双子ちゃんの災難な午後◇◇◇KOUGETSU
今日は自分の隣りに愛しい紫月とそっくりの顔をした男がいる。

ソファーに持たれ掛け、ぼうっとTVを見ながら倫周は深く溜息をついて見せた。

「なあに?倫ちゃん、元気ないじゃん?」

「うん・・・別に・・・・・・」

「好物のケーキも食べられないなんてさ?何か悩みでもあるわけ?」

「え・・・・・何で・・・・・?」

「だって具合悪そうには見えないしさ?悩み事でもあんのかなあって?」

「うん・・・・・・そんな・・・・悩みってわけでもないんだけど・・・・・・・」

「何だよ?言ってみ?ひょっとして紫月と喧嘩でもしたとかー?」

そう言われて倫周は はっと瞳を見開いた。



紫月−−−−−



ずっと以前から憧れ、追い求める大好きな人の名。

そんな紫月と最近はデートに行ったり、遊んだり、キスだってえっちだってするような仲になったというのに。

何かしっくりと満足出来得ないようで、倫周はこのところ少々沈んだ面持ちでいたのだった。

「うん・・・・あのね・・・・紫月はさ・・・・・俺のことなんてきっとそんなに好きじゃないのかもって思って・・・」

「へ?何で?そんなことないだろ?どしてそう思うわけ?」

「だって・・・・何となく・・・・・デートとかはしてくれるけど・・・・」

「けど?」

「え・・・・っちとかはあんまりしないし・・・・・・」



「-------は?」



「してもちょっとだけだし・・・・・・きっと俺のことそんなに好きじゃないんだ・・・・・・

だってすごい好きならもっとさ・・・・・」

「もっと、何だよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」





「もっと、激しく求めて欲しいとか?」





今まで会話していたよりも僅かに低い声に耳元でそう囁かれて、倫周はどきりと肩を竦めた。

そこには大好きな紫月と瓜二つの顔が自分を見詰めていて・・・・・

「やだ・・・・紅・・・・・そんな瞳で見ないでよ・・・・・

そんなふうにされたら・・・・・まるで紫月といるみたい・・・・・・に・・・」

きゅんと締め付けられた胸に手をやって、頬を染めて瞼を閉じる、

そんな倫周が可愛く思えて紅月はぐいとその細い肩を抱き寄せた。



「そりゃそうだろ?だって俺と紫月は一卵性の双子だもん、そっくりで当たり前」

「わかってるよ・・・・そんなこと・・・・・・」

まだ繭を顰めながら、どきどきと頬を紅潮させている様子に紅月はくすりと微笑むと、

「じゃあさ?今日だけ俺が紫月になってやろっか?」

「えっ・・・・・・?」

「だから今日だけ紫月になってお前を求めてやるよ」

「え・・・・だって・・・・・・そんなの・・・・・」

「大丈夫だって。俺と紫月はそっくりなんだし、まあ、、、髪の色だけ違うけど?

他は声も顔も同じなんだからさ?お前がして欲しいように愛してやるぜ?」

そう言った言葉まわしも紫月の言い方そっくりに真似た紅月に、倫周はほんの一瞬で本当に紫月と

一緒にいるような感覚に陥ってしまった。

頬を撫でる熱い吐息が、

髪をくすぐる指先が、

寄り掛かった胸元の香りでさえ本物の紫月そのもので・・・・・・





ごめ・・・ん・・・・・紫月・・・・・・・

今日だけ・・・・ね?

今日だけ紅に紫月の代わり、してもらっちゃうの許してね・・・・・・・?

だって・・・・

たまには本当に辛くなる位愛されてみたいんだ・・・・・・

激しくて・・・・・・逃げたくなるくらいに・・・・っ・・・・・






「で、どうされたいわけ?」

髪を撫でる指先が、

頬を掠める唇が、

軽く、軽く触れていく・・・・・・

ただそれだけでもう心臓が飛び出そうな程、熱く脈打って・・・・・・・



「激しく・・・・・されたい・・・・・・・」

「激しく?」

「ん・・・・・・すごく・・・・強くっていうか・・・・・・とにかく激しく愛されてみたい・・・・・」

「ふーん、強く激しく、ね?じゃあお前を犯しちゃうぜ?」

「えっ・・・・・・!?」

「だから〜、お前が嫌がってもやめてなんかやらねーぜ?って言ったの」

「こっ・・・・紅っ!?」





あっ・・・・・・・・・・!





