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「やっぱり諦め切れんなあ、、、」
近代技術を屈指した立派過ぎるビルの地下室で中年男性の下卑たような溜息が漏れる、
大きなソファーにどっぷりと腰を下ろした彼の周りにはきちんと居住まいを正した美形な男たちが
きっちりと粋なスーツを着込んで立っていた。
造りこそは豪華といえないこともないが、薄暗いその地下の部屋は何となく浅黒い雰囲気が流れ出し、
まるで何処ぞの門番のように立ち尽くす美青年たちが奇妙な威圧感を感じさせる程であった。
「例のバンドの青年のことですか?」
形のよい姿勢をそのままに美青年のひとりが口を開いた。
「ああ、やっぱりどうしても諦め切れないねえ。あの男を一度味わってみたいもんだよ」
「確かに綺麗な子ですよね?あんな華奢なのにドラムスの腕は大したものだし」
「ああ、それにあのふわふわとした定まらない雰囲気はちょっとそそられるよな?
もうハタチだってのにまだ少年のような感じだし。
ああいう何も知りません、って顔してるのに限って案外ものすごく乱れたりするんだろうなあ」
「ははっ、そうかもな。もしかしてもう誰かの餌食になってたりして?意外とあれじゃない?
T−Sプロのトップが囲っちゃってるんじゃないですか?」
「ええっ!?」
「ああそうか、だからあそこの社長はこの話を蹴ったってわけかな?」
いぶかしげな表情をしている中年男性を囲みながら低い声がうわついたように飛び交っている、
どうやらこの男たちの話題にあがっているのはT−Sプロの看板バンド、Fairyのドラムス柊倫周のことであるらしかった。
この中年男性は業界ではかなりの力を持っているらしく多方面に顔が利き、体外の者は頭があがらないという大物らしい。
表向きは大御所プロデューサーだか何だかの看板を挙げているが裏ではソドミアンで有名だった。
彼は音楽業界に顔が利くのをいいことに気に入った新人などを各方面から見初めてきては今自分を取り囲んでいる
美青年たちに輪姦させて、その様子をどっかりとソファーに腰掛けながらまるでショーを楽しむかのように
視姦するというのが趣味であった。
いわゆる権力をかさに取った貸切りのショーである。
目を付けられた新人の青少年はたまったものではない。
だが会社を背負って稼ぎ所の彼らを各プロダクションの社長連中はこぞって差し出してしまうのであった。
それ程にこの中年男性の力は絶大で、だから皆苦薬を口にしたような顔をしながらも致し方なく
自分のところの金の卵を差し出してしまうというのが現実であった。
そんな彼が今回目を付けたのがT−Sプロの倫周だったというわけだ。
当然の如く手中に入るものだと、この話を持ち掛けたが何とT−Sプロの社長 粟津帝斗は迷いもなく
この話を蹴ったのだった。
中年男性はこの帝斗の態度には非常に驚いたが、あえてこうきっぱり断られてみると無性に恋焦がれるというか、
手に入れたくなるのが本能といったところか。
彼は帝斗に逆恨みをすると共に何としてでもこの倫周を手に入れたいと思ったのである。
「ああ、、、ここでお前らに剥かれて泣き叫ぶあの子を見てみたいよ、、、きっとすごく好い表情をするだろうなあ、、
もともとアノテの顔は私の好みこの上ないし、、、
お前らに弄られてぐちゃぐちゃに泣かせたあの子の顔を見たいっ、、、ああどうにかならんかなあー、、、
くそっ、、粟津の野郎めがっ、、、業界最大手などと囃されて浮かれおって!
あんな若造潰すのはわけないっていうのにっ!」
苛々と唇を噛み締める中年男性に又しても側の青年が口を開いた。
「では潰してしまったら如何です?」
「しかし粟津さんも度胸がありますよねえ?師匠に逆らおうっていうんですから。
体外のプロダクションの社長連中は皆んな腹を見せてくるっていうのにねえ。
ま、大したもんって言えばそうですが」
「ばかだなあ、何であそこ(T−Sプロ)があんな大きな顔してられるか知らないのか?
あそこはな、社長の粟津も勿論だが専務の一之宮が力あってさー、ちょっと手出すのは難しいんだよ」
「へえ?一之宮ってあの若くして天才プロデューサーとか言われてるあの一之宮?
