デリンジャー
「すいません、遅くなりました!」

T−Sプロの最上階にある大きなアールデコの扉をノックしてブレイク中のロックバンドFairyのベース担当、

鐘崎遼二は社長の粟津帝斗を訪ねた。





「すみません、遅くなっちゃって・・・お待たせしちゃいました?」

「ああ遼二、ご苦労様。疲れてるとこ悪いね?」

にっこりと微笑みながら帝斗は快くこの男らしい若者を迎え入れた。

「で、用って何ですか?何か力仕事があるとかって一之宮さん(専務)に聞きましたけど?」

「ああちょっとね、手伝って欲しいんだ。いい?こっち来て」

そう呼ばれて付いて行った先は帝斗の私室のリビングの一番奥にある重厚なカーテンの向こうだった。





「何ですかここ?」





遼二はきょろきょろとしながらその重厚なカーテンの中にある空間を見渡した。

「うん、ちょっと地下室にね、倉庫があってね。そこで荷物の整理したいんだよ。

僕と紫月さんじゃ”はか”が行かなくってね。遼二は力ありそうだから手伝ってもらおうと思ってさ?」

「へえ、ここからも地下に行けるんだ。いいですよ、俺 力仕事は自信ありますから!」

何の疑いもなく爽やかにそう言ってのけた遼二の様子に帝斗はくるりと背を向けると、

独りで含み笑いのような笑顔を浮かべた。















帝斗に案内されて連れて行かれた部屋は何とも豪華な造りのまるで高級ホテルの一室のようで、

遼二はここでもきょろきょろと室内を見渡しては不思議そうな顔をして見せた。

「すげえ、、、豪華ー、、、粟津さん、こんなとこに倉庫なんてあるんですか?」

そう言って帝斗を振り返った瞬間にぎゅっと抱き付かれて遼二は一瞬きょとんとしたような表情をした。





「なっ、、、粟津さんっ!?どうしたんですか、、具合でも悪い、、、、」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!??





自分よりも僅かに背が低く、線も細い帝斗にしっかりとしがみ付かれ胸元に顔を埋められて遼二は酷く驚いた。





「粟津さん・・・・?あの大丈夫ですか・・?マジで具合でも悪いんですか?」

少々心配そうに帝斗の顔を覗き込んだ遼二は、次の瞬間に起こった信じられないような出来事に、

美しい黒曜石のような瞳を大きく見開いたままその場に固まってしまった。






「ねえ・・遼二は僕が嫌い?」






突然に軽く唇を重ねられた後、そんなふうに囁かれた、自分を見上げてくる暗褐色の瞳はこっくりと深い憂いの色を

映し出していて・・・・

「あ、、あの、、、、」

あまりにも驚いて硬直したまま言葉さえも出てこない遼二の逞しい腰に再び腕をまわすと甘やかに帝斗は囁いた。





「ねえ、僕と寝てみない?」





「え、、、、、!?」





「お前、誰か好きな娘とか付き合ってる人とかいるの?」

「え、、?いえ、、、別に、、、、」

「だったらさ・・・いいじゃない一回くらい・・」

そう言われても何が何だかわからないといった表情のまま硬直して動けない遼二の胸元にそっと頬を摺り寄せながら

帝斗は再度誘いの言葉を口にした。





「抱いて・・・・・・・・・・・・・・・・」





品のいい細い指先が胸元の突起物に這わされて・・・・

シャツの上からくりっと乳首を弄られて、遼二はとっさに帝斗を突き飛ばした。

「やっ、、何すんだっ!?」

若さ溢れる男らしい体格の遼二に突き飛ばされて、さすがに帝斗は床に倒れ込んだ。





「あ・・・すみませ・・・ん・・・・あの、大丈夫ですか・・・粟津さ・・・」





そう言って恐る恐る手を差し伸べようとした遼二の耳に更に信じられないような言葉が飛び込んで来た。





「お前、オトコは嫌い?」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!???





