Happy Swing Afternoon◇◇◇RYOUJI |
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薄手の綿のシャツだけを無造作に羽織って、憂い顔の倫周の両手首には黒い手錠がはめられている。
既に全開しているシャツの中からチラリチラリと時折色白の肌が覗いていた。
淫らな格好でソファーに寄り掛かり、先程から低い嬌声と共に身体中が上下に揺れている。
一定の同じリズムで揺れていたそれが若干の激しさを増し、長い栗色の髪が大きくうねると、
高く潰れたような声と低く地を這うような声が重なった。
「あー、また記録更新出来なかったー!ダメだ、やっぱお前よすぎるからー、俺持たねえよなあ」
「・・・・んー・・・・・もう遼ってばそんなことばっかり言ってるー・・・・」
「だってよー、えっちの時間の長さってオトコにとっては結構重大なのよ。
お前わかんねーかも知んねえけどさ?」
「ばかっ・・・・俺だってオトコだもん・・・・・・そのくらい分かるよっ・・・ちぇーっ、バカにしてー・・・・」
「あ、悪ィ悪ィ。それよか倫さあー、ちょっとそのままのカッコで待ってて!」
そう言うと遼二はすっぽんぽんのままで隣りの部屋へと消えて行った。
この遼二はウェイターの中では最年少で、倫周とは年頃も近いことから他のウェイター連中と
デートするときとは少々勝手が違っていて、若さゆえか会えばこうして必ずえっち三昧で終るわけだった。
今日もその典型パターンで、近頃ではノーマルに抱き合うだけでは物足りないらしく、
手錠やら拘束具やらと色々な小道具を使って試したがるのもお約束の出来事だった。
まあそれも若さゆえといったところか・・・・・
だがもともと欲求の淡白な方ではない倫周にとってもこの遼二の若さ溢れるエネルギーは
嫌なものではなかったのか、2人揃えば最近はこんなふうにしてちょっとイケナイ遊びに没頭していると
いったわけだった。
腹の上でとろりとしている自身の開放した欲望の痕を拭き取ろうと手錠に繋がれた不自由なままの両手で
ティッシュの箱を探す。今まさに拭こうとしたそのときに、丁度部屋に戻って来た遼二に大声を出されて
倫周は驚きティッシュを持った手も宙に浮いたまま固まってしまった。
「おわーっ!バカバカッ倫っ、拭くな拭くなっ!そのままの格好で待ってろって言ったろーがっ!」
「へ・・・・・・?なんで・・・・・・・?
だってコレ方付けないと動けないし、放っとくと流れてきちゃうもん・・・・・きちゃないよー・・・・」
「いいーんだってバカッ!ソレを撮りたかったんだからー」
「へ・・・・・?撮るって・・・・・・まさ・・か・・・・・・」
「そっ!コレよコレ!」
にんまりと含み笑いをしながら手に持っていたデジカメをうれしそうに差し出した遼二に
倫周は呆れ顔でもともと大きな瞳を更に大きく見開くと、口元はぽか〜んと開いたまま
しばらくは呆気にとられたようにその場に硬直してしまった。
そんな様子にも当の遼二はお構いなしと言った感じで、うれしそうにワクワクとしながら
デジカメを構えたりしている。
「なっ、倫さあ〜、ちょっとそのままでこっち向いて。出来ればちょこっとやらしい〜顔とか
してくれっとうれしいんだけどなー、、、、」
「はあっ!?遼二お前何考えてんだよっ・・・・・
やだよ俺っ・・・・こんなカッコで写真撮られるなんてさっ・・・・ふざけるのにも程があるって・・・・」
「まあまあ、、、そう固いコト言わねーでさ?ちっとは協力してくれよ!
あ、大丈夫よ。ブツは撮んねーから!手錠と顔とー、あとお前の出した汁!
いや俺のでもい〜んだけどよ?○液まみれとか?へっへへへ〜!」
「気持ち悪いこと言うなよっ!絶〜対イヤだぜ!何が何でも嫌だっ!」
「ンだよー、ケチ言うなって!
俺だってイロイロと苦労はあんだよ、なあー?ちっとは協力してよー」
「イロイロって何だよっ・・・・だいたいっ!こんなの撮って何に使うってんだよっ!?
ヘンなトコに売り飛ばしたりしてんじゃねーだろーなー・・・・・・」
「違うってバカッ、そんな勿体ねーことしねーよー。オレが使うんだから安心してよー?」
「お前が使うって?何に使うんだよー・・・・どっちにしたってやだよ俺!
ほらあー、もう諦めてあっち行ってくれよー・・・・・コレが流れちまう、ああ〜汚ねーっ」
そう言ってくるりと顔を背けながら流れる液を拭いてしまった倫周に、遼二は深く溜息をつきながら
がっくりと床に腰を下ろすと、仕方なしといった感じでテーブルに置いてあった煙草に火を点けた。
「あ〜あ、倫のケチ、、、ちょこっと写真撮らしてくれるくらいいいじゃんかよー。
その一枚で俺の幸せな一週間が訪れるってーのによ?」
「一週間だー?何だよソレ・・・・・・?」
「あー、だってお前喫茶室の他の連中(白夜・紫月ら)ともデートしてんだろ?