それが何だってそんなに力あるのさ?」
「ホントに何も知らないのか?あいつの実家はな、大財閥で有名なんだよ。何でも親父がすごい
顔広いとかでさ、政界とかとも繋がってるってさ。有名な話だぜ?だからいくら師匠でも迂闊に手は出せないんだよ」
「へえ?そうなの?初めて聞いた。大財閥ねえ・・・」
ひそひそとそんな話が漏れ出す地下室でのひととき。
同じ頃、丁度噂に出されていたT−Sプロの専務兼プロデューサーの一之宮紫月は
この立派過ぎるビルの前に佇んでいた。
頃は宵闇が降り切った新月の夜。
紫月はしばらくビルを見上げていたが、やがて意を決したようにその立派な建物の中へと消えて行った。
地下室では憂鬱そうな表情の中年男性に耳打ちするように先程からの美青年のひとりが側へと歩み寄った。
「師匠、噂をすれば・・・ですよ。
たった今T−Sプロの一之宮専務が師匠に面会を申し出て来たそうですが・・・如何しますか?」
そう聞いた瞬間に半ば眠たそうにしていた中年男性の瞳がカッと大きく見開いた。
「何っ!?一之宮が私のところへだと?よしっ、通せっ!」
そう指示をすると同時に立ち上がり少々浮かれたような表情を浮かべた。
「一之宮の奴、粟津と違ってやはり話はわかるようだな。業界最大手と言われた看板を潰したくないんだろう?
はははっ、、、さすが父親の血を引いておるようだ、こんなことで会社を潰すこともないと
思ったんだろう。やはり大物の子は大物だよ。ま、悪く言えば”悪の子は悪”ってことかな?」
まるで一人合点したように浮かれてみせる自分たちの師匠に取り巻きの美青年たちは
お互いに肩をすぼめると少々呆れたような表情をし合っていた。
「一之宮くん、よく訪ねてくれたね。歓迎するよ」
まるで愛想良くそう言って迎えた、美青年たちに師匠と呼ばれたこの中年男性は紫月が自分のところへ
倫周を差し出しに来たと思って疑わなかった為、必要以上に愛想を振り撒いたのだった。
だがしかし紫月の開口一番に彼の浮かれた瞳は一瞬のうちに棘を増した。
「いい加減にして頂きたい、今日はそれを申し上げに来たのですよ」
静かに褐色の瞳を閉じながら紫月はそう言った。
「な、、んだと、、、?どういうことだ!?」
脂ぎった髭面をわなわなと震わせながら男は立ち上がると今にも紫月に掴みかからん勢いで声を震わせた。
「ですから、いい加減にして欲しいと申し上げたんです」
目をひん剥き出した男をちらりと振り返りながら紫月は続けた。
「昨日、うちの柊(倫周)を食事に誘っていただいたとか?マネージャーの者にそう聞いたものでして。
幸いマネージャーがすぐ側にいたんで未遂でしたがね?
そういったことはやめて頂きたいと先日申し上げたはずですが?」
「みっ、、未遂だとっ、、、!なんと無礼なっ、、、若造がっ、、いい気になりおってっ!
財閥の御曹司だか何だか知らんがあまり節操ないと痛い目に遭うぞっ、、、
世の中お前なんかよりもっと力のある奴はごろごろしてるんだっ!馬鹿にしおってっ、、、このっ、、、」
「この・・・何ですか?今は私のことを話してるんじゃない、うちの商品に手を出すなと申し上げているんですよ」
「なんだとっ、、!!」
静かだが棘のある、そんな紫月の言葉に男は我慢ならんといったように大きな卓を叩くと勢いよく立ち上がった。
「も、、もう一度言ってみろ、、、商品に、、何だと、、、?」
握り込めた拳の僅かに震える様子からどれ程の怒りがとって見える。
紫月は穏やかに再度同じことを口にした。
「手を出すな、と言ってる。ご理解できませんか?
柊はもとより我が社の連中にちょっかいを出さないで頂きたい。
彼らはうちの宝ですからね?
あなたの穢れた趣味にお付き合いできる代物ではないのですよ」
この言葉にはさずがに業が煮えたのか、側を取り囲んでいた美青年のひとりがムッとしたように口を挟んだ。
「一之宮さん、ちょっとお言葉が過ぎるんじゃありませんかね?
幾らあなたでも言っていいことと悪いことが」
そう言い掛けて。
「いくら私でも?
はははっ、、私はそんな大した人間じゃありませんよ。それに、、、あなただってそうだ。
業界のドンかなんか知りませんけどね、私はそんなこと何とも思ってはいませんよ。
あなただって私だって同じ人間だ。どっちが偉いでもなけりゃどっちか劣るでもない。
ただ私は本当のことを申し上げたまでですよ。
よろしいですか?今後一切、私共の社員を誘ったりするのをやめて下さい」
やわらかにそう言うと紫月は褐色の瞳を見開いてじっと中年男性を見つめた。
穏やかだが意思のある視線がじっと捉えて放さない、そんな様子に男は一瞬ぞっとしたような表情を浮かべると
拳を握り締め、少々うわずりながら言葉を放った。
「そ、、うか、、お前の言いたいことはよく解った、、、私だって馬鹿じゃないからな。
お前の言い分も解らなくはない、でもな、、、」
でも−−−−−
「お前はやはり人生の先輩に失礼なことをしたに変わりはないだろう?
一応目上で、それも同じ業界に生きてる私を罵倒したんだからな、、、
その償いだけはして貰いたいものだよ。
さっきからのお前さんの態度や言葉は同じ業界の先輩に対して許されるもんでもないだろう?