先程からの どうにも現実離れした出来事にまだ充分に理解の出来ていない遼二の頭は目の前の出来事を

把握することさえも儘ならないというのに、次々と帝斗の口から飛び出す突飛極まりない言葉に

半ばぼうっとしかかっていたとき、

「お前が好きなんだ遼二・・・だからお前に抱かれてみたい、いいだろう?」

帝斗は起き上がると遼二の腰元にしがみ付いて言った。







「やっ、、やめろよっ、、、おいっ冗談はよせって、、、」

慌てて後ずさりしながらしがみ付かれた腕を振り解こうとした遼二だったが意外にも帝斗の力は強くて

どうにも動きが儘ならない、突然の信じがたい出来事に慌てていたせいもあって身動きも出来ずに遼二は戸惑った。





「ねえ・・・遼二・・・寝ようよ・・・・」





吐息混じりに逸る声がそう囁く、思わず遼二は帝斗の肩を掴むと力一杯突き飛ばすように振り解いた。





「ふざけんのもいい加減にしろよっ、、、いったい何だって、、、」





半分本気でそう怒鳴りかけた遼二の背中に一瞬鈍い衝撃が走るのを感じた。

「っ、痛っ、、、いっ、、、」

振り返る隙もないままにたて続けに衝撃が走り・・・・





「何、、、すんだ、、よ、、、、」





あまりの痛みにずるりと側にあったベッドに崩れ落ちた遼二の身体を支え、引き上げる腕が差し出されて。

「だめじゃない?お前の色仕掛け、通用しないじゃん、、、」

くすくすと可笑しそうに笑いながら崩れ落ちた遼二の身体を受け止めた、そこには片方の手に

木刀のようなものを持った一之宮紫月が立っていた。







「随分な様だな帝斗。だから言ったんだ、遼二は倫と違ってそう簡単には落ちないよって。だろ?

最初っからこうすれば手間掛からなくって済んだのに」

紫月は得意そうにそう言うとくすりと笑って瞳を閉じた。

「だからって・・・殴ることないじゃない?どうするんですか?遼二が気が付いたらたいへんですよ?

彼は力もあるし逞しくって男らしいんだからー、倫とは大分勝手が違う・・・」

「くっ、、ふふふっ、、、、」

心配そうな顔をしている帝斗の様子に紫月はくすくすと可笑しそうに笑いながら持っていた袋から

ロープのようなものを取り出した。

「それ・・・紫月さん、そんなものどうするんですか!?まさかそれで遼二を?」

「そう、縛るの」

「えっ・・・!?だってだって・・・

そんなことしたら後が怖いですよ・・・・いくら僕らだって遼二の腕力と若さには敵わない・・・」

そう言い掛けて紫月の褐色の瞳に言葉を止められた。

「ぶつぶつ文句言ってないで!お前も手伝えよ。ほんとにこいつが起き出す前にさ?

早く縛り上げちゃわないっていうと、、、それこそたいへんだろ?」

「でも・・・縛るってどうやって?まさか簀巻きにでもするつもりですか?」

「ばかっ、そんなことしたら折角のお楽しみが台無しだろうがっ、、、、何、ちょっと腕を軽く押さえるだけだよ、

このベッドにさ。ほらぁ、早くそっち持ち上げるの手伝えよ、、、」

妙にそわそわと心配そうな顔をしている帝斗に半ば呆れるように紫月は溜息を付いた。



・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!





