蒼の国-Destiny1-
白いシーツの上にぱらぱらと茶色の何かが落ちて。

倫周は違和感に気が付いた。



何、、、これ、、?髪、、、の毛、、?



シーツの上には自分の髪の毛がぱらぱらと落ちている。その脇に、ぽたぽたと

赤い滴のようなものが落ちてくる。

背中に冷たいものが触った感じがして。

ふと振り向くと、、、



遼二の瞳にテーブルの上の果物籠が映る。その脇に銀色に光るもの、

ああ綺麗だ、きらきらと光っている、そうだ、これなら倫を守ってやれるかも、、、

無意識にその光るものを手に取って・・・



茶色の髪が舞う。

白いシーツの上にはぽたぽたと赤い斑点が零れていく。

次第にその数が増えて。



ああ、倫、綺麗だよ、、、お前のその白い肌。あんまり綺麗だと誰かに取られちゃうから俺が隠して

あげるよ、ほら、こうして紅く染めてしまえば、もう見えないよ。もう、誰からも触られないよ。

お前は綺麗だから心配なんだ、だから俺がこうして守ってあげるよ。

ねえ、倫。

好きだよ、倫。

倫、倫、倫、、、倫、、、、倫、、、倫、倫、、、、、倫!!



至福のような表情の遼二が瞳に飛び込んできて。

ベッドが真っ赤に染まる。倫周の血で。

髪が

又、切り取られて。

床に落ちてゆく・・・・



「いやあああぁぁっっ、、、!!」



聞いた者を驚愕に陥れる程の叫び声が聴こえて!

帝斗らは慌ててその声のする部屋へ駆けつけた。すさまじい悲鳴に皆、何事が起こったかと血相を

変えて走って来たその部屋で一同が見たものは、、、

あまりの光景に皆が一瞬凍りついた。



体中を切り裂かれて真っ赤に染まる倫周と、まるで至福の表情で果物ナイフを振り回す遼二とが。



飛び散った鮮血が壁やベッドの至る所に生々しい跡を残して。

床にばら撒かれた茶色の髪の束。

倫周は駆けつけた帝斗らと目が合うと同時に意識を失った。すぐさまビルが遼二の後ろに回り込み、

その背中に一撃を加えて眠らせた。





「ほどんどの傷が背中に集中しています、恐らく後ろから切りつけたのでしょう。

傷自体はどれも皆浅いです。ただその数が尋常じゃない、一体これは、、、」

倫周の手当てを終えた潤が帝斗らに経過を報告した。

皆、どう考えてもこの異常な事態を理解できなかった。何がどうしたらこんなことが起きるのか、と

困惑していた。



ひとまず倫周と遼二を帝斗の部屋のベッドへ移して一同は帝斗のリビングに集まった。

こんなことが起きた原因に何か心当たりのある者はいないかと帝斗は尋ねた。

「一体どうしたというんだ、2人の間で言い争ったような痕跡は見られない。遼二が一方的に

切り付けたというのか?大体、倫周はあんなになるまでどうして黙っていたんだ、、、

抵抗した後も見られないようだし。誰か、何か知らないか、、、?」

そう言われても皆、お互いの顔を見合わせて困ったような顔をしていたが、、、



ふと、それが直接の原因かどうかわからないが、と言いながら潤が話し出した。

「数日前のことです、遼二さんが僕にこんなことを言ってきたんです。倫周さんの体質について

なんですが、つまり、性的な部分でのね。彼は倫周さんの欲求が普通の人と比べて一種違った

ものであることの原因は何だろうと言ってました。倫周さんについては皆さんもご存知のように

セックスに関する欲望が少々特殊ですよね。まあ、だからどうだというわけではないんですが。

遼二さんが気にかけていたのは倫周さんがそういうふうになった原因ですね、

何故あれ程までに倫周さんの身体がセックスを求めるのかということです。

不特定多数の相手と、恐らくはそれ程の罪悪感もないままに、自然の行為のように

倫周さんはそれを求める。悪く言えば普通じゃない、ということです。

それが産まれ持った体質のせいなのか、そうでなければ何か原因があるのか、

遼二さんはそれを疑問に思っていたようです。ですが、あの時の遼二さんは極めて冷静でしたし、

何で突然あんな、倫周さんを切り付けるようなまねをしたのか、そこに至る経緯は解りかねますが。」

淡々とそう言うと潤はため息をついた。

その話を聞いていた紫月が少し辛そうな表情で口を開くと

「もしかしたら原因は俺、なのかな、、、?俺が以前に倫に酷いことをしたから、、、だが、、、」

帝斗も辛そうに紫月を見上げた。

重たい空気が一同を包み込む。



とにかくこんな状態では次の仕事に差し支えるのでとりあえず高宮に連絡を取ってくる、と

帝斗が立ち上がった時であった。