それくらいは解るだろう?
私にもプライドってもんがある。あんたのような若造にコケにされたまんまじゃ
こっちとしても引っ込みが付かないんだよ」
言葉が進むにつれてぎりぎりと歯ぎしりをするように、大きく見開かれた瞳は煮え滾った怒りで溢れているのがわかった。
紫月はしばらく黙っていたが、やがてふっと軽く微笑みを漏らすと軽やかに尋ねた。
「そうですね。確かに私も失礼な言い方をしたかも知れない・・・そのことは謝りますよ。失礼致しました」
そう言って又瞳と瞳がぶつかり合う、紫月の大胆不敵な態度に腹が立ったのか呆れたのかといったように
男は急に大声を上げると腹を抱えたように笑い始まった。
部屋の中にまるで鍛え上げられた軍人のように微動だにしない、
美青年たちもこの様子にはさすがに戸惑いの表情を浮かべてはお互いを探り合っていた。
しばらくの後、男はぴたりと笑い止むと脂ぎった瞳をぎらぎらとさせながら言い放った。
「いいだろう、今回のことは大目に見てやろう、、、だがな。柊を一度だけ貸してくれないか?」
「いいだろう、今回のことは大目に見てやろう、、、だがな。柊を一度だけ貸してくれないか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
この言葉に紫月はもとより美青年たちもさすがに意表を付かれたといった顔をした。
「何て・・・・・・・・・・・?」
「だからな、お前の失礼な態度を許してやる代わりに柊をよこせって言ったんだ。
お前の言うように確かに俺は穢れた趣味とやらを持ってるもんでね?柊を一度でいいから楽しんでみたいんだよ。
お前さんトコのあの綺麗な子をさ、ここで犯して汚してやりたいってね、思うんだ。
考えただけでゾクゾクするぜ、あの少年のような肌を引き裂いてやるのをさ、、、?
ま、あんたにとっちゃ本末転倒ってとこかな?自分の失態を柊に救ってもらうことになるんだから?」
まるで挑発するかのように紫月を睨み付けながらにやりと笑みまで見せて男はそう言った。
突然に本性を剥き出した、というよりはまるで逃げ場を失くしたハイエナが目の前の王者に牙を剥くといったようで、
そんな様子に美青年たちも自らの主君の少々みっともない態度に苦虫を潰したような表情をしていたが、
この後に投げ掛けられた紫月の言葉にその場にいた皆は一瞬ぎょっとしたように固まってしまった。
無論中年男性も例外ではなく・・・・
紫月はふいと微笑むとまるで軽やかに言葉を発した。
「それは困りますよ。申し上げたでしょう、ウチの社員に手を出さないで頂きたいって・・・
どうすれば解って頂けるのでしょうね?もしもどうしても私の無礼が許せないとおっしゃるのでしたら
どうぞ好きなようにしてやって下さい。柊ではなくこの私を・・・ね?
殴るなり蹴るなりお気の済むようになさって下さい」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どうします?もう用がないのでしたらそろそろ引き取らせて頂きたいんですが・・・・・・・・」
軽く上目使いにちらりと目線を飛ばされて。
さすがに堪忍袋の緒が切れたといったように男は紫月の腕をぐいと掴み上げると今までになく
真剣な目つきで歯軋りをして見せた。
「こんのぉ、、、黙ってりゃいい気になりやがって、、、
いいだろう、そんなに言うんなら望み通り好きにさせて貰うぜ?だがな、、、
この俺を怒らせて殴る蹴るだけで済むと思ったら大間違いだぜ?」
ぎろりと褐色の大きな瞳が少しの怒りを讃えて男を振り返った。
「どういう意味だ・・・?」
腕を捻り上げられたまま紫月はそう訊いた。
「どういう?
そんなこと言わせる気かよ?俺がどんな趣味かなんて、聞かなくたってあんた充分解ってんだろ?
はっ、、、何かお前見てたら気が変わった。いいぜ、柊のことは諦めよう。
その代わりお前をここで引き裂いてやりたくなった、、、何処ぞのお坊ちゃんか何か知らねえがっ、、、、
その高慢ちきな態度が何処まで持つかさ?そっちの方が楽しみになってきたもんでね?
どうだ?そしたら許してやる。お前にそんな勇気あるかい?ここでさ、、、
この男たちに好きなように弄ばれる、何処までその生意気な態度が持つかねえ?
それが嫌だったらさっさと柊をよこす事だな。帰って自分の部下に泣き付いて助けて下さいって言うこったなっ!
自分のしでかした失態の為にお前が犠牲になってくれって、せいぜい柊に泣きつくんだなっ!」
そう言いながら男は勢いよく紫月を突き飛ばした。
ぱたぱたとスーツの埃を払うように起き上がるとゆっくりと笑みを讃えて紫月は言った。
「冗談じゃねえ・・・俺がここに何しに来たと思ってんだ?