「なっ・・・何だよっこれっ・・・・!?」

背中の鈍い痛みと共に意識を取り戻した遼二はとっさには自分の置かれている状況がつかめるはずもなかった。

広いベッドの上で目を覚ました直後、自由にならない両の腕に目をやったが、、、、

太いロープのようなものをぐるぐると腕に巻きつけられたそんな状況を目の当たりにしても遼二はまだ

何が起こっているのか実感がつかめないでいた。







「気が付いた?」

ゆっくりと穏やかな声がして、はっと振り返るとそこにはにこやかな笑みを讃えながら専務の一之宮紫月が

自分を見下ろしていた。

紫月はふわりと軽くベッドに腰を掛けると穏やかそうな声色で囁いた。

「具合はどう?まだ痛いか?」





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・???」





「ふふ、、、ごめんね遼二、お前を傷付けるつもりなんてなかったんだよ。

でもお前が素直に言うこと聴いてくれないからさ?仕方なかったんだ。」

「なっ、、、何のことですかっ!?素直って、、、俺をどうするつもりですか、、、、」





まだはっきりとは状況把握の出来得ていない遼二の瞳は驚愕と焦りの色でいっぱいに揺れていた。

そんな様子にこっそりと紫月の後ろから覗き込むように顔を出し少し不安そうな表情をした帝斗が立っていた。

「ごめんよ遼二、こんなことするつもりじゃなかったのだけどね・・・許しておくれよ?」

少し済まなそうにそう謝って・・・・

遼二は益々わけがわからずに戸惑った。





「いったい・・何なんですか・・・・こんなの・・外してくれよ・・・・・ちゃんと訳を・・・」

ぐいぐいとロープにつながれた腕を動かしながら遼二は訴えた。

「そうだね。じゃ、ちゃんと話をしよっか?

俺たちはね遼二、お前が好きなんだ。だからさ、ちょっとちょっかい出してみたかっただけ」

平然と紫月はそう言ってのけた。

「ちょっかいって・・・何を・・・・」

「ふふ、、まったく鈍いんだなあ、、、だから一緒に楽しもうって言ってるんだよ?」

「楽しむって・・・・何を・・?」

「ああ、もうここまで鈍いとイライラするなあ、、、そんなのひとつしかないじゃない?」

「えっ・・・!??」





紫月はひょいとベッドの上に飛び乗ると遼二の身体を組み敷くように覆いかぶさった。

そっと顔を近付けて彩のある瞳が驚きに揺れている若者を見下ろす、形のいい指先がそっと頬に添えられて・・・





「素敵だよ遼二、、、ほんとにオトコらしくってさ、すごくそそられる、、、、、」

くりくりと遼二の若い頬を指先で撫で下ろしながらふいと唇に添えると紫月はぎゅっと指先に力を込めた。

「ほら、、、口、開けよ?キスしよう、、、」

そう言うか言わないうちにぐいっと唇を塞がれて、と同時にすぐさまやわらかい舌先がすべり込んできた感覚に、

遼二は飛び跳ねるように顔を背けた。








「なっ・・何しやがんだよっ・・・ふざけんのもいい加減にしろよっ、おいっ一之宮っ・・・・

どけよっ・・・・これ(ロープ)解けよっ・・・・・」

がしがしとつながれた腕を揺すって・・・・

「やめときなって。そんなことすればお前の腕が傷付くだけだぜ?」

大きな褐色の瞳に僅かに笑みを映しながら平然と紫月はそう言った。

「なあ遼二、いつまでも意地張ってないでさ?一緒に楽しもうぜ?お前だってオトコだろ?

だったらさぁ、こんなことされればたまらないよなあー?」

がちゃがちゃとベルトを外しながら紫月はうれしそうに遼二の腹に頬を摺り寄せた。

「ばっ・・・かっ・・・何すんだよ・・・おい、ちょっと・・・・・やめろよ一之・・宮・・・・・・・・・・!」

「ふふ、、お前さあ、その一之宮って呼び方何とかならない?俺一応お前の上司だぜ?

呼び捨てされんのは全然構わないけどさあ、せめて”紫月”とかにして欲しいよなあ、、、?」

「なっ・・に呑気なこと言ってやがんだ・・・・俺はそんなこと言ってんじゃねえってのっ・・・・今はっ・・・

わっ・・・・うわっ、よせっ・・・よせってっ・・・!!!」





・・・・・・・・・・・・・!!





