蒼の国-鼓動- |
|
「倫っ、、お前、、、お前、安曇に何をした、、、!?」
こらえ切れずに遼二は倫周を問い詰めて。
来て早々 いきなりの言葉に倫周は戸惑った。
何って、、、
「お前、あいつと何かあったのか、、?何か、したのか、、、?まさ、か、、」
そこまで言われると倫週の表情が少し曇って。
正直に答えた。
「ああ、抱いたよ、、、」
・・・・・・・・!!
遼二は顔色を真っ青にしながら、がたがたと震える声で思いを吐き出した。
「何で、、?何でそんなことしたんだ、、、?お前、一体、何考えてる、、、?」
「何でって、あいつがそうして欲しいって言うから、、、」
倫周は不可思議な顔をした。
第一、安曇のことで遼二が何を怒っているのか、何を震える程真っ青になっているのか、解りかねた。
自分は安曇のあれ程の気持ちを付き返すことなど出来なかったし、そんなことをすればいくら何でも
安曇が気の毒だったから、と説明をしたが。
遼二の様子は収まらないようで、汚い言葉が吐き出された。
「お前はっ、、そんなにセックスがしたいのかよっ、、!?それさえ出来りゃあ誰とだっていいのか!?
誰でもいいからやれりゃあ、それでいいのかよっ、、、!?」
そう言われて今度は倫周の方が真っ青になった。
何でそんなこと言うんだ、、、?何でそんなふうに言われなきゃいけないんだ?俺は決してそんな、、
「何で安曇なんだ、、!?何で潤なんだよっ、、?どうしてお前はやめられないんだ?
どうしてそうやって、誰とでも、、、
まさかまだ粟津や一之宮とも関係が、、、そんなわけねえよなあ?
なあ 倫、、どうなんだよ?」
「なっ、、、何言ってんだ遼二、、、俺もうそんなことしてない、、、
第一、お前何をそんなに怒ってるんだよ、、?」
倫周はわけがわからずに、おどおどとしながら答えたが、だが遼二の耳にはそんなことは
まるで入っていない様子で、更に顔を蒼白にしながらぶつぶつと呟き出した。
「あいつのせいだ、、、あいつが、お前を、こんなふうにしちまったんだ、、、!
どうしてわかってくれない、、?俺が、俺がこんなにお前を想っていること、、、
いつだって心の中はお前を愛しむ気持ちでいっぱいにしながらお前を抱いていたこと、、
どうして伝わらないんだ、
何でわからないんだよおッ、、、倫、俺はお前をっ、、、!」
そう叫びながら遼二は倫周に縋って泣き崩れた。
倫周の膝にしがみ付きながら声をたてて泣いている。あの遼二が、、、
遼二が泣くところなんてあんまり見たことなかった。いつも自分の方が泣いていて、
遼二はそれをなぐさめてくれて。
倫周は遼二のこの姿といい、その心のうちといい、全てに驚きを隠せなかった。
そりゃあ、自分だって遼二のことは大好きだし、居なくなったら困るし、かけがえのないものだって
思ってはいるけれど、そんなふうな感情は今まで持っていなかった、
というよりは深く考えたこともなかった。遼二が側にいるのは当たり前のことだったから。
他の誰かと”寝る”ことだって格別悪いことだなんて思っていなかったし、
遼二と寝ることだってそんなに特別のものではなかったのだ。倫周にとっては本当に自然の行為で。
倫周は目の前で起こっている事態に特に何をどうすることも出来ずに戸惑った。
呆然と立ち尽くしていると足元から遼二の呟くような声が聴こえてきて。
「あいつがいけないんだ、、、あいつがお前をこんなふうに、したんだ、、
お前が好きなのに、俺のいちばん大事なものなのに、あいつが、、、お前の、親父がっ、、、!
許せない、、絶対に、、、許さない、お前に触れる者、、全て、許さない、、、
誰にも触れさせない、誰にも渡さない、、お前は、俺のものだ、、、
俺だけの、そう、だから
俺が守ってやらなきゃいけないんだよな、俺が、この手で、、
お前に振りかかる全てのものから、
触れさせない、、安曇にも、潤にも、粟津にも、一之宮にも、
そう、お前の親父にもっ、、、!」
遼二はそう言うとふらりと立ち上がると黒曜石の瞳に涙をいっぱいにしながら倫周を見つめた。
「倫、お前が好きだっ・・俺はお前を・・・愛しているんだ・・・誰にも渡したくないっ・・!
俺だけのものにしてしまいたいのに・・・!」
そう言う遼二の言葉に倫周にはまだ実感がつかめなかった。
遼が俺を・・・?
俺はどうなんだ、俺は遼二をどう思っていたんだ?
無意識にそんなことを考えていたら突然に大きな胸に抱き竦められた。
遼二は頬刷りをしながら倫周を包んで。
「倫、愛してる・・お前のことが好きなんだ、好きで好きでどうしようもない・・・っ」
遼二は倫周を抱き締めると心から愛しむように愛撫で包んだ。
やさしく、やわらかく、けれども強く。
お前が愛しいと、言葉に出してしまうだけでこんなにも変わってくるものなのか。
今まで心に秘めていたときとは明らかに何かが違って感じられる。
与える方がそうならば受け取る方も又一緒のようで。
倫周は今まで感じたことのない心地よい雰囲気に包まれていた。
ああ遼・・・こんな、全てを奪い取るような愛し方、今までなかった・・・!
倫周の身体は敏感に反応して、押し寄せる波に漂って、意識が遠退く。
ふわふわと心地よくなって。
ああ、遼、気持ちがいい、とっても幸せな気持ち。
そんな甘い気持ちに漂う倫周の白い背中が目に入る。
ああ、倫の背中、茶色の長い髪、細い腕、この全ては俺のもの、誰にも渡さない、
だれにもわたさない、だれにもふれさせない、にはどうしたらいいんだ、このしろいからだは
おれのものだ、おれだけのものだ・・・
くらくらと空気を捻らすように遼二の目線が漂う。
その瞳の中に映るのは、その頭の中に浮かぶのは、倫周のみ、、、!
その心はまるで狂っていくかのように倫周だけを追い求めていた。
幸せに漂う倫周と。狂気に漂う遼二とが。 |
 |
|
|