柊に手を出すなって云いに来たんだぜ?それを帰って泣き付けだと?ふざけんのもいい加減にしろよ。
それに俺はまだ嫌だとはひと言も言ってないはずだぜ?この兄ちゃんたちと遊べばいいってんなら
幾らでもいいぜ?好きなように犯れよ。全然構わねえよ・・・」
「へえ、、、?そうかい?そこまで言うんなら事の意味合いが解ってるみてえだなあ、、、?
ホントに犯っちまうぜ、いいのかい?」
「くどいなあ・・・ごたごた言ってねえでやるんなら早くしてくれよ?俺だって暇じゃねえんだしよ」
ぐいと見据えた褐色の瞳はまるで平然と動揺のかけらも映してはいない、そんな態度に男も本気になったかのように
ぎりぎりと紫月を睨み返した。
「はっ、、こいつぁ楽しくなってきたぜ?大財閥のお坊ちゃまで業界最大手の天才プロデューサー様を
堪能出来るってんだからなあ?こんな美味しい話は滅多に無いってよ?なあ、専務様よぉ?」
嘲るように笑い声を上げながらぐいと顎を持ち上げる、と同時に髭もじゃらの分厚い唇を押し付けられて
紫月はぎゅっと瞳を閉じた。
「あ、、ははははっ、、、こいつぁ滑稽だぜー、、、っははははっ、、、、
ちょっとチュウしただけでそ〜んな目ェ瞑っちゃってさぁー、、、、幾らでもいい、とはよく言ったもんだぜ。
あ〜可笑しいっ、、いいなあ、、、お前、、、柊なんかよりよっぽど楽しめそうだなあ〜」
ぎゅうぎゅうと髪の毛を掴まれて、しばらくは本性を剥き出しにした中年男のしたい放題にさせていた紫月は、
ぎっと男を睨み付けるとそのまま視線を外さずに見据えながらひと言低い声で呟いた。
その代わり−−−−−
「え、、、?何だよ、聞えねえよー?」
「その代わりっ・・・俺を好きにする代わりにっ・・・・柊のことは諦めろ・・・・今後一切・・・・
あいつに、あいつだけじゃねえ・・うちの連中にちょっかい出さねえって約束しろっ・・・・・
そしたら・・・・何してもいい・・・・本気で、俺がくたばるまで好きにさせてやる。だからっ・・・・
約束しろっ、ここでっ・・・・ちゃんと証文書けよっ!」
一瞬、水を打ったように部屋中が静まり返った。動いているのは美青年たちがお互いを探り合う視線だけ。
男は掴んでいた紫月の髪の毛を放すと無言のまま机へと向かい、紙を取り出すとさらさらと何かを書き付けていった。
「ほらよ、、証文。書いたぜ。こいつはお前のもんだ、俺も男だ。嘘はったりは言わねえ。
二度とお前んとこの連中に手は出さねえよ、無論柊にも今後一切近寄らねえ。約束するぜ?
だからお前もせいぜい約束守ることだな、、、いいか?覚悟は出来てんだろうな?」
「うるせえ・・・ごちゃごちゃ言ってねえで、早くしやがれ・・・・・」
「いい度胸だ、専務さんよぉ、、、あんたがそんな度胸据わってたとはね?ちょっと見直したぜ?
好いトコのお坊っちゃんなんて自分が危なくなったらさっさと部下引き渡して逃げるとばっかり
思ってたからさ?あんたが身体張ってまで部下を守りたいっていうその態度が気に入ったよ。
たいしたもんだ、だがな、、、まあ最後まで持つかどうかってな、、、、
歯、くいしばんな」
そう言われたと同時に男は引き上げて行った。
どっかりと大きなソファーに腰を下ろして脚を組む、まるで葉巻のような煙草に火を点けたと同時に
紫月の周りを男たちが取り囲んだ。
「悪いな専務さん、じゃ失礼するぜ?」
顔立ちは美しいと言って過言ではない、自分よりも僅かに体格のいい男たちに両脇から腕を取り上げられると、
前からは又別の男の腕が伸ばされて手早くスーツの襟を開かれる。
いつの間に解かれたのかという程の速さで手際よくネクタイを床に放り出されると真っ白な糊の効いた
ワイシャツのボタンを3つばかり外された。
僅かに覗いた首筋から胸元にかけて男の手が忍び込み、、、
「すげえな、、、真珠みてえに光ってやがる、、、、専務さんあんたホントにオトコ?」
「うわあ、、マジ綺麗、、、こいつぁ柊にも勝るとも劣らないってか?ホントすげえなあ、、、」
浮ついた感嘆の声が行き来する、次々と投げ掛けられる言葉の飛んでくる方向にきょろきょろと視線を
泳がせている紫月の様子を中年男性は満足そうに見つめていた。
「うわあ・・・本当に綺麗な肌ですねえ。
そこらの若いモデルだって化粧してやっとここまで仕上がるかってとこですよ?」
上半身の衣服をすべて剥いだ瞬間に美青年の一人がそんなふうに溜息混じりに囁いた。
まだ両腕を捕られたまま紫月は特に抵抗するともなくただじっとしていた。
すっと背後から青年の掌が触れられて、つうーっと背中に一筋の線を描くように指先が這わされる。
「もったいないな・・・こんな綺麗な肌、俺だってこんなことすんの嫌だけど・・・仕方ないよな?