遼二の焦る様子にもまるでためらいの無いままに手際よく生成色のチノパンのジッパーを開くと

渋い色合いのトランクスをすっと引き下ろして紫月はくっとそこに顔を埋めた。

「何すんだよッ、、、、、、、、わっ、、、おい、ちょっとっ、、、、、、、、!!!」





「・・・っ・・・・・・・・・・・・・・・・・」





生暖かくやわらかく、そして時にはくいっと尖ったように力の入った舌先の感覚を交互交互に

使い分けながらゆるゆると自身の熱いものに這わされて遼二は一瞬のうちに高みへと押し上げられてしまった。

紫月の熟練された舌使いは若さ溢れる遼二にはひとたまりもない程で、抵抗する意識とは逆に

身体はおもしろいまでに流されていってしまう。





「・・・ふっ・・・・・・んんっ・・・・やだ・・・・やめろ・・って・・・・一之・・・宮・・・・」





ぎゅっと瞳を瞑ってどんどん押し寄せてくる波を追い払うかのように力が籠る、だがそうして身体を強張らせれば、

又しても違う方向から湧き上がってくる無情な快楽の波に抗えずに遼二はつながれた両の腕を

思いっきり揺さぶった。

縄に擦られて腕が赤く染まる、みるみると皮膚は皮が剥けたようになって。だが遼二はそれらをわざと傷付けるかのように

ぐりぐりと揺さぶった、まるでそうして痛みを伴うことで目の前の大きな波を退けようとでもいうようにぐっと歯を食い縛る。

「可愛いな遼二、そんなに我慢しちゃってさ?いい加減素直になったら?

ふふふ、、、もうイキたいんだろう?」



「うっ・・るせえよ・・・・・その手を・・放せ・・・よ・・・・・・ぁっ・・あっ・・・・・・・・だっ・・め・・・・・やめろ・・って・・・・」



「くくく、、、ほんと意地っ張りだなあ、、、あんまりそうだと意地悪したくなっちゃうよなあ?」

紫月は楽しそうに微笑むと側で見ていた帝斗の身体をぐいと引き寄せて着ていたシャツをするりと剥いだ。

「紫月さんっ!?何をっ・・・」

慌てる帝斗の顔を遼二の胸元に持っていくと、ぐいっと押し付けて。

「ほら、愛してやれよ?最初に遼二を犯りたいって言ったのお前だぜ?ちゃんとご奉仕してあげなくっちゃ」

「そんな・・・だってあれは・・・・・・・」

ぽっと頬を染めるようにすると帝斗は少し恥ずかしそうに下を向いてしまったが、何を思ったのか突然に

色っぽい瞳で遼二を見つめるとふいとその逞しい胸に顔を埋めた。





「遼二・・・・・・・・・・・」

なめらかに誘うような瞳が纏わり付いて・・・

帝斗は遼二の胸の突起物に軽くキスをするとゆっくりと舌を這わせるようにしながら口に含んでいった。





「うわっ、、、あっ、、、ぁっ、、、やめろって、、、やだ、、、」





「んっ、、、、ぁあっ、、、、」



上下に甘い衝撃で揺さぶられてたまらずに遼二は意識を手放した。乳白色の液が勢いよく飛び散って。





「・・ぁっ・・・・・・」





はぁはぁと荒い呼吸を呑み込むのかのように必死で吐息を抑えようとしている、

そんな遼二のくっと繭を顰めた表情にくすりと帝斗は微笑んで・・・

「ほらぁ、見てくださいよ紫月さん、言った通りでしょ?この表情すごくセクシーだ・・・・

たまんないよなあ、こういう”男”の表情って・・・・倫とはまた違ってさ?すごくそそられるんですよね?」

「はっ、、、お前も好きだなあ、、、倫だけじゃ物足りないってわけ?俺はどっちかって言ったら倫みたいな

オンナ顔の方のが好みだけどねえ?」

そう言って笑った紫月をくっと睨みつけるようにしながら少々唇を尖らせると拗ねたように帝斗は言った。






「だからさ・・紫月がそうやって倫にばっかり夢中になるから僕は遼二と寝てみたいって言ったんだ。

たまには壊れるくらい強く抱き締められてみたいって。

だって倫じゃ間違っても僕を抱き締めてなんかくれないじゃない?

