蒼の国-Reload- |
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「お前は倫を抱いたことがあるか?」
帝斗は首を横に振った。
「いいえ、ありませんよ、、、でもどうしてそんなことが、、、」
やっぱりな、、、
紫月は何か思い当たるようにそう言うと事の次第を話しはじめた。
「正直驚いたんだ、初めてのとき。ほんの短い間に帝斗がここまで倫の身体を変えちまったのかって
俺はてっきり帝斗が倫を抱いているもんだと思っていたから、、、
こんな短い間にまさかとも思ったけど。もしかして、と思ってな、、、
倫は抱かれることに慣れていた、しかも”男に抱かれること”にな。
あまりにも自然に俺を受け入れる倫に戸惑ったが、倫の身体は敏感で
ちょっとのことでもすごく、その、反応して。
心では俺を突き放しても身体が求めて止まらない、、、
そんときに気付くべきだったかもしれない。あれは誰かに相当仕込まれた身体だった、、、
帝斗にしろ誰にしろ短期間であそこまでなるかなと思うくらい。
俺が倫にそういうことを植えつけてやろうと思ってしたことだったんだが、
帝斗じゃないなら一体誰があそこまでにしたっていうんだ、、、?もしそれが、、、」
「それが幼少の頃から吹き込まれたことだとしたら、、、」
潤が口をはさんだ。
一同が顔を見合わせる。
「もしもそうなら、遼二さんの行動はつじつまが合ってきますね。幼い頃の精神状態は
その時のことを思い出すからでしょうか?」
「だって誰が?”あいつ”って一体誰なんだ?遼二はそれを知っていたというのか?」
皆の会話を聞きながら潤は首を傾げた。
「いや、知っていたのなら、もっと前にこういうことが起こってもおかしくないですよ。
何故今になって突然こんなことになったかということです。あの2人は当然そういった
身体の関係があったわけですから。
今になって突然降って湧いたように起こる問題じゃないってことです、つまり
遼二さんの意識を幼少の頃に戻してしまう位衝撃的なことなわけですから、
もしかすると遼二さん自身も最近になって知ったことなんじゃないでしょうか?」
「じゃあ、遼二はそれを知ってショックを受けて気が違ったってことか?しかし何で今頃になって
そんなことがわかったっていうんだ?まさか倫周自身がそんなこと云うわけないだろうし。
もし俺達の想像通りだったとしても誰が遼二にそんな昔のことを教えたっていうんだ?それに
”あいつ”っていうのは一体誰なんだ、、、」
そう言ってビルが考え込んでいた所へ、ばたんとドアが開いて。
そこには顔面を蒼白に、血相を変えた安曇が立っていた。
「柊は?柊は無事なんですか、、、?」
青い顔で問いかけた。
「ああ、今は落ち着いている、休ませてあるよ。」
安曇はことの次第を帝斗らから詳しく聞くと更に真っ青になってがたがたと震え出した。
俺のせいです、、、きっと、俺があんなこと言ったから、、、
安曇のこの言葉に皆ははっとなった。
「何か、知っているのですか?」
逸る気持ちを抑えるようにして帝斗が尋ねると安曇は辛そうに視線を落として話し出した。
「俺がいけないんです。俺が柊にひどいこと言ったから、、、
俺は、俺は柊のことが好きだったんです。それで、そのことを柊に伝えて、そうしたら柊は俺の
気持ちには応えられないって言ったんです。それで、俺が、、、
俺は柊がいろんな人とその、関係を、持ってるのを、つい、罵倒してしまって。
特に遼二のことは”都合のいい時に利用してるだけなのか”ってそう言ってしまったんです。
柊は多分それを気にして。俺の気持ちに応えられない”理由”を教えてくれようとして、、、
遼二と2人で呼び出されて。柊は遼二のことも俺のことも大切な仲間だと思ってるって言って。
ただ自分には忘れられない人がいるからって。それが、それが原因だと思います、
遼二がそんなふうになってしまったことは。」
忘れられない人?どういう意味だ?
そいつが倫周の幼い頃からのことと何の関係があるっていうんだ?
皆の疑問は一緒のようだった。
「まさか”あいつ”っていうのは、その人のことなんじゃ、、?」
安曇はしばらく言いずらそうにしていたが、思い切ったように話した。
「柊は小さい頃から実の父親に”愛されていた”そうです・・・
でも別に変なことだと思ってなかったと言ってました。それが特別なことだと気付いたのは
大人になってからだったそうです。
気が付いてから父親を憎んだと言ってました、蒼国に来たのも父親に会いたくなかったからと。
でも、憎んでいながら忘れられないと言ったんです。多分、気が付いた時に既に父親が亡くなって
いたこととかが原因なんでしょうか?とにかく忘れられない、恋しくて仕方ない時があると。
遼二はそれでショックを受けたんでしょう。 きっと、、、きっと遼二は、、
本物、なんです。俺なんかが柊に憧れるのと違って、、、気が違う程、柊のことを
思っていたんですね。
それなのに、俺なんかにもやさしく気使ってくれた、、俺は、、、」
帝斗はじめ、紫月、潤、、、他一同は時が止まってしまう程驚いた様子だった。
皆、何も言葉にできないでいた。
そんなことが、、ほんとうに?
静かに潤が口を開いて。
「2人で。2人で乗り越えるしか、無い、、、僕たちには見守ってあげるしかできることは
ありませんね。
あとは、2人で乗り越えていくしかありません、たとえそれがどんなに酷なことでも。」
潤は窓の外に目をやった。
遼二さん、あとはあなた次第ですよ、、、もしも、乗り越えることができるなら、、
僕は応援してます、そのときは、そのときは、本物ですよ、あなたが言ってた、”運命”です、、、! |
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