そう言われた言葉通り、ぐいとソファーに沈められたと思ったらまるで獣のような瞳で真上から見詰められて

倫周はほんの一瞬の恐怖のような感情にびくりと身体を強張らせた。





「あ・・・・っ・・・・・・・・紅っ・・・・・・ちょっとっ・・・・・・待って・・・・・」

「紅、じゃねーだろ?紫月って呼べよ。それに待ってなんかやらねー」

「あんっ・・・・・・・だって・・・・・だっ・・て・・・・・」

「だってじゃねー、ほら、こっち向け」

「はっ・・・・・・・・」

ぐいと強い力で顎を掴まれて、奪い取るように唇を押し当てられて、熱い吐息の漏れ出した唇を割って

生温かい舌先が入り込む。

唇そのものから歯列、舌の奥まで舐められて倫周は気が遠くなりそうになっていた。

望み通り激しく求められ、極めつけは紫月とそっくりな声で囁かれる言葉の数々。

熱く、激しく、ときには気が違っているかのように耳元で自分を求める言葉を囁かれて、たまらない想いに

倫周はぎゅうっと瞳を閉じると目の前の大きな胸元にしがみ付いた。






「好きだぜ倫、お前が欲しいよ」

「あ・・・・・・んっ・・・・・・・」

「倫、愛してる、、、愛してるよ」

「んっ・・・・・・・・ふっ・・・・・・・・・・」

「なあ倫、俺のこと呼んでみ?紫月って呼んでみ?」

「紫・・・・・・・紫・・・・月・・・・・・・?」

「そう、そうだよ倫。大好きって、愛してるって言ってみ?」

「だ・・・・大好き・・・・・・紫・・・月・・・・・・・本当にっ・・・・・・」





愛してるんだっ−−−−−−





激しいキスは唇だけでは留まらず、熱を伴って首筋へ・・・・

嵐の如く強い力で身体を撫で回され、上体を引っくり返され、服を剥ぎ取られ、痕に残る程くちづけを繰り返されて。



「あっ・・・・・・嫌っ・・・・・紫月っ・・・・・そんなにしたら・・・・・

壊れちゃうよっ・・・・・・・」



もっと・・・・やさしく・・・・・・してよっ・・・・・・・・



「嫌ぁー・・・・紫月ぃ・・・・・・・痛っ・・・・・・」

「倫、お前忘れたの?嫌がったってやめてなんかやらねーって言ったろ俺?」

「だ・・って・・・・・ー・・・・そんなに揺らしたらっ・・・・あんっ・・・・・・頭がぱあーになりそ・・・・・」

「じゃ、パーになれよ!もっともっと感じて、、、余計なことしゃべれなくなるくらいまでっ溺れろっ!」

「ああーっ・・・・・・・嫌あー・・・・・・っ」

激しく熱く、辛いくらいに抱き締められたいっ・・・・・

そんな望みの通りに抱き締められて、攻められて、幾度と無く絶頂を迎えた。

何度、到達させられたのかなんて覚えていない程。

ほとばしる汗と涙と欲望と至福、

そのすべてが全身を包み込み・・・・・・

倫周は再び迫り来る絶頂の中にいた。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







「倫、倫っ!おい、倫ったらっ!」

「ん・・・・・?あー・・・・・・なあに紅・・・・・・?」

「大丈夫かお前?やっぱキツかった?」

「んー・・・・・・めちゃめちゃ・・・・・・紅ったら容赦ないんだもん・・・・・・」

「だって俺めちゃ張り切ったし。でも少しは満足出来たろ?これで紫月がえっちしてくれなくても耐えられるってか?」

「あー・・・・・・少しは・・・・・ね・・・・・・・・でも・・・・

やっぱ紫月とするのがいいなあー・・・・・・」

「ばっか、、、お前さー、性欲強過ぎんだって!人並み以上」

「えー?そおー・・・・・?そんなことないと思うけど・・・・・」

少々ぶすくれて唇を尖らせた倫周を横目に、紅月は呆れたように瞳を見開くと側にあった煙草に火を点けた。

「いや、マジ淡白な方じゃねえって!だってよ?俺ら5人でお前の相手しててやっとだぜ?」

「え・・・・・・?」

「お前さ、殆んど毎日取っ替え引っ替えで俺らと遊んでて、身体辛くねー?」

「ん・・・・・別に・・・・・・・・もうちょっとしても大丈夫かも・・・・・・」

「あ、、、っそ、、、、、、」

「でも・・・・・でもね・・・・・・ホントは紫月とだけしてられたらいいなー・・・・・とか・・・思う・・・・」

「あー、そうね、、、」



------多分紫月の方が持たねーと思うけど、、、いや俺だって持たねーかも、、、

     こいつってめちゃめちゃ綺麗な顔してるくせに何で性欲だけがこんなに強いかねー?

     フツー美人は淡白とかいわねー?------



ぷかぷかと煙草をくゆらしながらそんなことを思っていた紅月に、何やらよからぬ視線を感じたのか、

倫周は突然ぷりぷりと頬を膨らませた。

「あー・・・・今俺のことバカにしたろ?」

「へ?してないしてないっ!そ〜んなことしましぇ〜ん!」

「あーん・・・・・やっぱバカにしてるー・・・・・・・そんなこと言うともっかいえっちしちゃうからー!」

「へっ!?まだすんの!?」

「するよー・・・・・ねえねえ、今度はさ、紅が下になってさ〜・・・・・」

にこにこと楽しそうに腹の上に馬乗りになって来るその姿に紅月は慌てて煙草を落としそうになった。

「ばっかっ、冗談じゃねーよ!俺もう限界よっ、、、って!うわーっ!」





頼むから誰か別の奴ンとこ行ってくれィ〜っ!





そんなことを思いながら、これじゃ紫月(弟)もたいへんなわけだと妙に納得をさせられた紅月であった。