倫は僕らが抱いてあげるのが役割だからさ、それに倫で楽しむときだって体外は紫月さんメインだもん、

僕なんておこぼれ程度ですよ。たまには僕メインで独占してみたいよなあ・・・」






ぶつぶつとそんなやり取りを繰り返している帝斗と紫月の言葉が無意識に耳に入っていた遼二の口から言葉が零れて・・・・






「おい粟津・・・これ(ロープ)、取ってくれよ。そういうことだったら俺が抱いてやる・・・・

思いっきり、壊れるまで犯ってやるからよ・・・・早く・・外して・・・」






低い声で、憂いのある瞳でそう呟いた、遼二の黒曜石の瞳はぞくっとする程艶めかしくオトコの色香を

漂わせながら真っ直ぐに帝斗に注がれていた。

突然にそんなことを言い放った遼二の豹変振りに帝斗も紫月も少々驚いたように互いを見合わせたが・・・・





「何だよ?やりてえんだろ、俺と・・・じゃ早くこれ取ってよ?なあ粟津・・・」





いきなりの素直な言葉にどうしましょうといったように紫月を振り返った帝斗だったが、当の紫月も又

少々戸惑ったような表情を浮かべてはいた。






「ま、いっか?じゃあ外してやるけどさあ、、、何か変なこと企んでんじゃねえだろうな?」

威嚇するようにそう問いながらも紫月は真っ赤に擦れた腕をロープから開放してやった。

逞しい身体を起き上がらせたときに真っ黒な艶のある髪がぱさりと揺れる、そんな様子も帝斗の心を熱くして。

遼二はゆっくりと大きな瞳を動かして帝斗を見つめるとひとたびそのまま視線をとめた。

次の瞬間、一瞬どきりとした帝斗の腕がぐいと引き寄せられて・・・






「どうして欲しいんだよ?え・・・・?粟津さん・・・・あんたの好きなように犯ってやるぜ?」

暗褐色の瞳ぎりぎりに唇を押し付けられて彩のある声が低く響く、帝斗は思わずくらりと意識が揺らされるのを感じた。






「言えよ、早く、、、何して欲しいのかさ、、、、?」






「・・・・あっ・・・・・・・・」






遼二はぐいと帝斗を組み敷くと力強く身体中に愛撫を繰り返した。まるで乱暴に癪に障ったかのように弄って。





「やっ・・遼二っ・・・・そんな強くしないでっ・・・・・もっと・・・」

「なあに?もっと何だよ、、、?お前らにそんなこと言えんのか?」



え・・・・・・・・・・・?



「お前ら、こんなふうにして倫を弄んだんだろ?何時からそんなことしてんだよっ!?ふざけんなよっ、、、!」

倫周とは幼馴染みで幼い頃から兄弟のように育った遼二は先程の会話から2人が倫周で楽しんでいる事実を

初めて知ってしまい、その心は怒りに震えていたのだった。

「倫に何しやがったっ!?おいっ、粟津っ、言えよっ!倫をどうしたんだよっ、、、!?」

まだ開き切らない帝斗の蕾を強引にこじ開けるように自身の凶器を突き立てながら遼二は怒鳴った。

荒ぶれる気持ちが抑制出来ずに、本当に壊すように帝斗の身体を揺さぶって・・・

「やっ・・やだ・・・・やめてよ遼二っ・・・そんなにしないで、壊れる・・・」

「うるせえっ、こうして欲しかったんだろ?壊れるくらい犯られてえってお前さっきそう言ってたじゃねえかよっ、

ふざけやがってっ、倫を傷モンにした落とし前、きっちりつけさせてもらうぜ?」

「あぁぁああっ・・・・やめて・・・・やああぁっ・・・・・・・・・・・助けてっ・・・紫月っ・・・紫月・・・・」






・・・・・・・・・・・・!??






がつんっ、と鈍い音と共に帝斗と繋がったままがっくりとベッドに倒れ込んだ逞しい身体をぐいと引き上げながら

紫月は言った。

「何熱くなってんだ遼二?お前ひょっとして倫のことが好きなのか?」

遼二の背中に一撃を加えた木刀を静かに床に置きながら紫月は冷やかにそう囁いた。

見事な程の真っ黒な髪をぐいと引き上げて・・・・

「遼二さあ、何か勘違いしてねえ?倫は自分から俺たちのトコに来てんだぜ?」

「な・・・何・・言って・・・・・嘘こくんじゃ・・ねえ・・よ・・・・」

「嘘なんかじゃないさ、倫はねセックスするのが大好きなんだよ。そりゃあもう欲求が激しくってさ?

俺たち2人係りでも間に合わないくらい、、、ふふふ、、、お前そんなことも知らなかった?

あいつはね、すごくいやらしいんだよ。何て言ったらいいかな?そう、淫乱、、とでもいうのかなあ?」

「ふっ・・ざけんなよっ!倫がそんな奴なわけねえだろっ!?こじつけてんじゃねえよっ!