専務さん、ちょっと痛いかも知れませんけど・・・・」
そう言った瞬間に鈍い音と共に背中にものすごい衝撃を感じた。
少し時が経ってみればひりひりと火傷を負ったように痛み出し、自分の背中を打った衝撃が
青年の振りかざしたムチのような代物だとわかったのはそれからすぐのことだった。
「はははっ、、、そいつは馬の調教用なんだけどな。あんたを調教するには正にぴったりだろうが?
ははっ、、、いつもの子うさぎちゃんを苛めるのと違って手負いの獅子を追い詰めるってのも乙なもんだなあ。
こいつは新しい発見だぜ、専務さん」
どっかりと椅子に腰掛けながら男がうれしそうにそんなことを言っている。
未だ両腕を捕られたまま髪の毛までを掴み上げられて紫月はぐっと唇を噛み締めた。
「・・・・・ぅぐ・・・・・っ・・・・・・・」
ビシビシと音と共に青年が放つムチの音が空を切る。続けざまに背中を打たれてさすがに痛みに耐え切れず、
がっくりと膝を落としそうになった紫月のわき腹をめがけて容赦なく激痛が飛んできた。
「・・・ぐぁ・・・・・っ・・・」
自分の両腕を捕っている青年に向かって縋るように倒れ込む、紫月は無意識に自身を守るように
身体を丸めながらそのまま床へと崩れてしまった。
「ほら立てよ。こんなもんでくたばってもらったんじゃ証文は返してもらわなきゃなあ、専務さん」
そう言われたと同時に又もぐいと髪の毛を掴み上げられると目の前にはズボンのファスナーを開けた青年の
股間が揺らいでいた。
「ほらしっかり頼むぜ?せいぜいあんたのお手並みでも拝見させてもらうとするか?」
ぐいぐいと髪の毛を引っ張られて持っていかれた先には男の逸ったものが生々しく剥き出しにされていて・・・
「・・・・っ・・・・・!」
「何してんだ、早くしてくれよ・・・・今更嫌だとは言わせねえぜ?」
ぺちぺちと頬を叩かれて・・・・
紫月は男を見上げるとほんの一瞬ぎっと睨み付けるように視線を送った後、にやりと苦笑いのような
笑みを浮かべると目の前に差し出されたモノを口に含んでいった。
熱く逸ったものの根元から丁寧に舌を這わす、唾液を絡めるようにゆっくりと先端へと登りつけると
ほんの少し潤み始めていた蜜の入り口の周りを弧を描くように舐めまわした。
「、、、、っ、、、、、くそっ、、最高だぜ、、、専務さんよ、、ぉ、、、あんた、さすがだな、、、、」
くっと繭を顰めながら紫月に銜えられていた美青年がとぎれとぎれにそんな言葉を放つ。
その様子を窺っていた周りの青年たちも興味深々といった感じで食い入るように行き着く先を見つめていた。
「う、、わっ、、、、、あぁっ、、、、」
どくんどくんと乳白色の蜜が飛び散る、突然に口の中に吐き出された生温かいその液体に紫月はとっさに顔を背けた。
「おいっ、ふざけんなって!誰がやめていいって言ったよ!?ちゃんと綺麗にご馳走になるんだよっ!」
床に飛び散った乳白色の液体に顔面を押し付けられながらぐりぐりと頭を足で踏みつけられて・・・・
「・・・・っ・・・うっ・・・・・」
それでも紫月はひと言の抵抗と反抗の言葉も一切口にしないまま、青年たちのされるが儘になっていた。
「へっ、、意外と強情だなぁ、、、あんたプライドってもんがないわけ?」
「それとも何?ここまでされても反抗できない程ひょっとして専務さん、あんた柊に惚れてんの?
なあ、そうだろ?只部下を守りたいってだけじゃここまで耐えられるかあ?」
「へえぇ、、、そうなんだぁー、柊に惚れてねー?あんたひょっとして柊のこと食っちゃってんじゃねえの?