だからさ、、、お前が他の奴らと会ってるときは俺ひとりじゃんー?
これでも寂しい思いしてんだぜ?」
「へ・・・・?寂しい・・・・・・?遼が?」
「そう、お前は俺ひとりのモンじゃねーしさ、、、ホントは毎日でもお前と一緒にいたいけどー?」
「一緒にいたいって・・・・ただエッチしたいだけだろ?」
「へへ、バレちった?けどよ、だからお前も毎回じゃ大変だしさ?会うたびにえっちじゃ
そればっか目当てみてえでヤダろ?」
(・・・・ってしっかり会うたびにえっちじゃねーか・・・・)
「けどよー、だからって俺もこの若さじゃん?ま、本能には逆らえないってーの?ムラムラきちゃうとさあー、
自分で抜くしかねーじゃん?だからさ、お前の写真撮らしてもらってソレをオカズに抜こうかなあ、、、
とか思ったわけ。
ま、やっぱ嫌だよなー?
仕方ねえ、これからも想像だけで我慢すっか、、、」
しょんぼりとそんなことを言った遼二に倫周はとても驚いた。
そして遼二がひとりでそんなことをしている姿を想像したとき、瞬時に湧き上がってきた
言いようもない気持ちに何だか胸が締め付けられるような感覚に駆られてしまった。
遼二が・・・・・・?
俺のことを想像しながらひとりでそんな行為をしてるって・・・・・・・・?
頭の中にはっきりとしたビジュアルが描き上げられた瞬間に、まるで火が点いたかのように
色白の頬が真っ赤に染まった。どきどきと心臓までもが高鳴り、脈拍数も増加して・・・・
やだな・・・・・遼二ったら・・・・・そんなこと、ひとりでしてるなんて・・・・・
どんなふうにやってるんだろう?ひとりで・・・・・この部屋で・・・・・?
ベッドでしてるのかな?それとも此処(ソファー)?それとも・・・・・・おトイレだったりして・・・・?
俺のことを考えながら・・・・自分でこすってたりするんだよね・・・・・・・?
どんな顔してるんだろ?イクときとかってどうするんだろ・・・・・・?
想像は現実を遥かに上回るが如くに溢れ出し、と同時に何だか遼二の知らない一面を
垣間見たような気がして倫周はもじもじと頬を染めた。
男っていつもひとりでそんなことしてるわけ?
そんな思いが脳裏を掠めて・・・・
まあ一応自分だって男なわけで、だからそういった行為も理解出来ないわけではなかったが、
どちらかというといつも女の代わりのような役割で攻められては欲望を解放している倫周にとっては、
そんなごく普通の行為がひどく新鮮に感じられたりするわけだった。
「ね、ねえ・・・・遼さ・・・・・・」
「あー?なにー?」
「ひ、ひとりでって・・・・・俺のこと考えながら・・・ってさ・・・・・
その・・・・どんなふうに・・・・・する・・・・・」
もじもじと言いずらそうに俯いては頬を染めている倫周に、遼二は怪訝そうに繭を顰めると
「はあ!?お前、自分で抜くとかしねえの?」
「えっ!?し、しない・・・・・よ・・・・・そーゆーの・・・・あんまり・・・・・・」
「あー、まあお前は毎日他の奴らともよろしく遊んでっからなー。必要ねえってか?」
ぐいと煙草を捻り消し、少々不機嫌そうにしながら遼二はふいと倫周ににじり寄った。
「お前さ、あいつら(喫茶室の他のウェイター)ともえっちとかすんだろ?
なあ、どんなふうにするわけ?」
「ど・・・・どんなって・・・何急にっ・・・・」
大真面目にちょっと怖い面持ちをして食い入るように見詰められながら倫周は少々焦った声をあげた。
「なあ言ってみろよ倫、他の奴ら、、、例えば白夜とかとはどんなふうにすんだよ?
あいつテクとかすげえだろ?もろ場数こなしてるって感じだしよー?
なんかヘンなこととか、やらしーこととかされてんじゃねえの?」
「さっ・・・・されてないよっ・・・・・なんもっ・・・・そんなっ・・・・・・」
まさか白夜とは縄で縛られて少々変態まがいの遊びをしているなどとは口が裂けても言えずに
倫周はきょろきょろと視線を泳がせ焦ってしまった。
そんな様子に冷たく意味ありげな遼二の言葉が続いて出る。
「ふ〜ん、そう?じゃ帝斗のヤツは?あいつも歳くってる分だけなんか癪に障る感じ。
あと紅月、紫月のバカ双子とかさー、もしか新入りの剛ともヤッちまったってか?」
「ななな、なんだよっ・・・・それって全部じゃん・・・・・何いきなり他の連中の話なんかっ」
「だって気になるんだって!それよかお前さー、、、」
「なっ、何っ・・・・」
「お前オンナじゃなくてよかったよな?」
「は?」
「だってオンナだったらすげぇ浮気モンってことになるぜ?毎日毎日取っ替え引っ替え誰かと遊んでよ?