てめえらの都合のいいことばっか言いやがってよっ!」

「あはは、、、信じないなら別にいいさ。でもホントのことだからさあ?そんな疑うんなら今度こっそり

見せてやろっか?」

「うるせえっ!いい加減にしやがれっ、おいっ、手ェ放せよっ!!!」

髪の毛をつかんでいた紫月の指を思いっきり振り払おうとした遼二だったが、焦りと怒りとで神経が

高ぶっていたのか、力任せに振り回した腕が空振ってしまった瞬間にぐいっと紫月に後ろから抱き竦められてしまった。






「なっ・・・にすんだよっ・・・!?」

ぎゅうぎゅうと痛いくらいに腰元に爪をくい込まされて遼二は一瞬その場に硬直してしまった。






「痛っ・・・放せ・・よ・・・・一之宮・・・・・おい・・・・」






苦しそうに繭を顰めた遼二の頬に後ろ側からぴったりと自分の頬を擦り付けながら、声だけは穏やかに紫月は囁いた。

「お前が倫を大事なようにさ、俺も帝斗が大切なんだよ。その帝斗にお前はさっき酷いことしたんだからさ?

これはその罰だぜ?」

そう言ったと同時に紫月は遼二の後ろから自身の硬く怒ったものを突き立てた。

「何すんだよっ・・・!?おいっ、ふざけんのもいい加減にっ・・・・」





・・・・・・うわ・・・ぁあああっ・・・・





「やめろっ・・・やだっ、やめろってっ・・・・・ふざけんな・・・一之・・・・みやっ・・・・・・」

自らはまだ帝斗と繋がったまま後ろからは紫月に強引に攻め立てられて・・・・・

「やだっ、、、、、やめろよっ、、、、、、、、、、、、、」

ばたばたと遼二は身を捩った。

「帝斗っ、ぼうっとしてねえでっ、、、少しは協力しろっ!」

「え・・・・?あ、ああ・・・・」



「ね、遼二・・・ごめんよ?本当はこんな酷いことするつもりじゃないんだよ・・・・

ね・・?わかっておくれよ?」

やさしくなだめるように帝斗はそう言って遼二の首にぎゅうっとしがみ付いた。






「や、、、だ、、、、やめろ、、よ、、、、、やだ、、って、、、うっ、、、、、」





うわあああっ・・・・・・・・





広い部屋に恐ろしい程の絶叫と共に遼二の黒曜石の瞳からぽろぽろと涙が零れて落ちた。

業火のような炎が噴煙を上げて燃え尽くす、すべてが灰になるまでのほんの短い時間が永遠のように感じられ・・・・








辺りに蒼い闇と共に静けさが包む頃、広いベッドの上で遼二はぐったりとうつ伏せになって横たわっていた。

まるで魂を抜かれたように黒い瞳は見開かれたまま、どこを見つめるともなく潤みを増して。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「泣いてんのか?遼二・・・・?」





ゆっくりと黒い髪を撫でながら静かに紫月はそう呟いた。

「大丈夫か?そんなショックだった?」

僅かに蒼白い顔色の、さらさらの黒髪を優しげに撫でながら穏やかに尋ねる。

「うるせえ・・よ・・・泣いてなんかねえよ・・・・・ケツ痛えだけだよ・・・・・」

「そうか、悪かったな。だけどな、俺たちはほんとにお前が好きなんだぜ?

お前が、もちろん倫もそうだけど、お前たちは俺にとって宝なんだよ。無論信一や剛、潤も同じさ。

Fairyは俺たちにとってすごく大事なものなんだよ。だからわかっておくれよね?

お前を殴ったり、酷いことして悪かったよ。だってそうでもしねえとお前を手に入れられなかったんだよ」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「お前ら・・・・剛や信一にもこんなことしてんのかよ・・?潤も・・?まさか・・・だよな・・・幾らなんでも・・・」