案外毎晩2人で燃えてたりして?だからそんなに柊のことにこだわるんじゃねえの?」
ぎりぎりと顎に指が食い込む位に強い力で掴まれて唇を開かれると今度は別の青年の逸ったモノが押し込まれ・・・・
「ほら、次頼むぜー。今度はちゃんと飲み干せよー?」
まるで楽しそうに罵倒するようにそう囁かれた、ぐりぐりと再び口の中に押し込まれたモノを紫月は
必死に舐め上げていった。
それが果てる頃、又しても次のモノが押し込まれ、3度目が果てる頃には立て続けに押し付けられたものに
開いた顎が閉じなくなる程辛くなり、望まないものを飲み込まされて今にも吐き出しそうな程、気分は最悪だった。
「・・・ぁっ・・・・はぁ・・っ・・・・・・」
既に顔色は真っ青で掴み上げられた髪の毛だけでようやく顔が宙に浮いているといった程、身体中から
力が抜け落ちているのがわかった。
それでも尚、何の抵抗の言葉も口にしないまま紫月は瞳を閉じてじっとしていた。
「さすがに堪えたって表情だなあ、、、でも、、、、これからだぜ専務さん!」
・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
朦朧とした意識が全身を透過する。
何をされているのかも意識が追えない程に疲れ果て、先刻浴びる程に打ち付けられたムチの痕は
びりびりと痛み床には自身の背中から流れ落ちただろう血痕の後がひたひたと広がっていた。
背中とわき腹に伝う激痛と胸が焼ける程の気分の悪さに益々顔色が失せていく。
既に青を通り越して白色になっているその頬にパチパチと軽く張り手をくわせると青年たちは
紫月のベルトに手を掛けてスーツのズボンのファスナーを開いていった。
「・・・・・・あぁ・・・・・・・・」
自身では自覚のない儘に髪を引き摺られて腰を持ち上げられていく。自分を取り囲んだ青年のうちの
3人くらいに支えられながら気付くと両腕両脚を床について四つん這いにさせられていた。
がっしりと腰元を押さえ付けられて身動きさえ儘ならない。
「ほらぁ、しっかりしろよ・・・これからだってのにさあ・・・・専務さんがお疲れみたいだから今度は
俺たちがサービスしてやるぜぇー?」
「・・・・っ・・・あぁぁっ・・・・・」
青年の形のよさそうな指先が胸元を這う、しばらく感覚を失っていた胸の突起をくりくりと弄られて
身体の奥深くから無情にも湧き上がってくるぞわぞわとした感覚は今の紫月にとっては悪寒にしか過ぎなかった。
「・・やっ・・・・・やめっ・・・・・・」
無意識に抵抗の声が漏れる、そんな様子に美青年たちはとてつもなく嫌悪感を促すような下品な声で笑ってみせた。
「くっ、、ふふふっふっ、、、、やっぱりもう降参なんだー?証文いらないのかなあー?」
「柊くんはいらないのかなあ?俺たちで食べちゃってもいいのかなあー?」
あはははははっ、、、、
まるで楽しそうに罵倒する、品のない会話が響く。
遠くなる意識の中で紫月は最後の力を振り絞るように言葉を発していった。
「まだ・・ま・・・・だ・・・・俺を・・・今度は俺に・・・・サービスしてくれんだ・・ろ?
だったら・・早く・・・・して・・・よ・・・・兄さんたちの・・・テク・・・・たのしみにしてる・・んだから・・よ・・・」
その言葉に紫月を品なく弄っていた手が一瞬とまった。
「へえ・・・言ってくれるじゃない・・・・じゃあお望み通りにさせて頂くとするかなあ?
専務さんの為に精一杯サービスさせてもらうぜえー?」
その言葉を合図のようにぐいと後ろから抱き締められた。
胸元に這わされた指先は容赦ない程に器用に動かされ、意思とは逆に身体が反応する。
次第に硬く尖った乳首を嫌という程弄られて、と同時に又しても意思に逆らうかのように自身の誇らしいものも
熱を増していく。
四つん這いにさせられたままくいと天を仰ぐように張り詰めた紫月の男根に青年の大きな掌が包み込んだ。
「すげ、、、立派だなあ、、、さすが専務さん。どうです?気持ちいいでしょう?もっともっと”よく”してあげますよぉ?」
・・・・・・・・・・・っ・・・
青年の指先が器用に動かされる度に望まない欲望の果てが近付いてくるようで、その無情さと
身体中の痛みに自然と涙が零れ落ちた。
ぽろぽろと真珠の粒のように床に零れ落ちる。まるでそうすることで少しでも苦痛を和らげようとでもいうように、
それは無意識に自身を守ろうとする紫月の最後の抵抗であったのかも知れない。
「そんなに泣いて!辛いんですか?それとも泣く程気持ちいいってか?」
「ふははっ、、、たまんねえなあ、普段は手の届かないような世界のお人の泣き顔が見られるなんてね、
役得だよなあ。」
「・・・うっ・・・・んんっ・・・・・・!」
しばらくの後、握り込まれた青年の大きな掌から生温かい蜜が零れて落ちた。
不本意に到達させられて紫月はがっくりと肘を付くとそのまま床に崩れ落ちてしまった。
「ああ、イっちゃった、、、」
「ふふふ、、、専務さん気持ちよかった?こんなにいっぱい出ちゃいましたよ?ほら!」
何を言われているのかももうわからない、少しでも気を許せば意識を失う程に疲れ果て・・・・
だがそんな遠退く意識を引き戻すかのように青年の逸ったものが押し当てられた。
「・・・・・・・!!!っ」
乱暴に再び腰を持ち上げられるとぐりぐりと逸った熱いものを押し込まれて紫月は蒼白となった。
「・・・やっ・・・・やめろっ・・・・・ぁあ・・・・っ・・・・」
うっ・・・ぁああああぁぁっ・・・・・・・
身体中を激震が走るが如く、その瞬間に紫月はとうとう意識を失ってしまった。
この世に耐えられない程の苦しみがあるとしたらそれはこういうことをいうのだろうか・・・
いいや、そうじゃない。こんなことくらい何でもないことだ・・・・
もしも倫がこんな目に遭わされたとしたら・・・それを知らされたときの方がきっともっと辛いだろう。
もしもそれが帝斗であっても・・・それを知ったときは正にそれはこの世の地獄だろう。
だから・・いいんだ・・・・
何をされても俺は耐えられる。たとえどんなに辛くても。
倫と帝斗がこんな目に遭わなくて済むのなら。
愛しい者らに不幸が舞い込まなくて済むのなら、それが俺にとっての本望だ・・・・!
