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「一緒にって・・・だってそれじゃ紫月や帝斗に何て言えば・・・・
それに・・・・仕事とか住むトコとかどうすんだよ?こんな夜中に出てきちゃってもさあ・・・・
なあ、もう一回戻らねえ?そんで又どうするか考え直してさ・・・・」
ぶつぶつと俯いてそんなことを言っている倫周に、遼二はくすりと微笑むと再び手を引いて大通りへと
向かった。そこでタクシーを拾うと急いでそれに乗り込んで・・・
倫周は車が走り出すと共に慌てたように遼二の耳元に顔を近付けるとコソコソと小声で囁いた。
「おい遼二っ・・・お前こんな車なんか乗っちゃって金どうすんだよっ!?
俺持ってねえからなっ!」
半ば怒り気味にそう囁いた様子にも遼二はふふん、と鼻で笑っただけで格別に慌てる様子は無い。
先程からの遼二の少々強引で身勝手ともいえる行動により一層腹が立ったのか、
倫周はぷいと横を向いてしまった。
「ふん、、だっ、、、、どうなったって俺は知らないからなっ!」
そんな捨て台詞を残して拗ねた倫周だったが、いつの間にか眠ってしまったのか
気が付いたのは遼二の腕の中だった。
ゆらり、ゆらり、と灯りが漏れ出す不思議な空間。
深い闇に浮かび上がったその光景に倫周は思わず言葉を失った。
肌を掠める気持ちのよいシーツ、ふわふわの掛け布団、大きな羽枕にふと瞳をやれば広い部屋の豪華な卓に
真っ赤な薔薇の花がどっさりと生けられていて・・・・
ふいと隣りを振り返るとそこには裸の胸元をさらけ出して遼二が静かに寝息を立てていた。
なっ・・・・何なんだよ、いったい・・・・・・・
訳が解らずに頭の中は混乱して。
きょろきょろと辺りを見回しながら半ば錯乱しそうになったとき、隣りで眠っていた遼二の瞳が
うっすらと開けられた。
「ん〜、、倫周、、、、、?」
とろけた瞳に何の悪気の無さそうな落ち着き払った態度に倫周は益々訳がわからなくなり、
とっさに遼二を問いただした。
「何だよここ!?おい遼二っ!
ここ、どこだよーっ・・・・・・????
「あー?ここぉー?どこって、、、、?決まってんじゃん、俺のウチだよ。」
「はあーっ!???」
「ああ〜、久し振りによっく寝たあ〜、、、ふあぁぁ、、、、
あそこのベッド狭かったからなあー、、、ちょっと睡眠不足ってーの?やっぱ自分のベッドは最高だぜ!」
「じ・・自分のベッドって・・・・そ、それにっ・・・・何だよっ・・お前その格好っ・・・」
「へ?格好って?」
「だからーっ・・・何でお前裸なのかって訊いてんだよっ!?それに・・・俺まで・・・はだか・・」
「ああ?お前覚えてねえの?さっきココ帰って来てから愛し合ったんじゃん、、、、
お前すっげぇ悶えちゃってさあ〜、こんなイイの初めてとか何とか、とにかくすげぇ燃えてたんだぜ?
マジ覚えてねえわけ?」
「へ・・・?燃えた・・・・・って・・・お、俺・・・・が?
もしかお前とxxxxちゃったとか・・・!?」
「そうだよ〜ん、何?まじ記憶飛んでんの?ああ、、、まあ、お前ちょっと寝ぼけてっぽかったのは
確かだけどよ?あんなに反応じててまさかわかってねえなんて思わないぜ、普通、、、?」
げっ・・・・まじかよ・・・・・俺、こいつと寝ちゃったわけ・・・・・・?
倫周は少々蒼くなったが、と同時に遼二がこんないい家に住んでいるという話を思い出して
慌てて問いただし始めた。
「それにっ・・ココ、お前のウチってほんとかよ!?こんな金持ちなのに何で俺たちのとこにバイトなんか
来たわけ?それも住み込みでなんて・・・・
こんな金あるんだったら何もバイトなんかしなくたっていいじゃん・・・・」
「ああ、そのことね。ちょっと社会勉強して来いって親父がうっせーからよ?
俺の親父貿易会社やってんだ。そんでよ、俺に跡継ぎさせる日の為にー、とか何とか言って
社会を見て来いだとかさ?おっぽり出されてたわけ。で、家帰れねえから住み込みで雇ってくれるとこ
探してたらあそこ見つけたってわけ。」
「貿易会社ーっ・・・・ってことはお前って社長の息子なわけ!??」
「ああ?ああ、、、まあそんなモンだけど、、、、
けどあそこのバイト行ったお陰でお前に巡り会えたんだから結局はよかったってことだよなあ、
へへ、、、そういうわけだからこれからはココで幸せにしてやるよ!
ま、ちっとは仕事も手伝ってもらうかも知れねえけどよ、その分きっちり大切にするからさ?
夜の方のお供も、、、お前って最高だしな!やっぱバイトってーか、社会勉強行ってよかったよなぁー。
らっき〜、てか?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「ん〜、しかし腹減ったなあ、、、メイドに言って何か食うモン持って来てもらおうーっと!」
気持ち良さそうに伸びをしながらそんなことを言って電話口までスッポンポンで歩いて行った遼二の
後ろ姿を見詰めながら倫周は信じがたいこの現実にあっけにとられてしまった。
ああ・・・・これから俺はどうなっちゃうんだろうか・・・・・
とりあえず生活の心配は微塵も無さそうであったが、今後のことを考えると急に不安に陥ったりしている
倫周であった。
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