さらさらと髪を撫でる手をとめずに紫月は呟いた。





「知りたい?、、、ホントはね、お前が最後なんだよ。」





「え・・・・?」





紫月は少し切なそうに微笑むと黒曜石の瞳を見つめながら言った。

「お前が最後だって言ったんだ。あとのメンバーは皆お前と同じ思いを既に経験してる、、、、

ふっ、、、俺は酷い男だよ、、、、皆、同じようにさ、、、、

さっきのお前みたいに無理矢理押さえ付けて自分のものにしたんだ」



「・・・・・・・・・・・・!」



「なん・・で・・・?何でそんなことすんだよ・・・・・あんた・・・」

「さあね、何でだろ?わからねえよ、、、けどお前たちが皆大切だっていうのは本当さ。

大切過ぎるのかな、、?だから全部自分のモノにしたくなる、、、わがままだな、、、、

帝斗にだって無理に付き合せてるだけだから。悪いのは皆俺なんだよ、、、、」

ずっと黙っていた帝斗はそれを聴いてさすがに身を乗り出すようにしながら立ち上がった。



「違いますよっ、紫月さんは悪くないっ・・僕がっ、僕が皆を構ってみたいって我がまま言ったからっ・・・」

必死にそう訴えるように叫んで。



そんな様子に少々辛そうに苦笑いを浮かべながら遼二は呟いた。



「何、かばい合ってんだよ・・・・大の大人がさ・・もう、いいよ・・・・もう、分かったから・・・少し・・・・」

「少し、、、何?遼二、、、、?」

うつらうつらと黒曜石の瞳が閉じられてしまった様子に帝斗ははっとなったように慌てながら



「遼二っ!?どうしたんだ遼二っ!具合悪いのかっ!?」



ぐっと腕をつかんで肩を揺さぶろうとしたとき、ふいと紫月にとめられて・・・・

「だめだよ帝斗、、、眠いだけだ。少しそっとしといてやろう、、、」

「え・・・?ああ・・・そうですね・・・・」

紫月はそっと遼二の肩に布団を掛けてやると帝斗と一緒にリビングのソファーに腰を下ろした。

気に入りのジタンの煙草を深く吸い込んで。








「で?ご感想は?」





「・・・・・・・・・・・・・・」





「何だよ、黙り込んじゃってさ?何かあるだろ?よかったとかわるかったとか、感じたとか感じないとか、

黙ってないで何か言えよ」

少しためらいがちに下を向きながら帝斗は呟くように小さな声で返事を返した。

「やっぱり・・やめとけばよかった・・・かなって・・・・何か遼二が可哀想だったかな・・・・」

ぽつりぽつりとそんなことを言った帝斗に呆れたように紫月は煙を吹き出して。

「だから言ったんだ、遼二は一筋縄じゃ落とせないよって。ああいうタイプは俺ら如きじゃ手に余るんだよ、

遼二を言いなりにするにはマネージャーのビルくらい体格 ねえっていうとさ?

それだってすんなりとはいかないと思うぜ?」

「ええ・・・すみませんホントに・・・僕がどうしても遼二と試してみたいなんて言ったから・・・・」

「もういいよ、分かったらさ、これからは倫で我慢しとけってよ。なっ?

倫はお前に好意持ってんだしさ、可愛いだろ?」

「ええ、そうですね、、、ごめんなさい紫月さん、、、本当はね、ちょっとやきもちだったんですよ、、、

紫月があんまり倫に夢中だから何となくつまらなくなったりしてて、、、だから当て付けに男らしい遼二と

寝てみたいなんて、、言ったんです。ごめんなさい、本当に。僕のせいで遼二にも辛い思いさせてしまった」

「今更遅いぜ・・・それに俺は別に倫に夢中ってわけじゃねえぜ?どっちかっていったら

お前が倫に夢中なのかと思ってたけどな?」



・・・・・・・・・・・・・?



「何で?」

「だって・・・いつも倫を風呂に入れてくるの、お前の役目じゃん・・・・その間俺は独りで部屋で待ってんだぜ?

お前ら2人で何してんのかなあっていつも勘ぐってる・・・・」

「なっ、、、何もあなたに言えないようなことなんてしてませんよっ!僕はいつだってあなたが一番なんですからっ、、、

只 倫は可愛いなって思うだけで、、、、」

「ふっ・・ん・・・ならいいじゃねえか・・・・変なやきもち焼いてねえで今までみたいに倫で我慢しろって」

「ええ、わかってますよ、、、じゃあ気を取り直して明日は倫で思いっきり発散しましょうかねえ?」

にっこりと帝斗は微笑んで。

「おっ、、前なあ、、、、何だよその立ち直りようは、、、」

紫月は呆れたように微笑むともう一服深く煙を吸い込んだ。