だから耐えられるよ・・・俺はお前たちの為ならなんだって・・・できる・・・・
ああ・・・・帝斗・・・!
深い海の底へ沈んでいくのはきっと大海原に住むという女神が彼を救ってくれているからだろう・・・
このまま意識を持ち続ければきっと耐え難い苦しみに翻弄される、
そんな酷な現実から逃がしてあげるとでもいうように紫月の意識は奪われて・・・
もしかしたらそれは本当に神が紫月に与えた一瞬の軌跡だったのかも知れない。
少し冷んやりとした感覚が心地よい。
先刻よりは大分気分が楽になったようでうつらうつらと紫月は目を覚ました。
「専務さん、専務さん、、、大丈夫ですか?」
ぺちぺちと頬を叩く感覚にはっとしたように起き上がった紫月の肩を慌てて青年が支え込んだ。
「だめですよ、急に動いちゃよくない。もう少し横になってて下さい」
自分を見下ろす美青年の瞳は先程までとはまるで違って穏やかだった。
それはまるで切なささえも含んでいるようで、無意識に感じた安堵の感覚に紫月は再び横になった。
紫月が横たわっていたのは清潔に正された立派なベッドの上だった。
次第に意識が戻るにつれて背中から伝う痛みが疼き出す、恐らく青年たちによって貫かれたであろう
身体の深いところまでもが疼き出してくるようだった。
ゆらゆらと揺れるように僅かな灯りと共に瞳に飛び込んできた中年男性の姿にほんの一瞬全身が強張りを見せる。
だが自分を見下ろす男の瞳も又、先程までとは何かが違って感じられるようで紫月は少し戸惑っていた。
「具合はどうだ?」
穏やかに話し掛ける声でさえまるで敵意が感じられない、不思議そうにしている紫月の様子に
ふっと微笑むと男は軽く瞳を閉じながら言った。
「恐れ入ったよ一之宮さん、大したもんだ。あなたがこれ程までに根性あるとは思わなかったよ、、、
だてに一之宮財閥の息子っていうだけじゃないですね、、、、根性の入り方が違うよ、、、、
親父さん譲りなのかな?
とにかくあんたには降参だ、二度と柊くんにはちょっかいを出さない、約束するよ。
それに、、、あんたにもね。
証文は間違いなくあんたのもんだ。今後俺は絶対にあんたの社にはちょっかい出さない。
今夜は本当に悪かったな、、、、
もう少しここで休んで、そしたらうちの若い衆にちゃんと送らせるから。
それじゃ一之宮さん、これで私は失礼させて頂くよ。」
紳士的にそういい残すと男は静かに背を向けてその場を引き上げて行った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
男の後ろ姿を見送るように紫月の視線が追いかける、側に付いていた青年が丁寧に布団を掛けながら囁いた。
「専務さん、うちの師匠が言ったことは嘘じゃありません。あなたが意識を失ってまでご自分の社の人間を
守り通したいというお心が伝わったと言っておりました。
二度とあなたの社の方々に手を出すことはありません。
証文もここにこうしてありますから、どうぞ私達のご無礼をお許し下さいね。
さ、、、もう少し休まれて。そうしたらお送りさせて頂きますので」
穏やかにそう言った青年はこっくりと頷きながら紫月を見下ろした。
「い・・や・・・いいよ・・・もう・・大丈夫だから・・・・失礼する・・・・」
まだ辛そうに、それでも必死の思いで身体を起こすと青年が止めるのも聞かずにふらふらと紫月は歩き出した。
がくりと膝を落としながら壁に縋るように寄り添って歩を進める、そんな様子に青年たちは慌ててその身体を支えた。
「いけません、まだ無理ですよ!」
本心から心配そうにそう囁かれたそんな様子に
紫月は力なく微笑むと
「大丈夫・・・早く帰りたいんだ・・・・・ありがとう・・・・」
そう言って又、歩を進める。
「専務さんっ!」
青年たちの止めるのも聞かずに紫月はふらふらと部屋を出て行った。
自分を心配して追い掛けて来る青年の、僅かに早くエレベーターの扉を閉めるともう深夜なのか誰もいない
立派なロビーが瞳に入って来たのにとてもほっとした心持ちになった。