俺がお前のオトコだったらぜってー許さねえ、、、」
そこまで言い掛けた遼二の視線は不機嫌に明るさを失くして、じっと見詰めてくる瞳は冷たく抗議の色で
溢れ返っているのが一目瞭然であった。
「な・・・・ん・・・遼二・・・・・・」
じっと冷たく見詰められるその視線に耐え切れず、倫周は困ったように瞳を歪めた。
楽しくふざけ合っていた先程までの雰囲気が一気に暗転してしまったようで、言葉を交わすのさえ辛くなる。
が、遼二は今にも泣き出しそうな倫周の頬にすっと掌を這わせると額と額を擦り合わせながら
低い声で囁いた。
「この、淫乱っ、、、お前みてえのは一度しっかりお仕置きしてやんねえといけねーかなあ?
しっかり、、、この身体に刻み込んでやらねえってーとさ?」
低い声が耳元で地を這うようだった。
倫周は突然の遼二の豹変にビクリと細めの肩を震わせると、大きな瞳からは潤みだした雫が今にも
こぼれて落ちそうになっていた。
「や・・・・・遼っ・・・・・・・・やめ・・・・て・・・・・・願い・・・・・」
「どーした?怖いか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・っ」
「俺が、、、怖いのか倫?」
「やっ・・・・・・・・」
ビクビクと縮こまっていた身体をソファーに押し付けられて仰向けにされると、未だ繋がれたままの手錠ごと
乱暴に掴み上げられて倫周は思わず叫び声をあげた。
「嫌っ・・・・・嫌ぁぁーっ・・・・やめてっ・・・・・許して遼っ・・・・・・・・」
身を捩り瞳を歪め、ついには涙までが溢れ出して・・・・・・
ミィユォ〜ン------ ------
だがそのとき頭上に変な機械音を何度か聞いたような気がして、倫周は恐る恐る顔をそちらへと向けると
そこに映し出された光景に、思わず溢れた涙も一瞬のうちに引っ込むくらいにショックを受けた。
にやりとうれしそうに微笑みながらデジカメを構えて、しかも未だすっぽんぽんの裸のままで
立っている遼二の姿に呆れて咄嗟には言葉も出なかった程だ。
「えへへへ〜、大成功ってか?
見ろ見ろ倫っ、、、うはぁ〜嫌がっちゃってる〜!なんか強姦されてるみてえー!
この表情すげえソソル〜っ!
うげえ〜、こんなん見てたら何回でもイケちまいそう〜?ひゃっほー!倫ブラボ〜ってか?」
照れ笑いをしながらも逸るように撮ったばかりの写真を覗き込んでは子供のようにはしゃいでみたり。
そんな姿に浅はかなオトコの本能を生々しく感じて、少々侮蔑するかのように呆れ眼で倫周は溜息をついた。
あ〜あ・・・・焦って損しちまった・・・・・・ったくもうー・・・・バカ遼二・・・・・
それでも倫周はふっと微笑むと、テーブルの上にあった遼二の煙草を手に取って
側ではしゃいでいる遼二を横目に火を点ける。
深く煙を吸い込む彼の表情には、子供のようにはしゃぐ遼二をやさしげに見守る少し大人びた男の色香が
醸し出されていた。
「なあ倫?これすっげえ色っぽい」
「んー・・・・・・?」
ゆるりと煙草を銜えながら呆れたように微笑んでいる倫周の姿に、一瞬どきりとしたように遼二の声が止まる。
「何だよ?ソレ(写真)見ろってか?」
軽く瞳を閉じながらやさしげに微笑って見せたそんな姿に新たな魅力を突き付けられたようで
遼二は少々戸惑った声をあげた。
「倫、やっぱお前を他の奴らに渡したくねえよ」
「はあ?何ワケわかんないこと言って・・・・・」
「なんかダメ俺、、、お前に惚れちまったみてえ」
「わわっ・・・・バカッ何すんだ遼二っ・・・・煙草っ・・・・煙草落ちるっ・・・・・」
「だからさ倫、もっかいしねえ? で、俺だけのモンにしちまいてえー」
「はあっ!?」
「なあ倫ー、いいだろもっかい、もう1回だけでいいからー!どーせ又一週間出来ねえんだしー!」
甘い声を出しながらスリスリと脇腹の辺りに何やら固く温かいものの存在を感じてふと瞳をやれば、
既にソソリ勃った遼二の若い象徴がどうだとばかりにそびえ立っているのを確認して、倫周は瞬時に
頬を染めた。そして未だ繋がれたままの手錠の両手で煙草を捻り消すと、ふいと遼二の肩に腕を回した。
「いいぜ・・・・遼・・・じゃあもう1回・・・・・・・・」
「マジ?」
「んー・・・・・・・」
「畜生っ、いつかぜってーお前を俺ひとりのモンにしてみせるぜ!」
逸る吐息を交わしながらじゃれ合う若き2人を、もう暮れかかった春の夕景が穏やかに包み込んでいた。
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