蒼の国-熱情の一夜2- |
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「倫、、、」
ふい、と手を伸ばしてその白い頬に触れた、遼二の瞳が少し切なそうに揺れ動いて、、、
「眠いのか?」
「ん?ああ・・、少し、ね・・・・遼・・・?」
頬に触れていただけの指先が求めるように動かされて。
「倫、だめだ、、、我慢できねえ、、、」
じっと見つめてくる黒曜石の瞳が憂いを帯びているようで。
「遼・・・?」
形のいい指先は既に白い胸元のバスローブの襟の中へ入り込んできていた。
「・・・っあ・・・・」
胸元の花びらを捉えられて、、、
身体中が熱くなる。ぞわぞわとしたものが込み上げてきて、、、
「遼・・りょ・・・う」
もう待ちきれないというように遼二はソファーの上に倫周を押し倒した。
少し乱暴にバスローブを取り去ると遼二は倫周の白い胸元をじっと見つめた。
ワインのせいか胸元の花びらはいつもよりもふっくらと綻びを増しているようで引き寄せられるように
そこにくちつ゛けた。
丁寧に丁寧に綻んだ花びらを一枚一枚もぎ取るようにくちつ゛けて、、、
「遼っ・・あっ・・いやっ・・・やだ・・・」
頬を染めて倫周が掠れた声をあげる。
「こんなふうにされるの、嫌か、、、?」
酔いのせいで少し潤んだ遼二の瞳が倫周をじっと見つめて。たまらなくなって倫周はその広い
胸にしがみ付いた。
だって・・そんなことされたら、耐えられない・・・ああ遼・・・っ
必死で声を抑えようとしている倫周がどうしようもなく色っぽくて、もっとっもっと乱れる姿を見たくて
遼二は更に強くすべての花びらを毟り取るようにくちつ゛けを繰り返した。
「ぁあっ、や、やめて・・・遼・・っ・・・」
綺麗な色白の頬が更に紅潮する。その様が本当に美しくて。ぎゅっと閉じられた瞳が刹那を
感じさせて。そんな様子があまりにも愛しくて。
もっと見たくなる、こいつの別の表情が。
もっと聞きたくなる、こいつの掠れた声が。全部、全部、俺のものにしたくなる。ああ倫っ、、、!
俺はお前が好きだ、、、そう、いつからか。お前を俺だけのものにしてしまいたい!
いつからだろう?こんなふうに思うようになったのは。以前はこんな感情は無かったのに、、、
お前のことは好きとか嫌いとかじゃなくてもっと別のものだったのに、今は俺だけのものにしたい
なんて思うようになって。どんなに抱き締めてもお前がこの腕からこぼれてしまいそうに思う時が
ある。捕まえても捕まえてもするりと居なくなりそうで不安になる。
どうしちまったんだ?俺は、、、こんなにもこいつが愛しいなんて、こいつは男なのに、、、
いつも側にいるのはわかっているのに。倫だってこうして俺に抱かれてこんなに反応じて、
それだけだって満足なはずなのに。時々お前の全てを俺の中に閉じ込めてしまいたくなる、
お前とずっと一体のままでいたいと思ってしまう。だから。だから、ついもっとお前の別の表情
が見たくなって。すべての表情が見たくなって。こんなことをしてしまう、倫の嫌がることでも、
とめられなくて、、、
だって、好きなんだ倫、、お前はどうなんだ?お前はいつもこうして俺の腕の中にいるけれど、
本当はどう思っているんだ?
俺のことが好きか?
訊きたくなる、お前の気持ち。でも、そんなこと訊けやしない。だから。だから、こんなふうにしか
お前の気持ちを確かめる方法が浮かばなくて。俺にだったら何されても許してくれるか知りたくなって。
ひとこと、訊いてしまえば済むことなのに、怖くて訊けない、、、
倫、お前は俺をどう思ってるんだ?
「やめてっ・・・遼・・・っ・・いや、嫌だ・・・痛いから・・っ・・・」
身を捩りながらその瞳には少し涙が滲んでいて、遼二はその表情に唇を噛み締めた。
倫、どうして?嫌か?俺にだったら何をされてもいいって言って欲しいのに、、、!
心が痛む、ほんの少し、何かがもぎ取られてしまいそうで痛むんだ。
・・・倫っ・・・!
涙に滲んだ綺麗な顔を見下ろしながら、それでも遼二はやめられなくて、自分の意思とは
反対に身体が動く。もうやめてやりたいのに、もう少しやさしくしてやりたいのに、出来ない!
ほんの僅かな望みを探るように遼二もその瞳に刹那の色を浮かべて。
「嫌っ・・!嫌だっ・・遼っやめてっ・・やだあぁっ・・・」
綺麗な薄桃色の花びらは真っ赤に腫れあがって今にも血が出そうなくらい熱く熟れていた。
誰かが叫ぶ声が聴こえたようで。安曇は目を覚ました。
あ、れ、、?ここ、、何処だ、、?
寝ぼけ眼をこすりながら安曇は寝室のドアを開けた。
ああ!そうだった!俺は柊の部屋で、、、?あのまま寝ちゃったんだ!?
「柊?」
声を掛けても返事はない。部屋の中には人気はなく安曇は一瞬考え込んでしまった。
まだ寝ぼけている眼にはとっさには頭が働かなくて。
「柊、何処行ったんだろう?」
ぽつりと呟いた時、安曇は はっと我に返った。
何、、?今の?叫び声、、、?
何処からか叫び声のようなものが聞こえたようで、安曇は耳を澄ました。
・・・・・・・・・・・・・・・!?
確かに何か聴こえる。誰かが何か叫んでいるような。一体何処から?
安曇はベランダへ駆け寄って窓を開けた。微かだがそれは明らかに隣りから聞こえてくるようで
ひょいと柵を乗り越えて隣りの窓の中をそっと覗きこんでみると。
!!
遼二、、、?あっ、、、!柊も、、、まさか、、
安曇の目に映ったものはあまりにも衝撃の光景だった。
どうして、、?だって、あの2人は、、、
いつもだってあんなこと、平気でしてるんだろうに、、、
安曇は瞳を見開いたまま硬直してしまった。そこにはまるで普段は見たことのないような遼二の姿が
あった。まるで何かをもぎ取らんばかりの勢いで倫周に圧し掛かるその姿は狂気を帯びていて。
がくがくと小さく震え始めた膝に手をやるとがその場に屈みこんでしまった。
とめなきゃ、、、でも足が動かない、、、
体ががたがたと震えだして。もうこれ以上見てはいけないような圧迫感に安曇は思わずその場を
後にした。震える肩をかかえながら走って、気が付くと自分の部屋にいた。
あの部屋、遼二の部屋だったんだ、柊の隣の部屋が、、でも、何があったんだろう、あの2人は
いったい、、、?
結局自分は何もできなかったのだし、、、
安曇は気になったがそれ以上どうすることもできなかった。そうして眠れない一夜を過ごした。 |
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