大きなエントランスを出ると夜風が心地よく身体中を包み込み、紫月はすべてから開放されたかのように
ふうーっと大きく息を吸い込んだ。
「専務さん、、、?何処です?」
ばたばたと自分を追い掛けて来る青年たちの足音が後方から響いてきた様子に紫月は最後の力を振り絞って
小走りになると、そのまま小さな路地に身を潜めるように座り込んだ。
PiPiPiPiPi・・・・
T−SプロのFairy担当マネージャーで元米国陸軍特殊部隊に所属していた経歴を持つビルの携帯が
勢いよく鳴り響く。
「Hello!紫月〜っ、何か用かあ〜?」
着信元を確認したビルが調子よく受話器の向こうで自分を呼び掛ける声に紫月はほっとしたように瞳を閉じた。
「紫月?紫月だろ?どうしたー、聞えないぞー、お〜いっ!」
いつもの明るい声が響いてきて・・・
「あ・・あ・・・ビル・・・・俺、紫月・・・・・頼む・・・迎えに・・・来て・・・・・」
それだけ言って音信の途絶えた声にビルがその発信元を辿ってようやくと紫月の元に辿り着いたのは
それからしばらくしてのことだった。
あまりの酷い様子にビルは非常に驚いて、だがしかしさすがに元特殊部隊にいた経験からか
手早く応急処置だけを済ますと即刻帝斗の待つT−Sプロの自社へと向かって行った。
ビルの連れ戻った紫月の様子に帝斗も又、天地がひっくり返るくらい驚くと共に大体何があったかが掴めたのか、
後悔と無力さに唇が切れる程噛み締めて拳を振るわせたのだった。
「帝斗・・・・・?」
目覚めたのは見慣れたいつもの部屋。
一番最初に瞳に入ってきた天上の文様に紫月は安心したように溜息を漏らすと、ふうーっと大きく息を吸い込んだ。
ああ、終わったんだ・・・・
そんな安堵の気持ちが全身を包み込む、ふと瞳をやれば自分の脇で座ったまま眠り込む帝斗の姿が
目に飛び込んで来た。
「帝斗・・・・・・・・・・・・」
「・・・!紫月さんっ・・・!」
はっとしたように帝斗は起き上がると暗褐色の大きな瞳を見開いて紫月の手を取った。
「紫月さんっ大丈夫ですかっ・・・・・」
そう言ったまま後はもう言葉にならずに大きな瞳は重なり合って。
2人はしばらくそうして無言のままお互いを見詰め合っていた。
「帝斗・・・・・・・・・・・?」
ゆっくりと自身の衣服を脱ぎ捨てると帝斗は紫月の横になっているベッドに潜り込んだ。
「帝斗っ・・・・!?」
まだ何の言葉を発することのないままに大きな瞳だけを少し切なそうに揺らしながら帝斗は緩やかに紫月の首筋に
腕をまわすとそっと胸元に顔を埋めた。
ゆっくりと大切なものを包み込むかのように抱き締めて・・・・
「帝斗・・・・だめだよ・・・・俺はもう・・・・・・・・」
「何も、、、何も言わないで、、、、
僕も、、、、何も聞かないから、、、、、こうしてて、、、、紫月、、、、」
愛してる・・・・・・・・・・・・・・・
愛してるよ・・・・・・・・・・・・・
大切なものを愛しむようにやわらかく帝斗は紫月を抱き締めた。
「愛してる・・・・紫月・・・・・もう何処にも行かないで・・・・・僕に黙って何処へもいっちゃ嫌だよ・・・・」
たとえ何があってもあなたはあなた、僕の大切な人。
そう言われているようで、自分の胸元に頬を埋める僅かに細い肩が震えているようで、
次の瞬間温かい滴が胸を伝った感覚に紫月はためらっていた腕をまわすとぎゅっとその細い肩を抱き締めた。
ありがとう・・・・・
あえて何も聞かない、何も言わない、それらがより強い絆を感じさせるようで。
そんな様子はたとえ何があっても僕の気持ちは変わらないと云っているようで、紫月はそんな帝斗の心使いに
感謝すると共にようやくと実感できた本当の安堵の気持ちに大きな褐色の瞳をゆっくりと閉じると、
腕の中の愛しい身体をぎゅうっと抱き締めた。
愛してるよ、そんな懇親の想いを込めて・・・・・
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