そう言って紫月はちらりと倫周を振り返ると少々切なそうに瞳を伏せながら側へ寄り、そっと髪を

撫でながら呟いた。



「うそだよ、冗談。お前はよくがんばってるよ。まだこんな若いのに、、、

よくやってくれてる、、、お前にまでこんな苦労させてすまないって思ってんだぜ?

帝斗も俺も、皆んなもマジでお前には感謝してる、、、

ホントは、、、こんなことさせたくねえよ。あんな危ない環境でさ、不埒なことさせて穢してさ、、、、

ごめんな倫、、、けどどうしようもねんだよ、今の状態じゃ食っていくだけで精一杯でさ、お前の

幸せまで考えてやれねえんだ。だけど、、、、

いつかきっと、こんなことしなくてもいいように、、、、お前をこんな生活から自由にしてやりたい、、、

それまで、、、辛抱してくれな?ごめんな倫、、、」





きゅっとやわらかく抱き締めながら紫月は倫周の髪の毛に軽くくちつ゛けをした。

温かく大きな掌で頬を包み込み切なげに見つめられた瞳が少し潤んで見えたのは幻・・・?

紫月はCHU、と軽く倫周の唇にキスをするとふっと微笑んでから軽く頭にポンと手をやった。



「じゃ、な倫!又明日っ、ゆっくり休めよ!」

くるりと後ろを向いた背中が大きくて、切なくて、一瞬にしてぎゅっと心臓を締め付けるように湧き上がった

想いに、、、、

気が付くと倫周は紫月の着物の袖を掴んでいた。






「どした?倫、、、」

少々不思議そうに振り返る紫月の瞳に下弦の月が映り込む。

ゆらゆらと揺れて、褐色の大きな瞳は未だほんの少しだけ潤んでいるようで・・・・






「帰らないで・・・今夜は・・ここ泊まって・・・・・

レッスン、してくれんだろ・・・?だか・・ら・・・・・」

そう言った倫周の瞳にも潤んだ月がゆらゆらと揺らめきそれらが形を失くした瞬間に大粒の涙が

ぽろりと頬を伝わった。



「倫っ、、、!?」



袖の端っこを掴んだ指先もそのままに俯いた倫周の足元にはぽたぽたと温かい滴が零れて落ちた。



「どうした倫?辛いのか、、、、?やっぱりこんなこと嫌だよな、、、」

そう言ってぎゅっと抱き寄せられた胸が大きくて温かくて。

倫周は力一杯その胸元に抱き付くと肌蹴た襟元から覗いたまるで青い真珠のような紫月の肌に

頬を摺り寄せながら思いの丈を搾り出した。





「違うのっ、、、辛いとかじゃない、、、っ、、、

けど、、、だけど、、、、今夜は一緒にいたいんだ、紫月と、、一緒に、、眠りたい、、、、

ひとりに、、なりたくない、、、、

だから、、レッスンして、、っ、、、

レッスンして、、客の前なんかじゃなくて、、、本当に自由に、、感じたいんだ、、、

好きなだけ気持ちよくなりたい、、安心して、、、イってみたいんだ、、、

舞台の上じゃいつも怖くて。いつ客が襲い掛かってくるんじゃねえかって思ったら怖くてホンキでなんて

イけない、、、っ、、、

だから、、抱いて、、、安心して、、、気持ちよくなりたい、、、」

襟元は倫周の流した涙でぐっしょりと濡れていた。

紫月は突然にそんなことを言った倫周が哀れでそっと肩を包み込むと一杯の気持ちを込めて

ぎゅうっと抱き締めた。





辛いんだよな、本当は。

こんなことしたくねえんだよな、、、こんなに泣いて、安心してイってみたいなんてウソついて。

ごめんな倫。俺たちに力がないばっかりにお前にこんな辛い思いさせて、、、、

いつか、、こんな生活から抜け出せたらきっとお前を自由にしてやるよ。俺と帝斗でお前に好きなこと

させてやる。だから、、許してくれよ、、、今は、、、





「わかった、じっくりレッスンしてやるから思う存分イけよ、安心して、何回でもイッていいぜ。」

「紫月・・・っ・・」





そうして2人は蒼い闇の中で熱い肌を寄せ合いながら欲望を重ね合わせていった。





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この触れ合いが少しでもお前の辛い思いを軽減できるのならば・・・

こうして触れ合うことで少しでもお前が嫌なこと、忘れられるのであれば・・・・

いくらでも与えてやりたい、俺にできることはそれくらいしかないのだから。





熱く濃厚に交わり合った後で自分の傍らで静かな寝息をたてている細い身体を包み込むように

紫月はもう一度倫周の額にくちづけた。