耳元で小声でそう囁いた紫月に、きっと睨みを据えるように倫周はぷいと横を向いてしまった。

「やだっ!紫月の部屋へなんて行かないっ・・・!ここでなきゃ・・・今すぐでなきゃ嫌だっ!」

「何言ってんだ、、、訳わかんねえこと言ってねえで、、、ほら、早く行くぜ?」

「やだって言ってんだっ!」

「倫、、、」

「なあ・・・ここで・・してくれよ。ここで・・・・いつもそうしてくれるじゃん?なあ紫月ぃ・・・・

抱いてよ・・・早く・・抱いて・・・何してもいいよ・・・なあ紫月・・・・」

倫周はそう言うと紫月のズボンに手を掛けて乱雑に逸るような手つきでジッパーを引き下ろして

現われた男根をぱっくりと銜え込んだ。

「倫っ、、、、!」

「どう?紫月ぃ・・・気持ちいいだろ?なあ紫月ぃ・・・大きい・・・紫月のペニス・・・好き・・・大好き・・・」

「ばっか、、、っやろっ、、何っ、、、おい倫っ、、、」





やめないかっ、、、!





がっと肩を掴まれて舐め上げていたモノから引き離されると見上げた紫月の表情は苦く歪んでいた。

「どうしたんだよ倫?何ムキになってる?何かあったのか?だったら言えよっ、こんなことしねえで

ちゃんと訳を話せよっ」

真剣な目つきで叱咤された瞬間に倫周の大きな瞳はみるみると潤んで細い身体は小刻みに

震えているかのようだった。





「行けよ・・・・」

「え?」

「行けって言ったんだよっ・・・側にいてっ、何も出来ないならっ・・・・紫月なんかいらないっ・・・

出てけよ・・・早くっ・・・行っちまえよっ・・・・」

掠れた声でそう叫びながら倫周は勢いよく布団に包まってしまった。

「倫っ、、、おいっ、、、、」

「うるせえっ・・・俺に触るなっ・・・・本当はっ・・・・お前になんか触れられたくねえよっ・・・

いつもいつも好き勝手なことしやがってっ・・・あっち行けよっ・・・大っ嫌いだよっ、紫月なんかっ・・・

いつも我が物顔で俺を好きにしてるくせにっ・・・ちょっとその気になって付き合ってやろうって

言ったらマジんなっちゃってさ?ばっかじゃねえのかっ!?俺がホンキでお前なんかに抱かれたいー、

なんて思ってたわけ?思い上がるのもいい加減にしろよっ・・・!

お前らなんか皆嫌いだっ・・・剛もっ京もっ・・・帝斗だってっ・・・皆嫌いだっ!」

「倫、、、どうしたんだっ、、、?なあ倫、、、何をそんなに荒れてるっ!?おいっこっち向けよっ!」

「うるせえっ!早く出てけよっ・・・二度と俺に触るなよっ!」

バシバシと胸元を叩き付けながら紫月をカーテンの外に押し出すと枕までをも投げつけて倫周は

再び布団に包まってしまった。





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「大丈夫ですか?」

突き飛ばされてよろけた紫月の肩を支えながら遼二は静かに気使った。

「ああ、、、俺は平気、、、だけど、、、」

紫月はそう言い掛けてふと言葉を止めると真剣な目つきで遼二を見つめながら言った。

「悪いな遼二、、、あいつあんな奴じゃないんだけど、、、初めてだよこんなに荒れてるの、、、

俺は、、今夜は帰った方がいいみたいだ、、あいつのことお願いできるかな?

何かあったらすぐ飛んでくるから、、、俺の部屋すぐ上だからさ呼んでくれれば、、、」

「いいですよ。俺はまだ来たばっかりだから、、、案外俺がいることが気にいらないのかも、、、」

「え?」

「だから、、俺が来たことであなたとも、、、その、自由にならないから、、、それで荒れてるのかなって?

まあとにかくちょっと様子を見ましょうよ。俺なら平気ですから。」

「ああ、、、悪いな遼二。じゃ、、頼んだよ。」

紫月は切なそうな瞳で遼二にそう頼むと静かに部屋を後にした。



ひそひそと自分に気を遣いながらそんなやり取りをしている2人の様子に倫周は更にそれらの音を

遮断するかのように深く布団に潜り込んでしまった。





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嫌だ・・・・

こんなこと言いたいんじゃない・・・こんなことしたいんじゃないのに・・・・

紫月・・・

行かないで、側にいてっ・・・俺をっ・・・見捨てないでよっ・・・・・

寂しいんだ、誰も俺のことなんかわかってくれない・・・

誰も愛してなんてくれない・・・こんな汚い俺のこと・・なん・・て・・・

愛してなんかくれない・・・

今日、遼二に会ってわかったんだ。俺は穢れて、汚くて・・・・

誰からも愛される資格なんて無いってことが、はっきりと突付けられたみたいで怖かった。

紫月だって剛だって京だって・・・それに・・・

帝斗だって・・・

皆俺のことなんか愛していない・・・

只の仲間、そう思ってるだけだ。

遼二のようにきれいだったら何でも出来るのに。

きっと、誰かに愛されることだって、愛することだって出来るだろうにっ!

俺にはもうそんな資格はないもの・・・・

わかってる、紫月が俺にすごく気を使ってこれ以上ないってくらいやさしく接してくれてること。

帝斗も、剛も、京だって。

だけど・・・

怖いんだ。皆が俺にやさしくしてくれるのは只俺がショーに必要だから、ってだけじゃないかとか

たまにそんなことを思うときがある。そんなことはないって言い聞かせてもだめなんだ。

怖くて、いつか皆からもショーからも必要とされなくなるときが来たらどうしようって考えるだけで

気が狂いそうだよ・・・・っ

愛されたい・・・

誰かにしっかり受け止められて安心したいんだっ・・・

只それだけなんだ・・・・

紫月、、、ごめんね・・・

ごめん、、、解ってよ、、、、

おね・・・が・・い・・・・っ・・・・・・・・

倫周は布団にしがみ付きながら寂しさを抱き締めるように嗚咽した。