・・一夜っ・・・・・・・・」

懇願する如く小さな叫び声が雪の静圧に押し包まれて−−−−−

ようやくと放たれた一夜の低い声と共に、側にあった椿の枝に高く縄を吊り上げられて朱華は驚きに瞳を歪めた。



「なっ・・・・にをっ・・・・・一夜さまっ・・・・・・・」

「そこでしばらく考えるがいい、、、、、お前には似合いだ、、、、」

無表情のままの無情な言葉は更なる恐怖を生み出すようで。

かつて無いくらいの仕打ちに言葉さえも見つからなかった。

「この雪で、、、、少しはその汚い身体を清めるといい。 本当は、、、、

本当はこんな仕置きでは足りはしないがな?」

一夜はそれだけ言うと一糸纏わぬ姿のままの朱華を置いて室へと戻って行った。

朱華は驚いて、、、、、



「一夜さまっ・・・・・そんなっ・・・・こんなことっ・・・・・・・

このままでは凍えてしまいますっ・・・・・・後生ですからそれだけはっ・・・・・

一夜さまーっ・・・・・・・」

必死で叫ばれる声も雪の静けさが発する側から吸収していく、、、、、

冷たい闇の中に独り取り残されて、何をも考えることなど不可能であった。